ニコラドさんと一緒に杖づくり ②
「ふぅ……! 一応削れた気がするけど! ニコラドさん、どう??」
わたしが振り返ってそういえば、ニコラドさんは優しい目をして笑っている。わたしが熱中している間、見守っていてくれたみたい。
「いいと思う。ベルレナはなんでも器用にこなすよな。最初だとその作業も上手く出来ない人も多いのに」
「えへへ、パパとママが色々教えてくれているからね! わたしね、沢山のことを教えてもらっているんだよ!! 毎日、出来ることが増えていって、凄く嬉しいんだよ」
「ディオノレもジャクロナも万能タイプというか、出来ないことの方が少ないからな」
「それはニコラドさんもでしょ? こうやって杖づくりについて教えられるだけの知識があって、凄いなって思うの」
「俺たちは長生きしているからな」
「でも長生きしているからって、それだけ色々出来るの凄いなって思うの」
わたしがそういえば、ニコラドさんも笑ってくれた。
杖づくりって出来ない人も多いはずだ。なのに二コラドさんって魔法が得意なだけじゃなくて杖づくりを誰かに教えることが出来るだけの能力があるのだ。それって凄いことだと思う。
「ニコラドさん、次は何をしたらいいの?」
「マジックインクを作るのが先だな。魔法で一瞬で作ったりも出来るが、ベルレナは一から作りたいんだろ?」
「うん! それがいいな。ちょっと時間かかってしまうかもしれないけれど、やってみたいな。あ、でもニコラドさんが無理そうなら全然、短縮しても大丈夫」
わたしは一から作る方が楽しいなと思っているけれど、ニコラドさんは忙しいはずだから魔法を使わずに進めるのって大変かなとちょっと思ったりした。
だから恐る恐る聞いたのだけど、ニコラドさんは笑ってくれる。
「問題ない。まだベルレナが学園に入学するまでは時間があるんだ。それまでに作るのならゆっくりでも間に合う」
「そっか。なら、やってみたいから、教えて欲しいの」
「ああ。採取した植物をすりおろしたりもしなければいけないけれど、その合間に液体入れなきゃならないんだよな。その液体から作るか」
「そうなの?」
「ああ。魔力をより一層通しやすくするために入れるんだ。含めた方が杖が長持ちするしな」
「杖って結構長持ちするものなの?」
わたし、杖の本も結構読んでいる。杖づくりをすると決まってから、一生懸命学んでいるつもりなのだけど、実際に作ってみようと思うとなんというかびっくりするぐらいどんどん疑問が湧き出てくる。
なんというか、やっぱり知識として知っているだけなのと実際にやってみるのでは色々と違うのだろうなって思った。
こうして杖づくりを実際にやってみようとすると、見えてくるものが沢山ある。
「手入れにもよるな。あとはどれだけ無茶をするか。杖の使い方がなってない奴だと、本当にすぐに杖を壊したりするぞ」
「そうなの?」
「ああ。俺が知っている奴だと杖に込める魔力の操作が上手くいっていなくて、毎日のように壊していた奴も知ってる。魔力の操作が出来るようになってからはそれもなくなったけれど……、使い方が悪ければ杖なんてすぐに壊れたりする。杖本体が壊れたり、内蔵している魔石が効果を失ったりとかもあるしな。魔力回路が不調をきたせば杖も暴走することもあるから、そのあたりはちゃんとしてた方がいい」
「へぇ」
ニコラドさんの話を聞きながら、魔力の操作が上手く出来ないとそういうこともあるんだなって思った。
わたしは折角作る杖は長持ちして、大事にしたいなって思う。
「ニコラドさん、わたし、杖出来たら自分で手入れ出来るようになりたいから教えてね」
「もちろん、教えるさ。こういうのは自分で出来るようになってた方がいいからな」
ニコラドさんの言葉にわたしは頷いた。
その後、わたしはニコラドさんに聞きながらマジックインク作りの準備を始めた。
それにしてもお店で普通に売られているらしいのだけど、マジックインクって作るに結構時間がかかるものなんだなって思った。今、わたしがやっているのは杖づくりの一部のことだけど、それだけでも手間と時間がかかるのだ。
液体づくりから始めたわけだけど、魔物の皮がもとになっているのでそれをゆでて液体を取り出していく。
ちょっと最初は匂いがしていたのだけど、そのうちしなくなった。
その取り出した液体に小さな魔石を入れて、数日ほど置く必要があるらしい。魔石を入れて馴染ませた方が杖が長持ちするように出来るんだって。
こうやって様々な手間をかけて作られるからこそ、杖って高価なものになるんだなって思う。
「数日ほど置かなければならないって、大変だね」
「まぁ、魔法や魔法具を使えばすぐ出来るけどな。儲かっている工場とかだとそういう道具を入れているはずだけど、それ以外だと毎日コツコツこういう作業をしているはずだ」
「工場とかあるんだ!」
「個人でやっているところももちろんあるけどな。大所帯でやっているところも沢山あるぞ」
本当にニコラドさんから聞く話は、初めて聞く話ばかりだ。
それから少し話した後にニコラドさんは「また数日後に来る」といって一回帰って行った。泊って行ってもいいのになって思ったけれど、やっぱり忙しいみたい。
 




