杖の材料について ③
「大元の杖の素材を樹人たちからもらうとして、色々と効能をつけるなら他に何がいるかな?」
「そうだな……。ベルレナの魔力と相性がいいものだろ? ちょっと手を貸してもらえるか?」
「うん」
ニコラドさんにいわれて、手を差し出す。
そうすればニコラドさんが手をかざす。なんだか不思議な感覚がするので、ニコラドさんがわたしの魔力を調べてくれているみたい。
ニコラドさんってそうやって魔力の性質とかも調べられるって凄いよね。人に沢山のことを教えてきた人だからこそ、そうやって魔力の性質を調べたりするのも得意なのかもしれない。
「ベルレナはディオノレが作ったホムンクルスの身体だからっていうのもあるだろうけど、本当に魔力量が多いな。元々の魔力量も多いのもあってより一層上乗せされているな」
「多いのは良いことだよね!」
「ああ。それでいて一番適性の強い火属性は、苛烈な感じだな。こういう魔力だと同じように荒ぶる魔力を纏った材料を使ったら魔法の効果も上がりそうだ」
「そんなに苛烈なの?」
「ああ。攻撃性の高い魔力だ」
人によって魔力というのは、異なるもの。
わたしの魔力はとっても苛烈で、攻撃力が強いみたい。元々のわたしの魂ってそういうものなんだろうなって思う。
「ベルレナは見た目は天使かなにかみたいなのに、そういう魔力を持っているのはギャップだよなぁ」
「ありがとう! それで火属性の魔法の効果をあげるために使った方がいい材料ってどんなのになるの?」
「そうだな。やっぱり火竜とか、火を噴くような魔物の素材が一番いいな。火山にある魔石とか」
「火山かぁ。わたし、火山は行ったことないなぁ」
その単語は聞いたことはあるけれど、行ったことはない。でも確かにそういう場所で暮らしている魔物やそこで採れる魔石とかだと火属性とは相性がよさそうだよね。
「そういうのって杖に埋め込んだら目立ったりする? 学園に持ち込むものだと、既存品に見える感じにしたいんだよね。そういう杖にそういう効果埋め込むのって難しいかな?」
学園に持ち込む杖が既存品に見えないものになってしまうと目立ってしまうもんね。
それで目をつけられたら色々大変だと思うの。わたしに何かあればパパとママはすぐに駆けつけてきそうだし、その辺は自分で自衛しておいた方がいいから。
「小さめのものなら目立たないように入れ込むことは出来ると思うぞ。外ではなく内側に魔石を入れるか、それか魔石を一旦溶かして杖に馴染みこませるとかでもいいんじゃないか?」
「そういう方法もあるんだ。学園用に持っていく杖はそういうやり方であんまり大きい魔石がついているようには見えないようにしたいなぁ」
「それがいいだろうな。大きい魔石だと目立つだろうから。それに外側で見えるようにしていたらそれがどれだけ高価なものか分かる奴は学園には少なからずいる。横暴な奴らだとそれを無理やり奪おうとしてきたりするしな」
「折角自分で作ったものを奪われるなんて嫌だよね。誰かが無断でもっていかないようにもしておきたいな」
折角作ったものを誰かが勝手に持って行ってしまうというのは嫌だもん。わたしは今まで自分の物を誰かに取られたりというのはあんまり経験がないけれど、学園っていう人が沢山いるところに行くのならばどういう人たちがいるか分からない。
わたしは基本的に優しい人にばかり会っていると思うけれど、世の中には少なからず悪い人もいるもん。この前みたいにパパの力を無理やり利用しようと考えている人とか。
人の数だけ、色んな人がきっといるから。
「そのあたりは奪われないように魔法をかけておけばいいだろう。そうだな、下手な魔法をかけておくとそれはそれでややこしいから追跡の魔法でもかければいいだろ」
「追跡の魔法?」
「ああ。目印をつけておくんだ。そうすればその魔力をたどってそれを取り返せるだろ。それにそういう印をつけておけば奪われた時に自分のものだって主張しやすいからな」
ニコラドさんはそんな風に教えてくれる。
「あとは魔力も回復させるようにしたいんだよな」
「うん。出来たらでいいんだけど、学園用の杖にそういう能力つけられたらって思うの」
「ベルレナの魔力量は多いからめったに魔力切れになることはないだろうけどな」
「それはそうだろうけれど、何事も備えは大事だと思うんだよね」
「ベルレナはそういう点は慢心しないよな」
「だってわたしより凄い人が周りには沢山いるからね」
わたしは自分の魔力が例えば多かったとしても、それでわたしが一番凄いとか、絶対に魔力切れを起こさないとかそんな風には考えられない。
わたしの周りにはパパも含めてわたしよりもずっと凄い人が多いから。
「それで魔力を回復させるようにするには、そうだな……空気中から魔力を吸収、もしくは何らかの影響で魔力を生み出すような素材を使って、それの魔力回路を描いて、作用するようにするとかがいいかな」
ニコラドさんはそんなことを言う。
魔力回路を描くってどういうことなのだろう? 魔法具づくりに必要な知識なのかな?
これで200話です




