街へのお出かけと、可愛い女の子との出会い ②
杖のお店というのは、結構珍しい。
というのも杖を買うほどに魔法が使える人はわたしが思っているよりも少ないから。
杖のお店に並んでいるのは、大体似たような見た目のものばかりである。
このお店はこれから魔法を学ぶことになる平民など向けのものらしい。あと魔法師組合から補助を受けて出しているお店なんだとか。
そういう補助がなければ杖のお店って中々出店しないらしい。
「魔法師組合ってそういうこともしてるんだ」
「魔法を使える人は少ないからこそ、そういう風にしないと杖の店なんて利益が出なかったりするからな」
「色んな人がちゃんと杖を手に入れられるようにってことだよね」
「そうだな。昔よりも杖は手に入れやすくはなっているとは思う」
パパの言葉にわたしは魔法師組合は本当に色んなことをやっているなと感心する。
そのお店に並んでいる杖は、結構高価なものだった。杖というのは魔法具の一種なので、そういう値段なのも仕方がないことだと思う。
わたしもニコラドさんと一緒に材料集めに行って、杖づくりは材料集めから大変なんだなって実感したしね。
わたしは杖がなくても魔法を使っているけれど、一般的に魔法は杖を使用して使うもの。ならば杖がなければそもそも魔法を使えるだけの才能があっても、魔法を使うことが出来ないってことだよね。
折角魔法を使えるチャンスがあるのに、それって凄くもったいないことだと思う。
だからこそ、魔法師組合は杖を手に入れられるようにこういった補助をしているのかもしれない。あとこういう魔法師組合がちゃんと管轄しているお店だと、購入者の情報なども共有されているらしい。それは杖を購入した人が何らかの問題を起こした場合に対応できるようになんだって。
「問題起こす人って結構いるの?」
「そこまで多くないけれど、今まで魔法に触れてこなかった人がいざ魔法を使えるようになると自分は特別だと認識して、暴走してしまったりもするのよ」
「そうなの?」
ママの言葉にわたしは不思議な気持ちになる。
魔法を使えるようになろうが、なるまいが、その人はその人であり何かが変わるということはないと思うのだけど……。
「魔法を使えるようになったらその分、その人の未来も広がっていくわ。それでいて周りの人の目も変わっていく。それで暴走する子もいるのよ」
未来が変わり、人の目が変わる。それで自分を特別だと思う……。
そうやって暴走した人の対処は、国や魔法師組合が行っているらしい。ニコラドさんもそういうことをやっているんだろうなと思った。
杖のお店では商品を見たり、パパとママに質問をしたりしただけで購入はしなかった。
わたしは自分で杖を作る予定だからね。
でもこういうお店の杖は機能があまりついてなさそうなものが多かった。
やっぱり量産しているものだとそうなるんだろうなって思う。
それにしても杖のお店を見に行ったら、早く杖づくりしたいなぁというそういう気持ちにもなった。
自分の手で何かを作るのは凄く楽しいことで、自分だけの杖を作るのだと思うとわたしはワクワクが止まらないから。
「ニコラドさん、次いつ来るかな?」
「この時期はあいつは忙しいから、すぐには来ないと思う」
「さっきの話につながるけれど、春はなぜか暴走する子も多いから」
わたしの言葉に、パパとママがそう言って答える。
早く来ないかなぁと思うけれど、待つ時間が長い分、いざ杖づくりの時が来たらより一層嬉しくなりそうだから楽しみだなと思ったりする。
しばらくパパとママと一緒にぶらぶらしたのだけど、パパとママを二人きりにさせたいなと思ったので一人で街を探索することにする。
一人でこうして知らない街を歩くのも楽しい。
街の隅々まで歩いて、面白い場所とか見つからないかな?
パパとママにこういう場所があったの! と教えたら、二人とも喜んでくれるかな?
そういうことを考えるだけで、わたしは楽しくて仕方がない。
視線の先に小さな通りがあったので、進んでみることにする。
こういう裏道のような場所にひっそりとある美味しいお店とかもあるんだよ。
表通りを歩いているだけでは見つからないものを見つけるのも楽しくて好き。
そんなことを考えながら歩いていると、
「やめてよ!」
そんな声が聞こえた。
必死なその声に、そちらに視線を向ける。
小さな空き地に数人の人影がある。
泣き出しそうな顔をしている女の子が中心にいる。その子は桃色の髪と、瞳の可愛らしい女の子。……どこかで見たことがある気がするけど、ちょっと思い出せない。
その可愛い女の子を囲うのは、同じ年ぐらいの男の子たち。
「何をやっているの? いじめは駄目だよ!」
わたしは放っておけなくて、その一味に声をかけた。




