杖を使ってみたり、秋の近づきを感じたり ①
「この小説面白いなぁ」
今日は読書をしたい気分なので、書庫で本を読んでいる。
まだまだ書庫の本は全く読み終えていない。それに街に出かける度に新しい本を購入しているから読みたい本はどんどん増えていたりもする。
今、読んでいるものは冒険譚についてなの。
長命種の主人公が冒険をしていく物語。実際に存在している場所について描かれていたりするみたい。こういうのも楽しそうだよね。
普通の人は転移の魔法なんて簡単には使えないから、自分の足で歩いて向かったり、馬車などに乗ったりで移動するのが普通なのだ。その場所に何が待っているか分からないけれど、気になるからと旅に出かけているのって凄く楽しそうだよね。わたしも知らないことは知りたい! と思う性格だから、見たことのない場所を見てみたいと思う気持ちは分かるもん。
ただわたしの場合は何かがあればパパがすぐに助けてくれるけれど、こういう風に一人で旅をする人たちっていうのは誰の助けも借りずに冒険をしているってことだよね。凄いことだよなと思う。
あとね、小説の中で不思議なことが描かれていたりするのだけど、これって実際に起こることなのかな? それともこれを描いた人が創作したものなのかな? 今、読んでいる小説は結構現実に沿っている気はするのだけど、どこまでが本当のことでどこまでが創作されたものなのか分からないんだよね。
「ねぇねぇ、パパ。この小説に書かれていることって本当のことも多いの?」
「前に気になって調べたことはある。半々のはずだ」
お昼ご飯の時間に午前中に読んだ小説を手にパパに問いかけたら、そんな風に言われた。
パパは興味があることはとことん調べてしまう性格だから、それについてもちゃんと調べていたみたい。この小説は私が購入したものではなくて、元々書庫に置いてあったものだったからパパに聞けば答えてくれるかなと思っていたのだ。
パパって記憶力がいいなと思う。あれだけ沢山ある書庫の本について、ほとんど覚えているみたい。
「その小説、面白いわよね。私も好きだわ。創作物としても研究物としても」
「面白いよね!! 初めて訪れる場所に行った時にね、主人公が何を感じたかとか事細かに書かれていて、凄くワクワクしたの」
ママの言葉に私がそういえば、優しくママが笑ってくれる。
この小説、パパとママにとってもお気に入りのものみたい。わたしも研究してみようかな? そんな風にも思った。
昼ご飯を食べた後は、屋敷の外に出た。
今から何をするかと言えば、杖を使った魔法の練習だ。
この前、作ったばかりの杖はまだまだ上手く使えているとは言えない。
わたしはずっと杖を使わずに魔法を使っていたから、杖を使って魔法を使うのは慣れていない。
パパとママも魔法を使うのに杖なんて使わないので、なんだか杖を手にして魔法を使うのは不思議な感覚だった。
なんていうかね、わたしから直接魔力が出るではなくて、杖を通して魔力が放出されていく感じで不思議な感覚だった。
それに杖にはいろんな効果をつけているから、その影響で思っているより魔法の効果が強く出てしまったりしていた。
杖を使わずに魔法を使うというのは、杖についている影響がない状態なんだよね。
わたしは今までそういう魔法を補助する効果のあるものを使わずに魔法を使っていた。
でも杖を通すと、全然感覚が違う。
試しに使ってみた火の魔法が、思ったより広がってパパに対処してもらったりしたの。
今は逆にちょっと使いにくい感覚。
もっと杖を通して魔法を使うことに慣れていけば、違和感もなくなるかな?
でもね、ちゃんと杖なしで魔法を使うのも続けてはいるの! どっちも出来るようになった方がいいってパパもママも言ってくれているからね。
あとは杖を持つと、詠唱なしでも簡単な魔法は使えるようにはなった。魔法の練習を続ければ続けるほど、わたしのパパとママは本当に凄いんだなってそう実感してならない。
学園に入学するまではまだ時間があるから、少しずつ杖の制御ももっと上手く出来るようにしていかなきゃなって思っているの!
杖が出来上がった後は、ニコラドさんはあんまりこちらにきていない。わたしには詳しく話してはくれてないけれどちょっとした問題が起こっているみたいなの。
わたしが子供だから、何のためにニコラドさんが忙しくしているかは教えてくれなかったみたい。わたしがもっと大きくなったら、なんでも教えてもらえるようになれるかな?
あとはわたしがもっと魔法を上手に使えるようになって、頼り甲斐があるようになったら教えてもらえるのかもしれない。
わたしはそう思ったから、より一層杖を使っての魔法の練習に励むことにしている。
杖を手に魔法を使うことで、以前よりも魔力の制御が得意になった感覚があるの! 杖なしと杖ありだと色々と違うから、両方やることで感覚が研ぎ澄まされていくような実感が出来てとても嬉しかった。
「ベルレナ、そろそろ休憩した方がいいわ」
わたしが夢中になって魔法の練習をしていると、ママがいつも途中で声をかけてくれる。
時々パパも混ざってゆっくりお茶をするの。その休憩時間がわたしは大好き。