わたしの魔法適性 ②
「ベルレナ、この水晶に触れてみてくれ」
パパがそう言って差し出すのは、丸々とした水晶である。これは魔法適性を量るために使われている魔法具らしい。
パパがその水晶に触れると、水晶は色とりどりに輝き始めた。その光景が綺麗で、幻想的で、わたしは思わず「わぁ」と声をあげてしまった。
「パパ、凄い!!」
そう言ってパパに近づけば、パパに頭を撫でられる。
「ベルレナ、この水晶に触れて少しだけ魔力を意識しろ。それだけで光るから」
パパにそう言われて、わたしはおずおずと水晶に手を伸ばす。ひんやりとして気持ちが良い。その冷たさにひたりたくなったけれど、魔力を意識しないと!! と思って自分の身体の中の魔力を意識する。
そうすれば、触れた水晶が熱を持つ。びっくりした。そして光り輝く。その色は色んな色があった。だけど、一番輝いていたのは――赤色だった。
「……わぁ。わたし、魔法使えそう!!」
「ああ。そうだな。使えるな。それにしてもやっぱりベルレナは火属性が一番適性が高いんだな」
「やっぱりって?」
パパはわたしが火属性の赤色を最も輝かせることが分かっていたみたいに言う。
どうしてそんなことが分かったのだろうかとわたしは不思議になってパパに問いかけた。
「そうだな。魔法の適性は何が原因でその適性を持つかわかるか?」
「分からないけど……血とか? 確か、親同士が火属性だと火属性が生まれやすいとかは聞いたことあるよ」
だからこそ例えば水属性が生まれやすい貴族の家で、火属性の子供が生まれた時に大変なことになっていたとお父様が言っていたと思う。お父様世代の貴族にそういう子供がいたらしく、親に酷い扱いをされていたのだと。
そう言う経験があるからこそ、お父様は子供が望んだ属性じゃなくても気にしないって言っていた。
わたしがその話を聞いて心配した時、お父様はそう言っていたっけ。そんなことを思い出した。
「そうだな。血も大切だ。その流れる血と、そして魂が適性を決める重要なものだ」
「魂も?」
「そうだ。俺はベルレナの魂が燃えるような炎を感じさせる魔力だったと言っただろう。そんな魂を持っているベルレナが火属性を使えないはずはないとは思っていたんだよ」
「そうなんだ……」
わたしの家、クイシュイン家は火属性の魔法が得意な家だった。火のクイシュイン家と呼ばれるぐらいに、炎に纏わる魔法を使いこなす人が多かった。わたしはクイシュイン家の――ベルラだった頃の身体からとっくに離れているけれど、それでも火属性が一番得意だというのは、わたしがクイシュイン家の娘である証のようにも見えた。
「特に肉体というよりも、魂の方が重要なんだと俺は思う。その魂が持つ適性が一番得意なんだろうな。ベルレナの例を見る限り。身体の方の適性が優れているなら火属性よりも他の属性が光る可能性だって十分あったからな」
わたしはベルラのままだったら多分、火属性以外はそこまで光らなかっただろう。パパがわたしの魂を燃えるような炎の魔力としか表現しないことからもそれは分かる。わたしはベルレナになったからこそ、多くの魔法を使える可能性がある。
——やっぱりわたしはパパに出会えて良かった。パパに出会えたからこそ、ベルレナになれて、そしてパパに出会えたからこそわたしはこんなにも沢山の可能性を思い抱ける。
「パパの魂は、じゃあどんな感じなんだろう……」
「流石に自分の魂がどんなふうにかはわからないな。ベルレナが将来、俺みたいにそういうのを見れるようになったら分かるかもだが」
「それって後からでも見れるようになるの?」
「俺は生まれつきだから分からないが……」
パパの魂がどのような魔力を帯びているのか――少し気になったけれど、それはわたしでは見れないかもしれないらしい。それはちょっとがっかりした。きっとパパの魂なら、綺麗な色をしているんだと思ったから。
わたしは綺麗なものが好きで、パパのことも好き。
だからきっと綺麗なパパの魂を見れたら楽しかっただろうなと思ったのだ。
でも見れないものは仕方がない。折角魔法の適性があることが分かったから、魔法を早速使えるようになりたい。
「そっか。じゃあ、パパ、魂を見るのは一旦諦める。でも魔法を使えるようにはなりたい。パパ、教えて!!」
「ああ。もちろんだ。ただ俺は人に魔法を教えた事はないからな。教えるのが下手でも怒るなよ」
「パパに教えてもらえるなら何でもいい!!」
それにしても教えたことがないということは、わたしがパパの初めての生徒ってことになるのかな。そう思うと何だかわたしがパパの特別になれた気がして、嬉しくなってしまった。




