ニコラドさんと一緒に杖づくり ⑦
「あー、難しい!!」
練習をして、一回試しに描いてみた。簪型の杖に魔力回路を描くのは、思ったよりも難しかった。
普通のサイズの杖に描くのも正直言って難しいのだ。魔力回路というのは、一つでも描き間違えると効果が変わってしまうから。
それに学園用ではなく、わたしが個人的に使う用の杖だからこそ自分の満足のいくものを作りたいっておもうと、色々効果を詰め込もうとして難しい。それにね、実用性も大事だけど見た目も重要なの!! 可愛くて装飾品として身に付けていたいタイプのものと両立させるのは結構難しい。
「簪型の杖なんて作るのが難しいのは当たり前だ。ゆっくりやればいい」
「ニコラドさんもこういう形の杖って見たことない?」
「まぁ、杖は装飾品としても使えるものを作るやつはあんまりいないぞ。魔法に傾倒している奴はそういうのに興味ないやつが多いからな」
「実用性もあって可愛い方が絶対やる気出ると思うけどなぁ。わたしは可愛いものを見ているだけでやる気凄く上がるもん!!」
可愛いものが大好き。見ているだけでも嬉しいし、身に付けているとわたし可愛い! って幸せな気持ちになる。
だから妥協せずに可愛い個人用の杖を作りたいって思うんだよね。
「なら頑張って完成させないとな」
「うん!」
わたしはニコラドさんの言葉に元気よく頷いた。
わたしは欲しいものを諦めるのは好きじゃない。やりたいことはなんでもやりたいし、欲しいものは手に入れたい。どうしようもない時は諦めることもあるだろうけれど、この可愛い杖はわたしが頑張れば手に入るものなんだよ。それを途中でやめるなんてありえないもん!
とはいっても難しくてすぐには完成できなかった。
ニコラドさんに教えてもらいながら、時間をかけて何度も何度も失敗した。学園用の杖に魔力回路を描くよりもずっと難しい。細かい作業で集中力が切れて失敗したり、単純に描くのを間違えたり……うん、難しい!!
色んな効果をつけようとしていたり、見た目にもこだわったりしているとなかなか作るのが進まないのは当然のことだけど……ずっと失敗し続けるとちょっと落ち込みもする。
気分転換に他のことをやろうかなとか、わたしがへたくそだから上手くいかないのかなとかそんなこともちょっと思ったりした。
「ねぇ、パパ。失敗し続けてしまった時ってどうしてる?」
「本当にやりたいなら、挑戦し続けるだけだな。それ以上のことはない」
中々うまく行かない中で、パパに問いかけてみたらそんな返答がかえってくる。
「まぁ、うん、そうだよね」
「俺はベルレナなら、やりたいことをなんでも叶えられると思っている。ベルレナがやめなければなんでもできるはずだ」
「ふふっ、パパって本気でそう思っているよね」
「ああ。ベルレナは俺の自慢の娘だからな」
パパは嘘は言わない。パパは基本的に思ったことを口にする。
本当に心の底からわたしならば、なんだって出来ると思ってくれている。
そしてわたしは、パパの言葉を心の底から信頼している。だからパパのそういう言葉を聞くとわたしは本当に自分がなんだって出来るようなそんな気持ちになる。
杖づくり難しいなぁとちょっと落ち込んでいたけれど、パパの言葉を聞いたらすぐにその気持ちもなくなった。
わたしはパパの娘だから、杖づくりだってちゃんと出来る。
まだ完成してないのに、そんな確信に満ちた気持ちでいっぱいになった。
そんな気持ちでいっぱいのまま、しばらくしてニコラドさんがまたやってきた時に再度個人用の杖づくりを行った。
細かい魔力回路を、間違えないように集中して描いていく。
パパの言葉を思い出しながら、少しずつ進めていった。
前よりも集中出来て、なんとか失敗せずに思うように魔力回路を描くことが出来た。
ちゃんとね、可愛くするために文様に見えるように描いたよ! 色んな魔力回路の本を読んで、可愛いものを探して、ちょっとアレンジしたけれどちゃんと効果が出るようにしたの。
「ニコラドさん、見てみて!! 凄く可愛く出来たと思わない?」
「杖じゃなくてただの簪にしか見えないな」
「えへへ、そうでしょ? 良い出来でしょ?」
ニコラドさんに簪型の杖を見せつけた後、わたしはそれを身に付けることにする。でも一人で髪をまとめて簪をさすのが難しかった。
「ニコラドさん、簪させる? 可愛く出来る?」
「いや、俺には髪型をどうにかするのは出来ない」
「んー、そっか! じゃあ、ちょっとママに頼もうかな。ニコラドさんも、いこ!」
わたしはそう言ってニコラドさんの手を引いて、小屋を出て屋敷の方へと向かう。
完成した学園用の杖も持ってるよ! ちゃんと出来たからパパとママに見せるんだ。
先にママに見せて髪型をアレンジしてもらってからパパに見せたいな! そういうわけでママの元へ向かって早速頼んだ。
「簪型の杖? ベルレナは面白いもの作ったわね」
ママはそう言いながら、わたしの髪をいじってくれた。
本で確認しながらやってくれたのだけど、結構難しかったみたい。でも時間をかけて、わたしの長い髪をまとめて簪をさしてくれた。凄く可愛い!
「ママ、この杖可愛いよね!」
「ええ。とても可愛くてベルレナに良く似合っているわ」
ママがそう言って笑ってくれて、わたしも嬉しくなった。
その後は、パパに杖を自慢しに行った。パパも褒めてくれてわたしは笑顔を浮かべるのだった。




