杖を使ってみたり、秋の近づきを感じたり ②
「また、失敗しちゃった……」
杖を使って魔法を使う練習を引き続きしているけれど、失敗することも多い。
なんというか、いつも通りの感覚で気を抜くと使おうとしてしまう。そうすると想定しているよりもずっと強い効果が出てしまったりするので、難しいと思う。
「そんなに落ち込まなくて大丈夫よ。ベルレナぐらいの年だとまともに魔法を使える方が珍しいもの」
「でもわたしはパパとママの娘だから、ちゃんと杖を使っての魔法も上手く使えるようになりたいなって思うの」
ママの言葉にわたしはそう答える。
わたしは他でもない魔導師であるパパとママの娘なのだ。
だから二人の娘として魔法で誰かに遅れは取らないように出来たらななんて思ってしまうのだ。杖での魔法も学園に入学するまでに、他の子たちより上手く使えるようになりたいなって思う。
もっと凄い子がいたら悔しいけれど、それはそれなのだけど……。でも魔法だけは負けないようにはしたいな。
そう考えるともっと練習をしなければってそういう気持ちでいっぱいだ。
「ベルレナは負けず嫌いな部分もあるわよね。そうやって一生懸命やっているなら絶対にできるようになるわよ。でももっと休憩はこまめにね」
「うん。ちゃんと休憩はする! でもなんかね、ちょっとずつは上手く出来るようになっている実感はあるから、楽しいとも思ってるの。上手くいかないなって落ち込んでいる部分もあるけど」
わたしがそう言ったらママが笑ってくれる。
杖を使っての魔法は、難しい。まだまだ使いこなせているとは言えない。
けど、本当に少しずつだけで上手く出来ているような感覚はある。それは楽しい。
学園用の杖と個人用の杖でも使い勝手が違うから両方の練習をしているとまた違う感じするんだよね。使い分けって大変だけど、全部上手く出来るようになったらいいなと思っているの。
「学園に入学する前に頑張っておきたいこと沢山あるよね。全部はどうにか出来ないかもしれないけれど、魔法だけは首席で学園に入れるといいなぁ。もちろん、勉強もしないと合格さえもできないのかもしれないけれど」
「それは大丈夫よ。ニコラドだってベルレナなら大丈夫だって言ってたでしょ? 合格を出来る基準はとっくに超えているわよ」
学園の入学試験にはいくつかの項目があるのだ。その中で魔法は首席になれたらなって思うの。そのためにも頑張りたいなって思っているとついつい練習を熱中してやってしまう。
「でも油断はしない方がいいでしょ? 大丈夫だって言われてもわたしはもっと頑張りたいなってそう思うから、入学するまで気を抜かないよ」
わたしはその後もママに見守られながら魔法の練習を続ける。ママはわたしの杖の練習の進捗を確認しながら、優雅に本を読んでいる。
ママは本を読んでいる姿も様になっていて、綺麗。
わたしは大好きなママに見守られながら魔法の練習を楽しく続けていく。
「ベルレナが命ずる。土の神の加護を持って、土球を形成せよ。《アースボール》」
込める魔力の調整を心がけながら、魔法を行使してみる。
予定通りの大きさの土の球が出来た。それにわたしはほっとする。まずは第一段階は出来たけれど、このあと杖を使って操ることだよね。
あの木にぶつけてみよう。
そう考えて、その魔法を操作してみる。
杖を通しての操作は、やっぱりちょっと難しくて途中で土の球が違う方向に行ってしまった。
もうちょっとなれるまで時間がかかりそう。
魔法って、使えない人たちからしてみれば恐ろしい力なのだ。わたしにとって魔法は身近だから、ワクワクするものでなじみ深いものだけど周りからしてみればそうではない。
だからこそ、杖での魔法ももっとちゃんと出来るようになりたいな。
わたしは魔法が好きだから、魔法のことを怖いものだって周りに認識させることはないようにちゃんと制御は出来ていたい。
そう思って、また同じ魔法を試してみる。
一つ出来たら、次はもっと数を増やしてみる。
魔物と戦う際は手数が多い方がいいし、一つだけだと倒せないことがあるからね。
学園では戦闘訓練もあるそうなのだけど、どのくらい魔物と戦うんだろう?
そのあたりはニコラドさんに詳しく聞かないと分からないなと思う。学園に入学したら、パパとママから離れるってことだもんね。
何度も何度も練習をすると、成功確率は上がってきたように見える。何事も練習することは重要なのだなってこうやって進めていると思った。
魔法にもよるだろうけれど、ある程度杖なしで使える魔法は杖がある状態でも問題なく使えるようになっていた方が楽だと思うんだよね。
まだ学園入学まで一年以上あるけれど、それまでにできるようになれたらいいな。
あと入学準備も大事だけど、それ以外のことも大切にしたいから……うん、結構やること多いんだなって思う。
「ねぇ、ママ! わたし、やりたいこと凄くいっぱいある!」
魔法の練習をある程度終えた後に、ママにそう言ったら笑われてしまった。
「突然どうしたの? やりたいことがあるなら遠慮せずに言いなさい。そしたら私とディオノレで叶えるから」
そしてそう言ってママは笑ってくれる。
もうすぐ秋が訪れるので、まずは秋にやりたいことを整理してみることにした。




