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春の日、秘密基地へ ②

「ユキアは過去の精霊獣の記憶の中で、学園についてのものだったり、杖についてはあるの?」

《んー、ないかも。僕に記憶を引き継いできた親たちはあまり人と関わっていなかったみたいだから》

「その記憶って、ずっと残るの?」

《流石に消えていくものもあるよ。僕ら精霊獣の頭にも容量があるから……》

「そっかぁ。学園生活、どんな風になるかなって、まだ先だけど考えるだけで楽しみ」




 秘密基地の中で、魔法についての本を読みながらわたしはユキアと一緒にゆっくり過ごしている。



 この魔法の本は、驚いたことにニコラドさんの名前が載っているの。ニコラドさんがくれた本なのだけど、ニコラドさんって本にも名前が載ってて凄いよね。



 ……パパが書いた本とかがあったら読みたいななんて思ったけれど、パパは面倒なことは嫌いだし、絶対そんなものは書かなさそう。本を書くのって凄く色んな人の手が関わってそう。パパはそういう風に人と関わることを嫌がるから、そういう面倒なことはきっとしないから。



 わたしは魔法についてはパパから口頭で、直接学ぶことが多い。パパから聞いた方が速かったりするもん。

 というか、今までニコラドさんがこの本を渡してこなかったのってちょっと恥ずかしかったからかな? ニコラドさんが関わっているだけあって、この本って読みやすい。でもなんというか、魔導師としての常識とかは書かれていないみたい。

この本は一般的に出回っているものなのかな。

 ニコラドさんがこういう真面目そうな本に関わっているのって凄く不思議だな。




《学園って使い魔連れている人も多いのかな?》

「どうなんだろうね? それなりにいるかもしれないけれど。目立つならユキアのこと、あんまり外に出してあげられないかも。パパが毎週帰ってこれるようにするって前に言っていたから、週末や寮では出せると思うけれど」

《んー、まぁ、それは仕方ないよ。ネックレスの中も心地が良いし》

「皆が使い魔を連れているならユキアのことも沢山外に出せると思うけどね。珍しい使い魔を連れていると、よこせって言ってくる人いるかもしれないし」

《人って自分勝手だよね。僕を無理やり拘束とか、連れて行こうとかするなら――災害が起きてしまうだろうね》

「アイスワンドもそういう感じだもんね。ユキアのことは私が守ってあげる!」

《ベルレナにそう言ってもらえると心強いね。僕もベルレナに何かあるのならば守るよ》




 嬉しそうな声でユキアが言う。



 なんだか互いに何かあった時に守ろうと言いあえる関係って凄くいよね。わたしはなんだか嬉しい気持ちになった。




 ユキアは当たり前みたいにわたしと契約を結んでいるけれど、精霊獣という存在は珍しいのだ。その存在に対する本も少ないし、実物を見たことがない人って多そうだよね。

 だからやっぱり人前でユキアを連れ歩くのは結構危険かもしれない。

 何かあってわたしがユキアのことを嘆けば、パパが行動を起こすかもしれないし。




 そのあたりもちゃんと考えなきゃなって思う。ユキアのことは街では外に出さないようにしている。でもユキアだって外には出たいだろうし。うん、ユキアのストレスがたまらないように学園に通う時にそのあたりのことも考えておかないといけないね。





「どんな使い魔を学生たちが連れているかとかも考えるのも楽しいよね。わたしが見たことがないような使い魔も沢山いるんだろうなぁ」




 例えばユキアを見せても大丈夫というぐらい仲が良い友達が出来て、そしてそのお友達の使い魔と一緒にユキアを遊ばせることが出来たら――うん、想像しただけでワクワクする。





「学園に入学するまでの間に、精霊たちの誰かと契約を結んでもいいなぁ。結局結びたいって言われているけれど、決め手がなくて契約していないもん」

《精霊たち、僕のこと凄く羨ましがってたもんね。それだけベルレナと契約を交わしたいってことだよね》





 以前訪れた精霊の里にはパパに連れられて時々顔を出している。そのたびに精霊たちとわちゃわちゃと楽しく過ごすのだけど、結局誰と契約を結ぶかって悩んでいてなかなか決められないんだよね。

 でも精霊たちは長生きをするものだからか、人とは生き方が違うからか、わたしがゆっくり選んでいても全然急がせようってしないんだよね。のんびりさんが多いみたい。




「契約を結びたいって言ってくれることは嬉しいけれど、全員とは契約を結べないから誰と結ぼうかってぴんとこないんだよね。でもいざ、あの場所の精霊たちの一人とだけ契約を結んだらずるいってなったりするのかな?」

《精霊たちはそんなことは気にしないと思うよ。でも折角契約を結ぶなら変わった子だと面白いって思うかも》

「変わった子かぁ。んー、悩むね!! ユキアと相性が良い子の方が嬉しいよね」




 ユキアと相性が良い子ってどういう子だろう? ユキアと仲良くしてくれる子がいいし。

 そのあたりも結構悩むよね。




 魔法の本をちらちら見ながら、ユキアとそうやって会話を交わしているのだけど考えることが沢山あるなって思う。





 誰かと契約を結んでもいいなっていうこと、どんな杖を作成しようかということ、学園生活でお友達が出来るかなってこと。もっと常識的なことを学んだ方がいいし、例えば学園で何かあった時にどんな対応をした方がいいかも考えないと。

 まだ先のことだけど、わたしは学園に通うことを考えてワクワクしている。




 あとは身体を奪ったあの子のことももっと間近で見ることになるんだよね。

 あの子は元々のベルラが通う予定だった貴族の通う学科に通うだろうし、あんまり関わりはないだろうけど。そういえば、あの子はわたしの身体に入った後によく分からない単語を口にしていたよね。あの単語って結局なんだったのだろう?

 あの子は多分、わたしには気づかないだろうなぁ。わたしはただの平民として入学することになるだろうし、公爵令嬢からしてみれば平民はそこまで気にする存在でもないし。





「ねぇ、ユキアは悪役令嬢って言葉知ってる?」




 あの子の言っていた言葉は確かあくやくれいじょう、多分、今考えてみると悪役の令嬢ってことだよね?

 悪役令嬢って、なんだろう?

 もしかしたら精霊獣の記憶にはその単語があったりするのかなと問いかけてみた。




《え? 悪いお嬢様ってこと??》

「んー、なんか別の意味があるような気もするんだよね」




 なんだか悪いお嬢様とか、それだけの意味で言ってないようなそんな気がする。

 学園に入学したらあの子に会うこともあるだろうって思うと、何だか身体を奪われてすぐのことが思い出されて、なんだかそんなことを考えてしまった。



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