ニコラドさんと一緒に杖づくり ①
「ふんふんふ~ん」
わたしはベッドに寝転がりながら、旅行のことを思い出して鼻歌を歌う。
ママが連れて行ってくれた旅行が本当に楽しかったから。家族皆で楽しく過ごせるのって本当に幸せなことだなって思うの。
パパもママもわたしのことを色んな所に連れて行ってくれて、見たことがない世界がいつも広がっている。同じ街だって久しぶりに訪れたら違う景色が見えたり、本当に楽しいよね。
買ったものが沢山増えてきて、それを見ているだけで楽しかったなぁと思い起こす。
《ベルレナ、楽しそう》
「楽しいもん。次は何処に連れて行ってもらえるのかなってそんなことばかり考えてるの!」
ユキアの言葉にわたしはそう答える。
わたしは楽しいことが大好きだから、旅行の後は次の楽しいことについて考えたりする。
わたしのまだまだ知らない世界って沢山あるもん。
「ユキアは何処に行きたいとかある? もっとユキアが外に出れる場所の方がいいかなぁ」
今回の旅行ではあまりユキアのことを『使い魔のネックレス』の外には出してあげられなかった。街とかで遊んでたからね。それにユキアは珍しいから人前では出しにくいから。
《一緒に楽しめたら一番良いけれど、僕はベルレナが楽しんでいるならそれでいいって思っているよ! 『使い魔のネックレス』の中でもベルレナが楽しそうにしていることは分かるから》
「そっかぁ。でもわたしはユキアともいっぱい遊びたいから、一緒に行けるところいこうね! あとはわたしがユキアを連れていても問題ないぐらい強くなれたら一番いいなぁ」
精霊獣であるユキアを連れていても、それで周りからちょっかいを出されたとしても問題ないぐらいの存在に慣れたら一番いいなって思う。パパとママみたいに強くて自由になれたなら問題ないんだろうな。
転移魔法、まだわたしには使えない。他の魔法は得意になってきたけれど、転移魔法って他の魔法よりも危険だからまだ無理なんだよね。わたしがもっと魔法の鍛錬していけば教えてもらえる予定なの。
転移魔法を一人で使えるようになれたら行きたい場所にもっと行きやすくなるなぁって考えるだけでワクワクしている。
そうやって未来のことを考えていたら、「ベルレナ、ニコラドが来たわよ」とママから声をかけられる。
「今、行くね!」
わたしはそう返事をして、ベッドから起き上がった。
そしてバタバタと駆け足で向かう。ユキアも後ろからついてくる。
「よう、ベルレナ」
「ニコラドさん!」
ニコラドさんはしばらく忙しかったらしく、屋敷にやってこなかった。だから杖も材料を集めるだけ集めて、まだ作るのには取り掛かってなかったの!
杖づくりもすぐに出来るものではないから、ニコラドさんが時間を取れる時じゃないと本格的に進められないしね! まぁ、わたしが学園入学するまでまだ一年以上あるからちょっとゆっくりペースで作成を進めても問題はないのだけど。
「ニコラドさん、杖づくり、今日から開始?」
「ああ。ようやく時間が取れたからな。なんだ、ベルレナは待ってたのか?」
「うん! 凄く楽しみでニコラドさんがいつ来るかなって思ってたの!!」
わたしがそういえば、ニコラドさんは笑って頭を撫でてくれる。
その後、屋敷の外にニコラドさんが小屋みたいなのを作ってくれた。魔法を使ってだからすぐだった。わたしが完成するまでパパとママに杖を見せたくないって言っていたからそういう杖づくりの場所をわざわざ準備してくれたみたい。ニコラドさんはそういうところが気が利くなと思う。
そういう一面が教育者としてのニコラドさんの良いところなんだろうなって思う。
「集めた材料出すね!!」
「ああ」
ニコラドさんと一緒に集めてきた材料を、収納庫から取り出してその場に出す。これだけたくさんの材料が目の前にあるってだけで楽しい気持ち。
「ニコラドさん、まずは何をしたらいいの?」
「とりあえず杖の大枠を作ることだな。色々実物の杖持ってきたからこれ見ながら削ってみろよ」
ニコラドさんはそう言いながら、いくつかの杖を取り出す。
上の部分が丸いものだったり、星形だったり、月型だったり……結構色々あるみたい。普通な感じで学園用のものは丸いにしようかな。
個人用のものは簪みたいにするから、髪にさせる長さのものにしないとね。
樹人からもらった素材を、身体強化を使って削っていく。
「これ、削るのも結構難しいね」
「そうだな。慣れてないと失敗すると思うぞ。多めに素材はもらっているか?」
「うん。いっぱいくれた。全部使い切らないうちに上手く出来たらいいなぁ。あ、でも上手く削れてもその後が失敗したらやりなおしだよね……。うん、頑張る!!」
なるべく今もらっている材料で作れればいいのだけど、それだけ作って駄目だったらまたもらいに行かないとになっちゃうから頑張ろう。




