今年もお祝いをする ①
「ママ、それはこっちに並べた方がいいかも!」
「そうね」
わたしは今、ママと一緒にケーキや料理の準備をしたり、飾り付けをしたりしている。
というのも今日はわたしの三度目の誕生日だから。
パパの誕生日も春だから一緒の日にお祝いしようとなっていたのだけど、ママは自分の誕生日を覚えていないなんていうのだから、ママの誕生日も同じ日にお祝いすることにした。
やっぱりパパもママも自分のことに無頓着というか、そういうのを気にしなさすぎだと思う。わたしはパパもママも、お祝いしたい。
それにママと家族になって初めての誕生日だから、なんだかまた特別な日に感じられる。
ベルレナとして初めての誕生日をお祝いしてもらった時は凄く嬉しかった記憶がある。
自分の身体を追い出されて、魂だけのままでさまよって――だからわたしはパパがお祝いをしてくれたことが嬉しかった。
誕生日をおめでとうって言われることは、とても嬉しくて楽しいことなのだ。
二度目のベルレナとしての誕生日は、パパの誕生日も一緒にお祝いすることにした。互いにお祝いをしあって、楽しく過ごせるのってとても素敵で楽しい日だった。
そして今年は、ユキアが生まれて、ママが家族になってから初めての誕生日。
うん、毎年初めてというか、楽しいが増えていくのって凄く嬉しいと思う。
パパとママへの誕生日プレゼントもそれぞれ用意したの! あとは料理の本を見て覚えたお祝い料理とか、色々準備したりしているの。
折角だから屋敷内の飾り付けもしていて、もう準備の段階から楽しい!!
「ふんふふ~ん」
わたしは楽しくなって鼻歌を口ずさむ。
歌っているのは、誕生日のお祝いの歌。世の中には誕生日をお祝いする歌も沢山あるんだよ。
パパとママに連れて行ってもらった街で実際に聞いたり、本で集めたお祝いの歌。
こういうお祝いの歌って、なんだかメロディが明るくて、色んな思いが籠っているように思えるからなんだか楽しいって思う。
「こんな風に誕生日のお祝いするの初めてかもしれないわ」
ママは一緒に準備をしながらそんなことを言っていた。
「これから毎年お祝いだよ! 毎年ね、楽しいがふえていくんだよ」
「楽しいが増えていく?」
「うん。パパと出会ってから、パパはわたしと初めて会った日だって誕生日をお祝いしてくれるのだけど、毎年ね、楽しいが更新されていくっていうか……今年はママも一緒だからより一層楽しいなって」
わたしがそう言って笑えば、ママも笑ってくれる。
「ママもパパの誕生日をお祝いするのって初めてなんでしょ?」
「ええ。ディオノレは自分の誕生日をお祝いする習慣なんて私と一緒でなかったし……、そもそも私はディオノレの誕生日を祝えるような関係じゃなかったもの。……正直、契約とはいえディオノレと家族としていられること夢みたいな気持ちになるわ」
「ママ、嬉しそう!」
ママが嬉しそうで、わたしも嬉しくなる。
ママはこういうところが可愛いとわたしは思う。パパも可愛いって思ってたらいいなぁとも思う。
一緒に過ごせば過ごすほど、仲良くなれると思うので、パパとママがもっと仲良くなってくれたら嬉しい。
誕生日という特別な日だから、パパにとってもママにとっても楽しい最高の日になったらいいなぁ。というより、わたしがパパとママにとっての最高の日にするの!
「ママはパパのことが大好きだよね! わたしはパパのこともママのことも大好きだから、二人のこと、お祝い出来るの凄く楽しくなってるの! ママもそうでしょ?」
「ええ。なんだかワクワクしているわ」
ママも同じように楽しいという気持ちでいっぱいな様子にわたしも嬉しくなる。
今日はね、家でゆっくりと過ごすことになっているの。
明日は家族で出かけようって話になっているんだけどね。あとニコラドさんもお祝いしに来るって言っていた。
お祝いしてもらえるのは嬉しいことだから、ニコラドさんが来るのも楽しみだなって思ってる。
そうやってママと一緒に会話を交わしていたら、パパが起きてきた。
やっぱり誕生日の日は、パパは少しだけ早起きしてくれるんだよね。パパも誕生日を楽しみにしてくれているのかな? と嬉しくなる。
「パパ、おはよう! 今ね、ママと一緒に色々準備していたの」
「ああ。おはよう」
寝起きだからかパパは少しだけ眠たそうだけど笑ってくれた。
「パパ、ママ、二人とも誕生日おめでとう!!」
わたしがそう言ったら、二人ともわたしに向かっておめでとうと笑ってくれた。
こうやっておめでとうって言いあえるだけでなんだかとっても幸せだよね。




