冬の日、家族三人での旅行 ⑨
あの後、ビデックくんたちをダニエメさんとマドーキさんたちのところへ預けてからわたしたちはダニエメさんの家を後にした。
「ねぇ、パパ、ママ。二人ともこうやって怖がられることあった?」
わたしたちは宿へと戻った。
わたしは魔導師であるパパとママと一緒に過ごしていて、魔法が当たり前に日常にある暮らしをわたしはしていた。だからこそわたしの使う魔法なんて大したことないってそんな気持ちになっていたけれど、わたしの魔法は同年代の子供には恐れられてしまうものなんだなってびっくりした。
「人は自分の理解出来ない力を恐れるものだ。ただ正直怖がられたことは何も気にしなくていい。怖がる奴は捨て置けばいい」
「パパって、そういうことはっきりしているよね?」
パパはあまり周りのことを気にしない。人の視線も気にしないし、誰かの評価もどうでもいいと思っている。
わたしはパパのそういう強さが、好きだなって改めて思う。
わたしは身体を奪われていた二年間で周りに嫌われていたことにショックを受けた。パパの娘になってからすぐはパパに嫌われたくないってそればかり思ってた。もちろん、誰かに怖がられたり、嫌わられたりすることは悲しいと思う。だけど、私は魔導師の娘で、多分普通の同年代の子よりも魔法をたしなんでいる。パパやママから沢山のことを学んでいて、だからこそ出来ることも多いと思う。
それがわたしで、そんなわたしを怖がる人がいるのならばそれはそれで仕方がないことなのかもしれない。
「そうよ。ベルレナ。力があるということは、その力を怖がる人もいれば、利用しようとする人もいるものよ。ベルレナは魔導師の娘だからこそ、狙われることもあると思うわ。ベルレナは見た目も良いからその点でも」
「うん……」
ママが言った言葉に、わたしは頷く。
「ベルレナのことは私もディオノレも守るけれど、貴方がもっと大きくなった時に一人で対応しなければならないこともあるから、周りの視線には慣れていた方がいいわ。周りがどんな視線を向けようとも、どれだけ周りが敵になったとしても少なくとも私はベルレナの味方だから」
「俺も、何があってもベルレナの味方をする。お前は俺の娘だから、周りの目も気にせずに堂々としていればいい」
ママとパパが笑っている。
――なんだか、多分二人はわたしが世界中のすべてを敵に回したとしても、わたしのことを子供としていつくしんでくれて、わたしの味方でいてくれるのだろうなってそう思った。
わたしはパパとママが居てくれると、それだけでなんだって出来るようなそんな気持ちになる。
「ふふっ、そうだよね。わたしにはパパとママがいるもんね。わたしは自分が魔法を使えるようになること、嬉しいし、パパとママに教わって色んなことが出来るようになったわたし自身のことを誇らしいって思ってる。だからわたしは――うん、パパとママの言う通り、怖がられても気にしないことにする」
わたしにとってはパパもママも大好きで、力があったとしても全然怖くない。
わたしが怖がられたくないなら、魔法を学ばないって選択もあるのかもしれない。けれどわたしは魔法を学ぶことが好きだし、パパとママの娘として凄い魔法使いになりたいから。
うん、そう思っているからこそ怖がってくる人に関しては仕方がないよね。怖がられたくはないけれど、わたしはわたしだから。
「わたしはパパとママの娘だから、魔法はもっと学びたいし。そういうわたしを受け入れてくれるお友達が出来たら嬉しいな」
わたしがそう言ったら、パパとママは笑ってくれた。
それにしてもパパに頭を撫でられると、凄く嬉しい気持ちになる。
わたしはパパとママが一緒にいると頼もしくて、大好きだって思う。
わたしは魔導師の娘というわたし自身を受け入れてくれる人と出会えていけたら、きっと幸せなことだろうなって思った。




