表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/298

夏の日、ママの計画で旅行に出かける ⑤

 波の揺れ、潮風の匂い。

 海の上って、大地の上とはまた違う。




 わたしは海の上でずっと生活をするなんて想像をしたこともないけれど、世の中には大地の上ではなくて海の上でずっと生活をしている人だって世の中にはいるって知ってはいるけれど、それって凄いことだと思う。だって時々ならいいけれど、ずっと船の上で生活をしているのって、ちょっと疲れそうだもん。

 そういう風に船の上で生活をしている人って、ある意味そういう才能があるってことで凄いことだよね。



 船に乗ることは初めてだから、こうやって海を見ているだけでも凄く楽しい。

 何もかも普段とは違うから、なんだか別世界に来たようなそんな気持ちにもなるんだもん。



 あとね、船の上での食事は魚が多いの。ただ魚だけ食べていても体調を崩したりするからって魚以外も食べているみたいなの。船の上で暮らしていると特有の病気があったりするんだって。

 わたしはこれまでそんなことを知らなかったから、やっぱりわたしは知らないことが沢山あるなぁと思った。実際に船に乗ってみなければ分からないことって沢山あるもんね。




 今の所、魔物や海賊に襲われることはなく、平和な船旅が続いている。だからか、冒険者の人たちもどこか気の抜けた様子である。お仕事中にそんな風にしていていいのかな? と思ったけれど、それもこのあたりが比較的平和だからこその態度らしい。

 パパとママが居るからこの船は何の危険もないけれども――、でも普段からこの様子ならば何かあった時に大変そうだなって思った。

 世の中何が起こるか分からないもので、あんまり油断しすぎると後から大変なことになりそうなのになぁ。





「ねぇ、パパ。あんな風に油断していたら魔物が現れたりしたら大変だよ」

「そうだな。でも放っておけ」

「もっとシャキッとした方がいいと思うけれど……」

「それはそうだが、それであいつらが危険な目に遭ったとしてもそれは自業自得だ。それに子供であるベルレナにそういう助言をされれば怒る奴もいるからな」

「えぇ? 怒るの?」

「ああ。自分たちの考えが絶対だと思っていたり、プライドが高ければそれだけ子供に意見されたと怒る奴はいる。たとえそれが事実だったとしてもな」



 パパの言葉に、それもそうかもと思った。



 ベルラだった頃のわたしは、あまり周りの意見を聞かなかった。自分の行動が全て正しいと思っていて、その行動で周りからどう思われているかなんて全く考えてもいなかった。

 そういう風に自分が正しいって思っていたら誰かの意見を受け入れるなんてきっと出来ないことなのだろう。

 それにしても子供に意見を言われたら怒ってしまうって気持ちはよく分からない。

 でも世の中にはそういう人たちはそれなりにいるらしい。





 そもそも油断しない方がいいよとか、そういう意見はその人に対して少なからずの死んでほしくないとかそういう気持ちがあるからこそ出る言葉だと思う。

 本当にその人のことをどうでもいいと思っていたら、パパのようにそもそも何も言わないものなのだ。そういう意見で怒るって、うん、やっぱりよく分からない。




 パパとそんな会話を交わした後に、魔物が現れた。

 といっても、そこまで強くない魔物だった。

 でもそのわたしの感覚は、他の人たちとは違ったみたい。

 船員の人たちも、冒険者の人たちもびっくりするぐらい慌てていたから。




 わたしはパパとママに連れられて魔物を討伐したりというのをよくやっている。そもそもわたしたちの住んでいる山の魔物は普通の人にとっては恐ろしいらしいし。わたしにとってそういう魔物は倒すことの出来る存在だ。でも一般的な感覚だと今現れた魔物もとっても恐ろしいものみたい。

 ママがあまり強い魔法は使わずに対処していた。魔導師だってことは秘密だからか、ママは詠唱をしていた。ママの詠唱は力強くて綺麗。うん、ママの魔法を使う姿ってわたし凄く好き。

 冒険者の人たちはママの実力を知って、凄くへりくだっていた。

 ママは実力を全然出していないのに、それでも彼らの目にはママは偉大な魔法使いのように見えたらしい。





「ベルレナちゃんは魔物が出ても全然怯えてなかったね」

「だってパパとママが居るから」



 船員の一人に声をかけられて、そう答えた。



 あの魔物くらいならわたしだって倒せるというのは言わなかった。だっておそらくそれはこの人たちからしてみれば驚くようなことだから。



 多分、わたしがそういう魔法の力を見せれば怖がられるんじゃないかなって思う。

 学園にそのうち入学するからと、わたしはニコラドさんから周りにとっての普通を少しずつ教わっている。でも普段の生活が周りの普通とは違うから、わたしの当たり前との違いにはいつもびっくりする。





「ジャクロナさんはともかくとして、ディオノレさんも……?」




 今回、パパは特に魔法使いであることも告げずにわたしと一緒でママの同行者として船に乗っている。だから周りが勝手にパパが魔法を使えなくて、戦う力も持っていないと勘違いしていたりするのだ。

 特にパパは自分が魔法を使えることも船に乗っている間に告げる気もなさそうなので、わたしは船員の不思議そうな顔にただ笑った。




 そういえば魔物が現れたことで冒険者の人たちは緊張感を取り戻したみたいだった。

 こういう風に実際に魔物に襲われてみないと、油断はなくならないものらしい。そう考えるとパパとママって基本的にいつも油断はしていないから凄いなぁって思った。





 そうやって楽しい船旅は過ぎていく。見たことがない景色が沢山広がっていて、凄く楽しかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ