ニコラドさんと一緒に杖づくり ⑥
「見て! ニコラドさん。沢山練習したの!」
ニコラドさんがまたやってきたので、練習した紙を見せる。上手にできたでしょって自慢するように見せたら、ニコラドさんが笑ってくれた。
パパとママにはどういう杖を作るか秘密だからね。でも杖づくりが終わったらパパとママに見せるんだ。そしたらきっと二人とも褒めてくれるもん。
今度こそ上手くいくように頑張らないと!!
まずは学園用の大きめの杖からだね。
「ベルレナ。練習した通りにやればちゃんと出来るはずだ。焦らずな」
「うん!! 頑張ってやってみる」
優しく笑うニコラドさんの言葉に頷いて、早速試してみる。
練習したからこそ、前より上手に魔力回路を描けている気がする。わたしが魔力回路を描いている間、ニコラドさんはただ見守ってくれている。ええっと、これで半分かな? 一応半分はきちんとできているっぽい。今の所爆発とかもする気配ないし。
これなら上手くいくかな?
いや、あまり油断しすぎるとまた失敗してしまうかも! だからきちんとやり切るまでちゃんとやらないと!!
「ふぅ……」
息を吐きながら、少しずつ進めていく。
マジックインクを使って魔力回路を描くのって緊張する。
「ここをこうして……」
わたしが独り言を言いながら進めている間、ニコラドさんはずっと無言だった。危険だったら口出しをしてくれるだろうから、今のところ上手くいっているんだと思う。そのことにほっとしながら、魔力回路を描き切った。
「出来た!! 多分、これでちゃんと予定していた効果が出るはず!」
「ああ。上手く出来ていると思う。最後に他の魔力が入り込まないように処理だけすべきだな」
「うん!! やってみる」
魔力回路はちゃんと描けたけれどまだ終わってない。マジックインクは色んな魔力に反応しやすいので、予定していない魔力に反応しないように慎重に処理を進めていく。ニコラドさんが言うにはここでまた失敗すると最初からやり直しになっちゃうらしい。
本当に根気のいる作業だなぁと思う。
せっかく描いた魔力回路を無駄にしないように、丁寧に他の魔力が入り込まないように処理をする。ええっと、こんな感じかな?
「ニコラドさん、これでどう?」
「この箇所が駄目だな。この部分から他の魔力が入り込む可能性があるぞ」
「今から修正できるかな?」
「出来るから、ゆっくりな」
「うん!」
全然気づかなかったけれど、ちょっとした漏れがあったみたい。こういう細かい点も気づくのが流石だなって思う。ニコラドさんって結構大雑把な性格に見えるけれど、こういう部分はしっかりしているんだよなって思う。
「出来た!」
漏れがあった部分をちゃんと処理して、ニコラドさんに見せる。
ニコラドさんはまじまじとわたしが作った杖を見る。何か失敗しているところないかな? ちゃんと出来ているかな? とハラハラしながら待つ。
「よく出来ていると思う」
「本当? やったー!!」
大きな声で声をあげて喜んでしまった。
だってね、時間をかけて集めた材料を使って作った杖が完成したんだよ! 嬉しくて仕方がないことだもん。
ニコラドさんっていう杖づくりを教えてくれる人が居たからこれだけ早く完成したけれど、そうじゃなかったらもっと時間がかかったんだろうなとも思う。
「ニコラドさんのおかげでちゃんと出来たよ。ありがとう!!」
「お礼を言うのはまだ早いぞ。もう一個、個人用のもあるだろ?」
元気よくわたしがお礼を言ったら、ニコラドさんにそう言われた。
個人用の方は学園用で作った杖と比べてとても小さくて、その分、魔力回路を描くのも大変だ。小さい面積に描かなければならないから……うん、凄く難しそう。
「ニコラドさん、わたし、簪型の杖に魔力回路描こうとしているけれど……凄く細かい魔力回路になるから難しそう」
「難しいだろうけれど、やってみるのは良い経験になるぞ」
「なんかすごく細かく描かなきゃだから、もっと小さい描くものないと難しいよね」
「拡大鏡と、この小さい羽ペン使え」
そう言いながらニコラドさんが小さな鏡みたいなものと、本当に小さな羽ペンを渡してくれる。うん、確かにこのサイズぐらいじゃないと簪にはマジックインクで細かく描くなんて無理だよね。
拡大鏡と渡されたものをのぞき込むと、なんだか色々おおきく見えた。そういう効果のあるものみたい。これで簪を見ながら、細かく描くってことだよね。
気が滅入るような作業だけど、わたしは個人用の杖も自分が欲しいものを作りたいから頑張ってみることにする。
まずは練習に紙に普通のインクで、その小さな羽ペンで描いてみたけれど……うん、小さいサイズ過ぎて描きにくい。
「ニコラドさん、ちょっと練習してから実際に描いてみるね!」
「ああ。それがいい。まだ時間はあるからゆっくりでいいぞ。今日はずっと練習でもいいし」
「今日の目標は練習と一回実際に描いてみるまでにしてみる!」
わたしが目標を口にすれば、ニコラドさんは笑った。




