今年もお祝いをする ④
「わぁ」
わたしが目を輝かせながら見つめているのは、女王様がお気に入りというデザイナーさんがデザインしたワンピースである。
外からも見えるように展示されているのだけど、とっても可愛いの!
「ねぇねぇ、ママ。これ、凄く可愛い!!」
「そうね、とても可愛いわ」
とても可愛くて、少し欲しいなと思ってしまった。でも値段を見ると凄く高価でわたしはびっくりした。
ベルラだった頃も高価な衣服はよく見たことあったけれど、なんだかけた違いで驚いた。やっぱり女王様が気に入っているからなのかな?
「買うか」
「パパ、結構高いよ?」
「何も気にしなくていい。それに誕生日祝いだ」
「昨日も沢山もらったのになぁ。でも嬉しい、ありがとう!」
ニコラドさん経由で錬金術で作ったものを売っているので、それの売り上げから買おうかなと考えていたけれどパパが買ってくれた。
ぽんと高価な子供服を購入したパパをその店の人たちは「お金持ちだ」と目を付けたのか、色々とお勧めしてくる。
おすすめされたものの中で気に入ったものは、パパとママが買ってくれた。自分で払おうとしても二人ともわたしに払わせてくれないんだよね。
一人で街を歩いて買い物する時に使うぐらいなので、錬金術で稼いだお金も結構たまっている。
でもね、パパとママ用の服は「わたしがプレゼントとして買うの!」といったら買わせてくれた。
こうやって互いに似合いそうなものとか買いあえるのって凄くいいなぁと思う。
街を一人で見て回るのも楽しいけれど、パパとママと一緒に三人でぶらぶらするのも楽しい!
洋服を見て回った後は、錬金術のお店に向かった。
錬金術は使える人が少ないからか、高価なものが多かった。錬金術の材料も沢山並んでいたのだけど、本で読んだことはあってもわたし自身が見たことないものもあった。
まだまだわたしが触ったことのない材料とか、作ったことのない物も沢山あるんだなと思うとなんだかワクワクした。
ただ錬金術のお店は、子供はほとんど来ないところみたい。
高価だし、危険なものもそれなりにあるのでなんだか嫌な目で見られてしまった。冷やかしだって思われているのかな? パパとママが一緒じゃなかったら何か言われてしまっていたのかもしれない。
それにしてもパパもママもそういう視線が向けられてても何も気にしていなくて、そういう所が二人らしいなぁと思った。
「ねぇ、パパ。これって自分で採りにいけるかな?」
「行こうと思えば行ける」
「じゃあいいか」
わたしは小さな声でパパと話している。
錬金術で使う材料に関しては、中々入手しにくいものも多いみたい。だけどパパはそれらを保管しているし、採りに行くことも簡単みたい。
ちょっと買おうかな? と思ったけれど、自分で採りに行けるのならば自分で採りに行った方がいいなぁと思ったので買わないことにした。
結局何も買わずに店を出た。
「香水とかはなかったなぁ」
「錬金術でそういうのはなかなか作る人いないもの」
わたしの残念そうな言葉にママが言った。
わたしが錬金した香水とかは錬金術のお店にはなかった。戦闘に遣うものが人気だと言うのは知っているけれど、わたしと同じようにそういうものを錬金しようとする人が居たらいいのになぁと思った。いたら仲良くしたいもん。
パパとママと話していたら、ぐぅとわたしのお腹が鳴った。
「どこか入るか」
「うん!」
ぶらぶらとお店を見て回っている間にすっかりお昼時になっていたのだ。
この街には沢山のお店があるので、どのお店に入ろうかとわたしは歩きながら考える。
うーん、どれも美味しそう!
これだけ美味しそうなお店が並んでいるとどれを食べようかってちょっと悩んでしまうよね。
「どれも美味しそうで決められない!」
わたしがそんなことを言うと、どこからか小さな笑い声が聞こえてきた。
そちらを見ると、お姉さんが一人いる。
「お嬢さん、ご飯を食べるところを悩んでいるの? なら、うちにおいでよ」
「お姉さんのところ、ご飯屋さんなの?」
「ええ」
そんな風に笑いかけられて、そのお姉さんの家がやっているお店に向かうことになった。
お姉さんに連れられたお店は、お昼時だけど人がそこまでいなかった。
注文した料理はとても美味しかったので、どうしてあまりお客さんが居ないのかと不思議になった。
でも美味しかったので良かった!
お店を出た後に、街の人たちが訪れたお店の噂をしているのを聞いた。
どうやら街の食事処の組合の中であのお店は立場が悪くなっているんだって。それでお客さんが来ないように手回しがされているんだとか……なんでそんなことするんだろう?
大人たちがそんな意地悪なことをやっているのは正直嫌な気持ちになった。
「どうしてそんな意地悪するんだろう?」
「何か些細なことが気に食わなかったんだろ」
「しょうもないことでそういうことをする人間は、少なからずどこにでもいるのよ」
わたしの疑問にパパとママはそんな風に言っていた。
特に理由もなくそんなことをするのは、余計によく分からないなと思った。




