魔法大国へと向かう ⑨
翌日になって、今日は大人の技術部門の大会を見る。
技術部門の大会では、なんだろう、説明が専門的になっている人も多かった。早口で魔法を実際に使う人だけが分かるようなことを長々と説明している人もいた。私は聞いていて理解出来たけれど、会場にいる人たちの大半は分からなかったみたい。
やっぱりこういう魔法大国と呼ばれる国においても大会で披露されるようなものは一般的に見て難しい物なのだと思う。
どういう風に魔法が形成されているのか。その仕組み。
それらを正しく理解して魔法を使ってはいないのだろう。感覚的に魔法を使う人が多いのだろうか?
わたしもパパが与えてくれた身体だから、感覚でも魔法は使える。深く考えずにただただ自分の意思に赴くままに――。でも技術部門に関しては、正しい仕組みをきちんと解明していくというか、披露していくのだ。
「魔法への理解が深まれば深まるほど、魔法の威力って上がるもの?」
「そうだな。正しく理解していた方が色んな制御が効くようにはなると思う」
パパの言葉を聞きながらわたしはやっぱりパパたちは凄いなと改めて思う。魔導師と言う存在は、誰よりも魔法を理解しているもののはず。魔法の威力も魔導師たちは自由自在に変えて、制御出来るのだろうなと思う。そうじゃないと、転移の魔法とかも使えないだろうし。
うん、わたしのパパは本当に凄い。
わたしはパパのことを知れば知るほど、本当にパパ以上に凄い人っていないんだなってそういう気持ちでいっぱいになる。
こういう風に魔法に長けた国にやってきたら、魔導師に対する見方も変わったりするのかな? と少し思っていた。でもそんなことはなかった。
わたしのパパとママは、どれだけ凄いって言われている人たちと比べても、ずっとずっと凄い。それを実感すると、二人のことを自慢したくて仕方がない気持ちになる。
ただ魔導師であることとか、二人が凄いことって周りに言うと大変なことにはなりそうだから言わないけどね。ニコラドさんとか、シルヴィーさん達にこの国での話を沢山したいな。
そういうことを考えているだけで私は楽しみになった。
「ねぇ、パパ、ママ。あの魔法、凄い細かいね」
わたしのパパとママは凄い人で、沢山の魔法に関する知識を持ち合わせている。魔導師と呼ばれるような人たちだからこそ、二人とも一般的に知られていない情報も沢山持ってる。でも魔導師である二人でも知らないような情報もあるみたい。
私が目を輝かせて技術部門の発表を見ていると、パパとママも感心していたりもするんだ。
新しい魔法技術というのが、常に世界ではきっと更新されているのだ。パパとママはあまり外と関わりを持たないからそのあたりの情報は本とか、ニコラドさん経由で情報を聞くかのどちらかみたい。
「なるほど、ああいう仕組みか」
「新しく台頭してきている魔法技術は面白いわよね。フェアラーシェには来ないようにしていたけれど、たまになら来るのもいいかもしれないわ」
パパとママは周りに声を聞かれないようにしながら、そんな会話を交わしている。
フェアラーシェは様々な問題は抱えているとは思う。魔導師を特別視していて、魔法の才能のある子供を囲おうとして――クレマガリの件に関しても、問題のある行動を起こしていたし。うん、そういう風に問題はあるだろうけれど、ただこの国って問題があるだけじゃないんだよなぁと思う。
こうやって魔法という一面に関してはやっぱり優れた国だなと実感する。
それにしてもこうやって新しい魔法の技術などについてみる大会って面白いな。
もちろん、全ての情報を公開することはないと思う。多分、よっぽど重要な魔法の情報に関してはきっとこういう場で広めないんだろうなと思った。
「フェアラーシェは他にどんな魔法を知っているんだろ?」
「少し気になるが、流石に秘匿している情報に手を出すとややこしいぞ」
「ベルレナは本当に好奇心旺盛ね? 貴方のそういう所は長所だと思うけれど、時には引くことも大事よ?」
わたしの呟きにパパとママはそう口にする。
確かにわたしは知りたいって思ったことはどんどん知ろうとするタイプだ。知らないことはなんでも知りたいって思う。そういう部分をニコラドさんは魔導師向きと表現していたけれど、そういう点で危険な目に遭うこともきっとあるんだろうなと思う。
うん、私だけがそういう情報を知ろうとして、危険になるならともかく周りを巻き込む可能性も十分にある。
「うん。そうだね。でも折角だからこの国にいる間に面白そうな魔法について知れるなら知りたいなぁ……。もちろん、パパとママが大丈夫って言った範囲でだけど」
だって技術部門を見ているだけでも面白いものが沢山あるんだよ。
そう考えると、もっと興味深い魔法が沢山あるんじゃないかってそういう気持ちでいっぱいなの。そういうことを考えると、本当にワクワクする。
わたしの言葉にパパとママは笑う。
「そうだな。大会が終わった後、しばらく見て回るか」
「そうね。危険な目に遭わない範囲で、調べましょうか」
パパとママがにこにこと笑ってそう言ってくれたので、わたしも笑った。
その後は技術部門をじっくりと見て楽しんだ。




