ニコラドさんと一緒に材料集め ②
「……分かった。ベルレナ、気をつけるんだぞ」
「パパは心配性だね。大丈夫だよ。ニコラドさんが一緒なんだもん」
パパの元へ行って、ニコラドさんと一緒に材料集めに行ってくるねと告げればパパは心配そうにしていた。
わたし自身もパパとママ、それにニコラドさんから色んなことを習っているからちょっとした問題ぐらいならば自力で解決できると思っているのだけど……パパはわたしのことを可愛がってくれているからそういうところが心配性なのだ。
「ディオノレ、あまり過保護すぎるのもよくないぞ? いつまでもなんでもお前が対応していたんじゃベルレナが成長できねーだろ。俺がちゃんとベルレナを無事に連れて帰ってくるから安心しろ」
「……分かった」
「ははっ、不満そうだなぁ。俺がちょっとベルレナを連れ出すだけでこれだとベルレナが結婚する時にはどんな反応をするんだろうな?」
ニコラドさんはパパの反応が楽しくて仕方がないと言った様子で、からかうように笑っている。
パパは嫌そうに二コラドさんを睨んでいる。パパとニコラドさんは本当に仲良しさんだなぁと思う。
「まぁ、ベルレナのことは俺がちゃんと見とくから、お前はジャクロナと仲良く過ごしとけよ。あと何か緊急の要件があれば言えよ。すぐに戻ってくるから」
「……ああ」
「ははっ、ジャクロナと仲良く過ごすことに関しても了承してんのか? 本当にディオノレも変わったよなぁ」
「ニコラド、黙れ」
ニコラドさんはそんなパパの態度にも、楽しそうに笑い声をあげている。
「ベルレナ、ニコラドはこんなやつだけど魔導師だし、頼りにはなるからちゃんということは聞くのよ」
「うん! ちゃんと何かあったらニコラドさんにいうから大丈夫だよ」
「あとは本当にどうしようもないって時は守護石に魔力を込めなさい。そしたらディオノレか私で感知して駆けつけることが出来るから」
「うん。本当にどうしようもない時はそうするね、ママ」
ママもわたしのことを心配しているみたい。そうやってパパとママが心配してくれると、二人に大切にされているんだなって実感して嬉しくなる。
それにしてもなんだかんだママもニコラドさんの実力のことはちゃんと認めているんだなぁと思った。
「本当にジャクロナも過保護だな。お前がこんなに過保護な母親の一面があるなんて本当、昔を知っている身からしたら面白すぎる」
「……煩いわよ」
ニコラドさんは本当に楽しそうだなぁ。
昔の、それこそ私と出会う前のパパとママをニコラドさんはよく知っていて、だからこそ今のパパとママのことが面白くて仕方がないらしい。
今回、ニコラドさんと二人で出かけるわけだし、普段は聞けないようなパパとママの話をもっと聞けたりするかな?
「パパ、ママ、杖の材料頑張って集めてくるね。あとお土産も沢山買ってくるから。二人とも仲良く過ごしててね」
「ああ」
「もちろんよ」
わたしが声をかければ、パパとママは即答してくれる。
少しの間、パパとママを二人っきりにするわけだから、パパとママの関係性も少しは変化してたら嬉しいなとも思う。まぁ、そんな簡単に変わるものではないと思うから、帰った時も今と変わらないかもしれないけれど。
でも材料集めから帰った後に、パパとママがどんなふうに過ごしていたかとか聞けるだけでも楽しそうだなって思っているの。
それから少し会話をかわして、わたしはニコラドさんと一緒に出掛ける。
「パパ、ママ、いってきます!!」
「いってらっしゃい」
わたしの言葉にパパとママが笑って、そう送り出してくれる。
わたしはいつもお出かけの時、パパかママと一緒だったからこうやって送り出されるのって初めてのことだなってそう思ってワクワクしてきた。
杖の材料集めが一番の目的だけど、他にも色んな経験が出来たらいいな。それでそれをパパとママに話して褒められたら嬉しいなって思う。
「ニコラドさん、何処に連れて行ってくれるの?」
「一先ず火山に行こう」
ニコラドさんはそう言って、転移の魔法を行使した。
転移した先は、どこかの建物の中だった。最低限の家具しか置かれていない質素な部屋。
「ニコラドさん、此処は?」
「魔法師組合の建物の一室だ。俺はディオノレほど転移の魔法が得意じゃないからな。こういう座標を決めて移動してんだよ」
「そうなんだ。やっぱり同じ魔導師でも得意不得意があるんだね」
ニコラドさんは転移の魔法がパパほど得意じゃないなんていうけれど、そもそも難しい転移の魔法が使えるだけでも流石魔導師なんだなって思った。




