ママの部屋と、昔の話 ①
「ママの部屋も荷物が増えてきたね!!」
外には冬が降っている。しんしんと降り注ぐ雪を見ながらわたしは目を覚まして、そして今日はママの部屋にやってきた。
わたしとパパだけで暮らしていた屋敷にママの部屋が出来て、少しが経ち、少しずつ荷物が増えている。
ママもパパ同様にあまり周りに関心がなかったり、部屋の模様替えに今まで興味がなかったみたい。でもわたしが「これはどう?」とか家具のこと問いかけたら答えてくれるんだよね。
ママって結構可愛いものも好きなの。
自分から買おうとするのは恥ずかしいって思ったりもするみたいだけど、わたしが勧めるとすぐに買ったりするの。ママってそういうところ、可愛いよね。
「ええ。こうやって模様替えするの……案外楽しいわよね」
「うん、凄く楽しいよね」
ママの部屋に置いてある家具は最初はパパが適当に持ち込んだものだけど、今はママの選んだものばかりになってるから個性が出てると思う。
ママは可愛い物もそこそこ好きみたいだけど、黒とかシンプルな色も好きみたいなんだよね。うん、ママらしいって思う。
わたしはママの部屋によく遊びに行く。
ママも自分の部屋にこもること結構あるからね。ママはわたしが部屋に行くと笑って受け入れてくれる。
「ママの持ち込んだ本って、面白いね」
書庫にママが持ち込んだ本も今並べられているのだけど、パパの持っている本とはまた違ったりもするんだよね。
旅行記の本とかも面白いと思う。
実際に行ってなくても、その場を訪れたような気持ちにもなれて……、次にそこに行きたいってそういう気持ちになるから。
ママの持ち込んだ本は、魔法の本が多いけれど旅人の書いた本も多い。それもただ楽しい事ばかり書かれている本よりも実用的なものが多い気がする。
それに後ろの方に書かれている出版年がずっと昔なんだよね。ママが遠い昔、自分の足で旅をしていた頃に買って大切にしていたものなのかな。その頃と、今では旅の常識も違ったりするみたいだけど、それでもこういう本って面白いと思う。
昔の本でも綺麗なままなのは、ママが本に魔法をかけているからなのかな。
「ママの部屋って昔のものも多いよね」
「空間魔法で保管できるようになってからは、物を捨てることもあまりなくなったもの」
「それって、結構不要なものも取っておいているってこと?」
「そうね。全然確認していなかったりもするから、色んなものを保管しているわね」
ママはそんなことを言った。
……なんだかパパも同じようにとりあえず保管しているものって多そうだよね。幾らでも保管できそうだから問題はないのかもしれないけれど、そういうところはパパもママも大雑把なところがあるのかもしれない。
「でもそうね、本当に全く使っていないものは捨ててもいいかもしれないわ」
ママはわたしの目を見て、そんなことを言った。
「じゃあ、片付け一緒にしようよ」
「そうね。ちょっといらないものは捨ててもいいわね」
そんなわけでわたしはママと一緒に、ママが保管し続けているもののを整理することになった。
それにしてもママはわたしが想像できないぐらいずっと長く生きているからこそ、それだけ思い出の物とかも多いのかもしれない。
わたしも思い出があるものだと大事に取っておきたいなって、そう思っているから。
パパが買ってくれたものとか、そういうものをわたしはずっと大事にしたいから。
ママは空間魔法から、少しずつ物を取り出す。
その中には、沢山のメモもある。ママが魔法の研究をするために書き留めたものみたい。それに目を通してもわたしには理解できないぐらい難しい。文字は読めるけれど、何を書いているのか分からなかったりする。
パパの研究しているものもわたしは全然意味が分からなかったりするけれど、パパもママも理解しているんだよね。やっぱりパパもママもすごい。
何か魔法陣の描かれたものもあった。
わたしはそれに手を伸ばす。
そしたらママに慌てて止められる。
「ベルレナ、それはちょっと危険だからあまり触れない方がいいわ」
「危険なの?」
わたしは慌てて伸ばした手を引っ込める。
ママが危険だっていうぐらいだから、本当に危険なんだろうなってびっくりした。
「そうね。昔、興味本位で作った悪魔を呼び出すための陣だから触らない方がいいわ」
「えっ。悪魔……? ママは大丈夫だったの?」
「ええ。呼び出した時に馬鹿なことを言っていたから服従はさせたもの。でもベルレナは手を出すと危ないから悪魔召喚はしない方がいいわ」
「うん。しないよ!」
ママの言葉にわたしはそう言って頷いた。
それにしても馬鹿なことを言っていたって何を言ったんだろう??




