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夏の日、ママの計画で旅行に出かける ⑭

 魔力の色が移り変わっていく。

 それが不思議でじっと、それを見てしまう。



 だけどその変化はそれだけじゃないみたいで、ママが「もう少し見ましょう」と笑っている。

 色が、また変わっていく。徐々に変色していき、その色とりどりな光景はまるでお祭りか何かみたいで楽しいなって思った。



「ねぇ、ママ。これってさっきまで一色だったけれど、なんで変わってるの? やっぱり周りの魔力の関係? それだとそういう性質の結晶だってこと? 魔力に反応して色が変わるだけなの? それとも中身も色々変わったりするのかな?」



 わたしは新しいことを知るとうずうずした気持ちになる。だって知りたいって気持ちがどんどん湧いてくるんだもん。

 わたしが勢いよくママに話しかけると、ママは優しい目でわたしのことを見てくれている。




「私もこの結晶の性質を全て知っているわけではないけれど、魔力を込めても色が変わったりするのよ。面白いでしょう? この洞窟の中でこれだけ色とりどりに変わるということは、この中に漂う魔力がそれだけ時間によって異なっていくということなのよ。ただこの場にあるものの中で、性質が異なるものもあるの。同じ魔力を浴びても違う色になることもあるのよ」



 とても楽しそうにママが告げる。



 ママはよっぽどこの場所が気に入っているのだろうなと思う。他から見つけにくい場所だからこそ、ママにとってはゆっくりできる秘密の場所の一つなのかもしれない。



 パパとママの二人とも、一人でいることが好きだからこういう場所っていくつもあるんだろうな。時々訪れるような場所。

 その場所をわたしとパパには教えてくれるんだなって心が温かくなるよね。




 それにしても同じものに見えるけれど、違う性質があるものも紛れてるって不思議だな。色んな種類の魔力がこの時間だけ入り乱れるってことなのかな。この島自体がそれだけ特殊な感じなのかな?





「なんだか面白いね。それだけ結晶に影響している魔力が変化していっているってことだよね? わたしは気合を入れて感知しないとこの場の魔力が変わったのは分かっても、色んな魔力があるの分からないもん。魔法を使えない人だともっと分からないんだろうなって思う」

「魔法を使えない人はそもそも此処には基本的に辿り着くことは出来ないと思うわよ。この場の魔力の変化は本当に些細なものなの。人には全く影響しない程度のもの。でもそれでこの結晶には影響するのよね。それだけ周りの魔力に敏感ってことだと思うわ。本当に面白いわよね」





 ちなみにわたしがママに質問している間に、パパはその結晶を興味深そうに見ていた。かと思えば、一部の結晶を砕いていた。でも砕いたらまた別の色に変化していた。

 パパが砕いた時に、また何か影響した?

 うーん、とっても不思議な結晶なんだなって思う。





「周りの魔力によって色が変わるっていうなら、服とかにつけると楽しそうだよね」

「ベルレナは本当に発想が可愛いわよね。こういう珍しいものを見つけると、自分の利益にするために使おうってする人が沢山いるのに。でも確かに洋服につけるのもいいかもしれないわね。ディオノレみたいに砕いてみて持ち帰ってみる?」

「これって砕いても問題ないの? っていっても、パパはもう砕いちゃってるから今更かもしれないけれど……」

「問題ないわよ。私も昔、砕いて持ち帰って研究したことあるもの。しばらく待ったら、結晶もまた新しく出来たりしているから」

「しばらくってどのくらい?」

「そうね。短くて数十年ぐらいかしら」

「思ったより長い!! ……あの奥の大きなものとか、何百年もかけてこんな大きさになったものとかなのかな? なんか、砕くにしても選びたいなぁ。大きいもの砕いちゃうとなんかもったいない気がする」




 短くて数十年……ということは、ママがこの結晶を砕いたのは数十年以上昔のことなのかな。魔導師だからママはとても若々しい見た目をしているけれど、本当に長生きしているんだなって改めて実感した。

 数十年でどのくらい元通りになるのだろうか……?

 大きいものはもったいないよね。というか、あの一番奥の大きな結晶もまた数十年後に訪れることがあったらまた大きくなって、違う形を見せてくれるってことなのかな?

 うん、やっぱり大きいものは砕くのは駄目だよ。





「って、パパ!! 興味本位で大きいの砕こうとしないでよ! もったいないよ! パパ、小さいので、我慢しよう。私、大きめのものはもっと大きくなるのみたい」




 パパがそこそこの大きさのものを砕こうとしていたので思わず止めた。パパはわたしの言葉を聞いてくれて、小さいのを砕くことにしたらしい。




 結構長い年月をかけてこの形になるという話を横でしているのに、パパってば全然砕くの躊躇わないんだから。でもそこがパパらしいとは思うけれど。

 わたしは自分で使う分だけその結晶を砕くのだった。




 それからはまた色の変化を楽しんで、街に戻った。



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