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魔法大国へと向かう ⑥

 戦闘部門は見ていてハラハラした。わたしは魔法を習っているけれど、人に向けることなんてないから。



 魔物に魔法を使って倒すことはあるけれど、人に向かって魔法を使うことはまた違う感覚なのだろうなとは思う。誰かを傷つけたり、誰かを殺してしまったりすること。そういうことはわたしには怖いなぁと思う。大会で戦っている子たちはそういう感情はあまりなさそう。思いっきりが良いというか、躊躇いがない。

 そういう部分って凄いなと素直に思う。



 披露されている魔法はわたしの見たことのないものもあった。わたしはパパとママから沢山の魔法を教わって、魔法に関する本も読んでいるのにまだまだ魔法について知らないことが沢山あるのだ。そうかんがえると 魔法って本当に奥深い。



「ねぇ、パパ。見たことない魔法もあって、面白いね。大会って楽しい!!」



 わたしがそう言って笑えば、左隣に座っているパパがわたしの頭を撫でてくれる。



「ベルレナが楽しそうでよかったわ。こういう大会は学園でもあるとニコラドが言っていたわよ」

「そうなんだ。こういう誰かと戦う大会って、不思議だよね」

「同年代が集まると優劣をつけるためにそういうのが行われると聞いたことはあるわ」

「ママは学園には通ったことはないんだよね?」

「ええ。だからベルレナが学園に入学した時が楽しみだわ。私自身は学園に行ったことがないから」



 ママがそう言って微笑む。



 パパやニコラドさんは学園に通って、魔法を習って、そして魔導師に至った人。でもママは学園には通ったこともなく、一人で生きてきて、それで魔導師に至った人なんだなぁと思う。

 わたしが学園に入学したら、ママは学園に足を踏み入れることが出来るからと喜んでくれるかな。パパはあまり過去のことを気にしない性格だから、学園に久しぶりに訪れるとしても懐かしいとか、嬉しいとか、あんまり感じないかもしれない。でも娘であるわたしの大舞台を見られるのならば楽しんでくれると思う。



 その大会っていうのがどういうものなのかまではわたしは把握していないけれど、どのくらいの規模のものなんだろう? 学園内でだけおさまるようなものなのかな?

 ニコラドさんから学園はどういうものか聞いてはいるつもりだけど、なんだか知らないことってまだまだある。というか、実際に通ってみないと詳しい部分は分からないだろう。

 そう考えるとどうしようもないぐらいワクワクしてくる。






「パパもママも親が来て良い行事があったらきてね! わたし、パパとママが来てくれた方がやる気出るもん」



 学園でどのくらい親が訪れる行事があるか把握していないけれど、わたしはもし二人が応援してくれたらやる気が出ると思う。というか単純に嬉しいもん。




「もちろんだ」

「ええ。もちろん、行くわ」



 パパとママがにこやかに笑ってくれて、そういう将来の小さな約束をしただけでわたしは嬉しくなった。



 今、魔法の大会に出ている子供たちにもきっと応援してくれる人はいるだろうな。実際に応援の声が色んな所から聞こえてくる。知り合いじゃない人の応援も皆しているみたい。こういう場所だと、頑張っている人を見ると自然と応援したくなるものなんだろうなと思う。

 わたしもね、負けそうになっている子を見ると応援の声をあげたよ。

 こうやって一生懸命な人を応援するのは楽しいね!!



 どんどんその戦闘部門の大会は進んで行った。子供同士のものだからか、さくさくと進む。勝敗が決まるのが結構早いのだ。



 負けた子供は悔しそうな顔をしていて、逆に勝った子供は誇らしげにしていた。

 参加している全員がある程度戦闘部門の大会で戦えるだけの実力者で、そんな子供がこれだけ揃っているかと思うと本当に凄い大会だなとそう実感する。




 決勝部門は見ものだった。

 子供だとは思えないぐらいの魔法を操っていて、だからこそ周りで見ている人たちも大興奮している様子を見せていた。

 興奮するとこれだけ皆、大きな声をあげるんだなとわたしは驚いた。



「パパ、ママ、凄い声だね」

「それだけ盛り上がっているという証だな」

「これだけ魔法を使える子供は珍しいもの」



 パパとママがわたしの言葉にそう答える。



 他の子たちに比べると凄い魔法。でもわたしの方が凄い魔法が使える。その事実を思うとやっぱりこの国でわたしがそれだけ魔法を使えるというのはきっとばれない方がいいんだろうなと改めて思う。

 パパとママから離れるつもりは全くないから問題はないけれど、一応気をつけておかないとね。




 それにしても優勝した男の子はわたしよりもいくつか年下かな?

 自分よりも年が上の人相手に一歩も引かないのが凄いよね。

 両親らしき人に褒められて嬉しそうにしていて、わたしもその様子を見ていただけで笑みがこぼれた。




 逆に負けてしまった人の中には、驚くぐらいに落ち込んでいる子もいた。

 舞台の脇の方で泣いている子もいて……、こういう勝敗がつくようなものだと勝った人と負けた人でこうも違うんだなと思った。




 わたしはこういう勝敗がつくようなものに参加したことはあまりない。でも負けるのは嫌だなと思う。学園に入学した後、誰かに負けたらわたしは悔しい気持ちになると思う。

 パパとママの娘であるわたしは、出来れば魔法に関しては一番がいいなと思う。パパとママの娘なのに、魔法で一番になれないのは嫌だって思うもん。



 そんなことを考えているうちに、次は子供たちによる技術部門の披露会が始まった。


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