魔法大国へと向かう ⑫
わたしはその危険な魔法の対処法を考えてみる。
うーん、どうするのが一番いいのだろう?
人を原料にした魔法。……それって発動していると近づいた時に勝手に吸収とかしちゃうってことなのかな。
自分がどうすることも出来ずに魔法の糧にされてしまう状況をどうにかする方法ってなんだろう……?
わたしはそんなことを考えながら、パパとママと一緒にフェアラーシェの各地に組み込まれている魔法についてみて回る。
「ねぇ、パパ。あそこにも魔法ある?」
国内の移動も楽だ。パパとママは魔法を使用したことを国側に悟られないようにはしているみたいだけど。
わたしだとね、感知されたりしちゃうから……わたしはこの国では全然魔法は使ってないの。
わたしもパパとママみたいに魔法をもっと上手に使えるようになったらこういう国でも感知されずに魔法を使えるようになるのかな。
パパとママは本当にずっと、私よりも先に居る。
いつか、追いつけるかな。
パパとママが困った時に助けられるように、頼ってもらえるように――そんな大人になれたら嬉しいな。
「あるぞ。よく気づいたな」
パパはそう言ってわたしの頭を撫でてくれる。
ただ魔法があることに気づいただけでこんなに褒めてくれるなんて、わたしはもっと見付けにくい魔法を見つけたいなとやる気に満ちた。
今回見つけた魔法は、役所のような場所の前にある石像。
フェアラーシェの、一つの街に存在するその石像……魔法がかけられているの。
でもちょっと調べた限りは、この石像に組み込まれているものは危険なものではなさそうだった。
どちらかというと優しい魔法に見える。
「周りの人たちを落ち着かせるような、魔法だね」
「過去にこの街に魔物が入り込み、大変な事態になったらしい。その時に混乱した住民たちの影響で状況が悪化したらしい。だからこそ、そういうことが起こった時のためだろう」
「ここの魔法は人のためのものなんだね。……こういう魔法ばかり使う人がこの国に沢山いたら良かったのにね」
なんというか、こういう魔法が組み込まれているものを見ているとこの国で暮らしている人たちもきっと様々なんだろうなと思った。
人を糧にするような危険な魔法を組み込み、それを使うことが正しいと思っている人もいる。でも目の前にあるような優しい魔法を組み込むような人もいる。
わたしは……あの子がベルラ・クイシュインになってから、どこかの国に所属しているということはない。
パパとママはどこかの国の特定の国民というわけじゃなくて、独立している感じ。
魔導師であるパパたちにとって、この国が面倒な場所であることは確かだ。魔力の強い子供を魔法使いたちは連れて行こうともするし、魔法をどこまでも特別にしているからこそそれだけ怖いことも簡単にやってしまう。
けれど、そういう人ばかりではないんだなと改めて思ったら少しだけ安心した。
この国は色んな問題を抱えていたりするのかもしれないけれど、こういう優しい魔法を組み込むような人が増えていけば――そういう怖い印象もきっとなくなるんだろうな。そしてそういう優しい人が上の立場にいくことがあったらあの時計台に組み込まれているような魔法もすぐに取り除かれるんじゃないかなとそんな風にも思う。
「私もそう思うわ。こうしてディオノレとベルレナと家族になったからこそ、余計に危険な思想を持つ者がああいう魔法を持っていると何とも言えない気持ちになるわ」
ママはそんなことを言って続ける。
「私は可愛い娘が魔法の糧になりでもしたら……その魔法を構築したものを問答無用で全員殺すと思うわ。相手が誰であろうとね」
「わたしはママにそんなことをしてほしくないから、そんなことにならないようにするね? パパもそんな怖い顔しないで」
ママの言葉に答えながらパパの方を見ると、わたしに何かあったらと考えたのがパパが険しい顔をしていた。
本当にパパもママもわたしのことを大切にしてくれている。きっとわたしに何かあったら想像できないぐらい二人とも怒るんだろうな。
パパとママはわたしのことを優しいなんて言う。わたしはなるべく誰かが不幸になったりするのは嫌だなとは思う。
でもね、わたしも……パパとママに何かがあったら、二人を傷つける人がいたらきっと許すことが出来ないと思うの。それだけわたしにとって家族は特別だから。
そう考えるとわたしは、パパとママと似ているというか、やっぱり二人の影響を受けた娘なんだなって勝手に一人で思って嬉しくなった。
わたしはホムンクルスで、魂は別物で。
厳密には娘って言えるのか怪しいけれど、それでもわたしたちは家族なのだ。
「パパ、ママ。わたしね、大人になった時、自分の身は自分で守れるぐらいに、魔法が得意になれるように頑張るね。学園に入学した時も、わたしはなるべくパパとママの力を借りずにどうにか出来るようにするからね!」
わたしがそう言って笑いかけたら、パパとママは笑ってくれた。
そのためにももっと色んな魔法やその対処法を知らないとね。