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パパとのお出かけ ①

「~~♪」



 今日はパパとのお出かけの日だ。



 わたしはパパとお出かけが出来ると聞いた日からずっと楽しみで仕方がなかった。だってパパとのお出かけだよ! これで喜ばない人なんてきっといないよ。などとそんなことを考えてしまうぐらいわたしはパパとのお出かけを心から楽しみにしていた。

 だからお出かけをするその日、わたしは早起きして窓を開けてご機嫌に歌を歌ってしまった。




 それにしてもこの三か月、パパが散歩以外で外に行くことは全然なかった。街にも恐らく一度も行っていないと思う。なのにパパはどうして突然街に行くことにしたのだろうか。何か用事でも出来たのかな。

 でもどんな理由があろうとも、パパと一緒に出掛けられることは嬉しかった。あれ、でもわたし靴を持っていない。街に行くのならば靴がないとおかしいよね? とそのことが気になってしまった。



 そのあたりはパパに聞こう。

 とりあえずパパとのお出かけだー!! と思うと本当に嬉しくなった。




 まずは朝食の準備をする。朝ごはんを食べてからお出かけだってパパが言っていたから、先に用意しておかないと。

 自分だけで料理を作るようになってから料理を作ってからパパを起こすようにしているのだ。

 朝食を作ったわたしはパパを起こしに向かう。




「パパ、パパ、朝だよ」



 パパの元へと向かって、いつものようにパパをゆする。パパはいつも通り寝起きが悪かったが、何度か起こすと起き上がってくれた。




「パパ、おはよう!! 今日はお出かけの日だよ」

「ベルレナ、おはよう。お前、今日はより一層元気だな……」



 パパは寝起きでちょっと元気がない様子だった。それに対してわたしは元気満々である。パパは呆れたような視線を向けていた。



「パパとお出かけだから!」

「そうか」

「うん。朝ごはんもう出来てるから。行こう」




 まだ夢の世界に旅立っていたそうなパパの手を引いて、わたしはパパと食卓へと向かう。それにしてもパパはお出かけの日でもいつも通りだ。わたしだけ楽しみで仕方がないとなっていて、ちょっとだけ恥ずかしい。

 パパと一緒に朝食を食べる。その最中にわたしは気になったことを聞いてみた。



「パパ、お出かけする時の靴がわたし、ないよ」

「大丈夫だ。そのあたりはニコラドに用意させた」

「え、そうなの」

「ああ。この前、手紙と一緒にトバイが持ってきていたぞ」



 そう言われてわたしは驚いた。わたしはそこまで見ていなかったけれど、一緒に靴も持ってきてくれていたらしい。

 パパが指を鳴らすと靴がその場に現れた。革で出来た小さな靴だ。その靴を履く。大きさは丁度良い。




「わぁ、靴!! ありがとう、パパ」



 わたしはパパから靴をもらえたことが嬉しかった。



 その靴を履いて、くるりと一回転しようとして、そのまま足を取られてこけそうになる。パパはそんなわたしを見てまた指を鳴らした。そうするとわたしの身体がふわりと浮いた。



「気をつけろ」

「うん、ありがとう、パパ」



 パパはわたしを床へとおろしてくれる。わたしはパパに向かって笑いかけた。



「ねぇ、パパ。どうやって街に行くの?」

「途中までは転移だな。その後は歩く」

「転移?」

「初めて会った時に急にこの屋敷に移動しただろう。それが転移だ。異なる場所へと移動を可能にした魔法だな」

「流石パパ。でもそれで最初から街に行かないの?」



 パパは最初にこの屋敷に移動した方法で街まで行くらしい。やっぱりパパは凄い。

 でもどうして最初から街まで転移で飛ばないのだろうか? そう口にしたわたしにパパは言う。




「転移魔法は使える者が少ない魔法だ。それでいったら目立つだろう」

「そうなの?」

「そうだぞ。下手に魔法が得意なことを知られたら国仕えさせようとしてくる連中もいるかもしれない。そうなったらややこしいだろう」



 ようするにパパは凄いからこそ、国から仕えてほしいと言われたりして大変なことになるかもしれないらしい。お父様は王様の覚えが目出度いことを誇らしげにしていたけれど、パパは違うのだろうか。



「パパは国に仕えたくないの?」

「そうだな。国仕えは面倒だぞ。特に俺は年を取らなくなっているからな」

「凄い事だよね?」

「お前は子供だからそうやって無邪気に言えるんだ。周りからしてみれば年を取らない奴なんて化け物だからな」

「化け物? パパは怖くないよ?」



 化け物って、怖い存在のことを言うのだと思う。それを考えるとパパは優しくて、怖く何てない。

 なのに誰がパパを化け物と呼ぶのだろうか。わたしにとって大好きなパパなのに。




「お前はそうでも他は違う。煩わしいことになれば面倒だろう。だからバレないようにしていくんだ」

「うん」




 どんなふうに面倒になるのかはわたしには分からなかった。だけれど、パパがそういうのならばそうなのだろう。



 パパが凄い魔法を使える人なんだって周りに自慢したい気持ちはあるけれど、パパがバレないようにいきたいというのならばわたしはその通りにしようと思った。

 それからわたしとパパはお出かけの準備をした。準備といってもそんなに時間はかからない。パパの魔法ですぐにここに戻って来れるからというのもあり、バッグに入れている荷物も少ない。




「手を繋ぐぞ」



 パパにそう言われて、パパの手を握る。

 そしてパパが何かしたかと思えば、目の前の光景は全く違うものになっていた。


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