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家族の絵を描いてもらいに行こう ②

「よく来てくれたね!」



 久しぶりに会った画家――さんは、わたしたちを見てとても嬉しそうな顔をした。



 話を聞いたところによると、わたしとパパの絵の複製画はとても売れ行きが良いみたい。パパはとってもかっこいいからね!



 画家さんはママのことを見て、「これは描き甲斐がありそう!」と大興奮していた。

 よっぽど絵を描くのが好きなんだろうなと思う。



「今回は三人の家族の絵を描いてほしいの!」

「もちろん、いいとも」



 画家さんはそう言ってにこにこと笑った。



 嬉しそうな顔をしている画家さんは前に会った時よりも売れっ子になっているみたいで、その屋敷には絵を描くときに使える道具がそろえられていた。



 その中でひときわ面白いなと思った魔法具は、後ろの風景を切り替えられると言うか、別の風景を映し出せる魔法具だった。

 外に出なくてもそこにいるような気分になれる面白い魔法具だと思う。画家さんの身なりは以前と全然変わっていない。なんだかパパやママと同じような研究タイプの気配がする。一つのことに集中して、他のことをあまり気にしないようなそういう人。

 だからこそ、お金を稼げるようになったとしても自分の身なりに使うのではなくて、絵を描く時に使う道具とかばかり取り揃えているのだろう。




 画家さんがこれまでに描いた絵も見せてもらった。アトリエの中には、風景画から人物画まで様々な絵が並べられている。

 凄いなぁと思って眺めていると、ママがあまり喋っていないことに気づいた。




「どうしたの?」

「いえ、なんだか見覚えがあると思ったら……私は此処の家系と関わったことがあるわ」

「え? そうなの? 凄い偶然。昔は錬金術師の家系として有名だったって聞いたよ」

「そうね。有名な錬金術の家系だったわ。国でも力を持っていた家系が、今はこうなっているのね……と少し驚いたの」

「そうなんだ」



 ママの言う昔がどれだけ昔かは想像が出来ない。



 ママはパパよりも長生きしているって話だし、わたしが想像できないぐらいずっと昔のことなのだろう。ママはこの家系が繁栄していた時の事も知っているのならば、こうやってそうではなくなった今を見て複雑な気持ちでも感じていたりするんだろうか?



「ベルレナ、そんな顔をしなくて大丈夫よ。長生きしていれば昔栄えたものが、そうではなくなることはよくあることよ。国が亡びたりとかね」

「国が亡びるって凄く物騒な言葉!」

「でも国家というものも永遠ではないわ。どれだけ強大な国だろうとも、亡びる時は亡びるのよ。私もそういう国家の滅亡に関わったことがあるわ」



 正直、国が亡びるなんていうのは想像もできない話だ。

 ベルラだったころのわたしも、今のわたしも、そういう大きな国が亡びるなんて知らない。もしかしたら遠い場所で亡びている国があるかもしれないけれど、実際にそれに関わるなんて想像もできない。

 ママはそういう経験をしてきたことがあるんだと思うとびっくりする。



 わたしはママにその国が亡びた時の話を聞こうとした。でもその前に画家さんに呼ばれたので、一旦そのお話はおしまいになった。

 今度、時間があるときにママに聞いてみよう。




「どんな風景がいい?」




 そう聞かれて、わたしは悩んだ。





 後ろの風景を切り替えられる魔法具は、登録している風景しか当然映し出せないらしい。画家さんの持っている魔法具は奮発して十個もの風景を映し出せるんだって。どういう仕組みなんだろうね? 



 こういう魔法具を見ると、中身がどうなっているんだろうかって気になるの。

 わたしはまだ魔法具を作成したことはないけれど、いつか自分の手で魔法具を作りたいって思っている。だからこそ、こういう面白い魔法具を見るとワクワクする。




 その映し出せる魔法具を見せてもらって、選んだのは春にぴったりな花が咲き誇る光景。

 なんだか実際に行っていなくても、こうして映し出してもらえると楽しいね。





 それからわたしと、パパとママの三人の家族の絵を描いてもらった。





 やっぱり画家さんの描いてくれる絵はとても上手で、なんだかまた宝物が増えた気持ちになった。前の絵も凄く好きだよ。でもね、ママも追加されるともっと特別な気持ちになる。

 また複製したものを売るって言っていた。そこまで広まらないようにはするらしいけれど、売り上げの一部はまたもらえるようにするんだって。





 わたしはちゃんとパパに聞いてなかったけれど、以前の絵で受け取った売り上げもそれなりの額になったみたい。

 それにしてもわたしの絵、どんな人が買ってるんだろうね? どんな人のところに、家族の絵が迎えられるのだろうか? わたしたちが仲良しだって色んな人が知ってくれると思うとなんだか嬉しいよね!




 花が咲き誇る花畑で、わたしとパパとママがいる絵なのだけど、とっても華やかで素敵な絵なの! だからきっと複製画も売れると思う。





 嬉しくなってお礼を言って、もらったその絵をわたしは抱きかかえるように持つ。




 この描いてもらった絵は、前にもらった絵の横に飾ろう。


1月14日に書籍発売になります。

よろしくお願いします


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