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ニコラドさんと一緒に材料集め ③

「行くか」

「うん」




 わたしはニコラドさんの言葉に頷いて、その部屋から一緒に出る。




 ざわざわしていて驚いた。結構魔法師組合の建物って人が多いんだね。その場に居る人たちは部屋から出てきた私たちのことを気にも留めないというより、気づいてなさそうだ。ニコラドさんがそういう風にしているのかもしれない。

 わたしは魔法師組合の施設に来るのは初めてだけど、こんな感じなんだなと見てしまう。



「ねぇ、ニコラドさん。周りから注目浴びないようにしてる?」

「そうだな。俺とベルレナが転移した部屋は基本的に開かずの間扱いだから」

「そうなの?」

「ああ。俺が転移してくる時の座標にしているだけの部屋だから」



 ニコラドさんは簡単にそんなことを言った。



 魔法師組合の建物の一室をそれだけのために使うというだけでもニコラドさんが魔法師組合という組織の中で凄い立場の人なんだなって思った。

 わたしとニコラドさんは誰にも話しかけることなく、その施設を出た。




「わぁ」



 わたしはパパとママに色んな場所に連れて行ってもらっている。けれどニコラドさんが今回連れてきてくれた場所はわたしが初めて来る場所だった。大きな山が見える。離れたところに大きな山が見える。あれが今回の目的の火山だろうか。



「ねぇ、ニコラドさん。あの山に行くの?」

「そうだな。魔石を採掘する予定だ。ただベルレナの魔力に一番合ったものを探した方がいいだろうから、他の火山も行こう」

「そっか。わたしの魔力に合うもののほうが効果が凄いってことだよね」

「ああ。それに魔石はあるだけあった方がいい。一回で成功するものじゃないからな」




 ニコラドさんとそんな会話をかわしながら、街を歩く。



 あたりをきょろきょろとしてしまう。このあたりって火山が近くにあるからか結構暑い地域みたい。薄着の人たちばかりで、独特な服装なのは近くに砂漠とかもあるからかな?




「ニコラドさん、服屋で買い物していい?」

「別にいいが、わざわざ着替えるのか?」

「うん。だってこういう服、わたし持ってないし。欲しいなぁって」

「通貨がここだと違うから、これやるよ」




 そう言いながらニコラドさんは見たことのない通貨を渡してくれる。今いる場所ってそんなに遠いんだ……。わたしはニコラドさんにその通貨と同じ価値だけど、お金を渡した。なんかもらいっぱなしって悪いもんね。

 ちなみに言葉に関してもパパとママから教わっているから聞き取れはするけど、話すのは難しい言語だった。パパとママから教わったり、書庫にある本で勉強したりしているからわたしは結構色んな言語喋れるつもりだけど、難しいものは難しいもんね。



 服屋でわたしの欲しい服をニコラドさんが店員さんに話しかけてくれて、無事に購入できた。ニコラドさんも色んな言語が喋れたりして、本当に凄いよね。





 パパもママもニコラドさんも、本当に凄いんだ。それって魔導師だからで片づけていい物ではないとは思う。私は凄い魔導師にしかあったことがないけれど、それだけ色んなことを勉強して、出来るようになって、そして魔導師になったんだよね。

 うん、だって多分、魔導師の中にはこんな風に色んな言語を喋れない人って多分いるんじゃないかなーって思うもん。





 わたしは購入した布の服に着替える。あんまりしたことがない服装って凄く楽しい! パパとママにいつも見せるみたいにニコラドさんに「似合うでしょー?」といいながらくるっと回れば、ニコラドさんも笑ってくれる。

 帰ったらパパとママの前でも着よう!




「じゃあ、行くか」

「うん!」



 ニコラドさんに促されて、わたしとニコラドさんは街の外に出る。


 その時に子供であるわたしと一緒に外に出るのは危険だとニコラドさんは街の門番をしていた人から心配されてた。わたしが子供だから、こういう時、心配されるんだよね。でもニコラドさんが何か見せたら、すぐに通してくれた。




「ニコラドさん、何を見せたの?」

「魔法師組合の身分証」

「それでこんなに効果があるの? 凄い!」



 魔法師組合の身分証ってそれだけ世間的に信頼があるものってことなのかな? それを持っているだけでそういう価値があるってびっくりする。それだけ魔法師組合という組織が、色んな所に根付いていて大きいってことだよね。

 ニコラドさんは魔導師ってだけじゃなくて、そういう身分も持っているんだなって思った。




「まぁ、見せたのは外行き用に持っている身分証だけどな」

「なにそれ? 二つ持ってるってこと?」

「そうだな。身分証は二つ持っている。外で使う場合はさっき見せたやつを大体見せているな」



 ニコラドさんはそんなことを言って笑った。



 なんでわざわざ身分証を二つ持っているんだろう? わたしにはぴんと来なかった。わたしが不思議そうな顔をしているのを見て、ニコラドさんは笑いながら言う。




「もう一個の身分証は見せると色々ややこしいんだよ。だから見せても特に何も騒がれることのない普通の魔法師組合の魔法師っていうことを証明する身分証を見せてんだよ」

「ニコラドさん、魔法師組合でえらい立場だって言ってたもんね。その立場だって示すと大変ってこと?」

「そうだなぁ。まず本物か疑われることは間違いないだろ」

「なんで? だって正式なものなんでしょ?」

「あのなぁ、ベルレナは魔導師が周りにいすぎて分からないかもしれないけれど……。俺はほら、見た目が若くてかっこいいだろ?」

「うん」

「それだとこんなに若いのにそんな身分はありえないってなるだろ。俺が魔導師であることなんて知らない連中の方が多いし、そもそも魔導師が何なのかとか知らない奴の方が多いからな。俺も大々的に表に立っているわけでもないしな。それにその身分証が受け入れられたら受け入れられたで接待とかそういうのが発生するし。普通ならそれだけ魔法師組合で身分があったらぶらぶらしたりしないしな」



 ニコラドさんの言葉を聞いて、確かに……と思った。



 わたしはニコラドさんが魔導師だと知っているから、長生きしていることも魔法師組合でえらい人というのも受け入れられるけれど――ニコラドさんを見た目通りにしか認識していない人たちだと身分証を偽装しているのではってなるってことだよね。

 それに魔法師組合は影響力の強い組織みたいだから、その身分証が認められたとしてもそれはそれで大変……うん、ニコラドさんって凄い立場なんだなってニコラドさんの言葉を聞いて改めて思った。



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