ニコラドさんと一緒に材料集め ⑥
「ニコラドさんの魔法も綺麗だよね。なんか、凄く無駄がない感じ」
「ははっ、もっと褒めろ」
「うん、ニコラドさん、凄い!!」
わたしがそういえば、ニコラドさんは楽しそうに笑っている。
そうやって会話を交わしていたら、何故か先ほどニコラドさんに助けられた冒険者の人たちが我に返った様子でこちらに近づいてきた。さっきまでニコラドさんが魔物を簡単に倒しちゃうから圧倒されてたのかな?
なんだか魔法師っぽい人は、ニコラドさんのことをキラキラした目で見ている。ローブを身に着けたお姉さんなのだけど、ニコラドさんはそういう目で見られてもどうでもよさそうだ。
「あの貴方、凄いです! さぞ、有名な魔法師の方ですよね! あの魔法どうやったんですか?」
「あー。秘密」
お姉さんは勢いよくニコラドさんに話しかけたのだけど、軽く流されていた。
まぁ、魔導師であるニコラドさんは自分の手の内を言うわけにはいかないもんね。下手にそのことが広まって面倒なことになるかもってことなんだと思う。
「それじゃあ俺たちは行くから――」
「待ってください!」
ニコラドさんが軽く手を振って歩き出そうとしたら今度は鎧を着た男性、剣を持っているから剣士の人なのかな?
それにしてもわたしのことはあんまり見ないというか、こっちに視線を向けてこない。
わたしのことよりもニコラドさんのことで頭がいっぱいみたい。パパがくれたこの身体って可愛いし、結構視線を向けられる方だからそういうの新鮮だなーなんていう気持ち。
「なんだ?」
「俺たちはこれからこの奥にいる火竜を倒しに行くんです。手伝ってくれませんか!!」
「冒険者なら自分たちの力でどうにかした方がいいぞ」
「そ、それはそうですけど……」
「なら、これで話は終わりだ。今回はたまたま俺が通りかかったからお前たちは生きている。でもそうじゃなきゃ死んでいてもおかしくない。命を粗末にしたくないならここじゃなくて、もっと弱い所に行った方がいい。ベルレナ、行くぞ」
ニコラドさんはその冒険者の人たちの頼みを聞く気はないみたい。まぁ、でも確かにさっきの蛇の魔物相手に冒険者の人たちは苦戦してたもんね。
あの魔物がどれだけ強いのかとか、わたしにはさっぱり分からないけれどニコラドさんの言い方的にはそこまで強い魔物ではないのかも。
ニコラドさんの言葉に、ようやく冒険者の人たちがわたしを見た。目が合ったのでにっこりと笑っておく。
わたしはすたすた歩くニコラドさんについていった。
「あの冒険者の人たちの苦戦してた魔物って強いの? わたし、倒せる?」
「ベルレナなら問題なく倒せると思うぞ。あいつらは実力が足りないのにこんな場所にきていたのが問題なんだよ。ベルレナも実力が足りない場所にはいかないようにな」
「うん! ちゃんとわたしが倒せそうなところにしかいかない。わたし、死ぬのやだもん」
「それがいい」
「あの人たちの言っていた火竜って倒すの難しいの?」
さっきの冒険者の人たちは火竜を倒しに行くっていっていた。どうやらその実力はあの冒険者の人たちにはないみたいだったけど。
でも自分たちに倒す力ないからってニコラドさんの力を借りようとするのは、結構他力本願だよね。
それにしても火竜って響きがかっこいいよね。
だって竜なんだよね! わたし、ドラゴンって図鑑でしか見たことがないからどんなのだろうってワクワクしてくる。
「長生きしている奴なら厄介だろうけれど、この洞窟内で普通に生きている奴ならベルレナなら倒せるな。火竜の素材も杖に使えるから見かけたら狩るか」
「うん!」
わたしはニコラドさんの言葉に元気よく答えた。
それからもっと奥の方に進むと、噂していた火竜の姿があった。
赤い鱗に覆われていて、翼が生えてて、うん、なんかかっこいい。想像していたよりも小ぶりなのはそんなに長生きしていないのかな? それにしてもマグマの中でも平然としているのは凄いよね。わたしみたいに魔法をかけられているわけでもなく、そのままで耐性があるってことなんだよね?
「ねぇ、ニコラドさん。火竜ってどうやって倒すのが一番いいの?」
「そうだなぁ。あいつは飛べるから、まずその翼を使い物にならなくするのが一番だな。あと火も吹くから口を閉じさせるとか。初めての戦う相手ならまずは攻撃手段を奪うことが大事だな。ベルレナなら火竜相手に問題なく倒せるだろうけれど、慢心をすると危ないから」
「うん! 分かった。ちょっと、わたし一人で頑張るね。ニコラドさんはわたしが危なさそうな時だけ手を出してほしいの」
「ああ。他の周りの魔物はどうする?」
「んーとね。出来ればそれもわたしが頑張って倒す! 一人でどんな状況でも魔物倒せるほうがいいもんね」
わたしがそう言ったらニコラドさんは頷いてくれた。
そしてわたしは火竜を倒すために動き出した。