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冬の日、家族三人での旅行 ⑥

「ちょっと予想外のお客さんも来ているのだけど、入れていいかしら?」

「予想外のお客さん?」




 戻ってきたダニエメさんは、少しだけ困った顔をする。ダニエメさんが困った顔をするようなお客さんってどういう人なのだろうか?




「ええ。マドーキが来るのは想像していたから問題ないのだけど……、この国の王子たちがついてきたみたいで」

「王子様?」

「そうなの」



 わたしの言葉にダニエメさんは頷いて、パパとママを見る。



「ジャクロナとディオノレは、そういう権力者とは関わりたがらないでしょう。あれだったら追い返すけど」



 ああ、そうか。パパもママも人里離れた場所で誰ともかかわらずに生きているような人だもんね。だからこそ、ダニエメさんも気を遣っているらしい。



「ベルレナがいいならいい」

「そうね」



 パパとママはそう言ってわたしの方をちらりと見る。



「えっと、じゃあね、ちょっと、会ってみたいかも!!」



 パパとママは人付き合いをすることを好んでいない。だけれど、わたしは色んな人と会えた方が楽しいかなと思ってそんな風に口にした。

 それにしてもこういうパパとママの態度を見ると、二人ともわたしのことが大好きなんだなって嬉しくなる。わたしもパパとママのことが大好きだから、なんでもしてあげたいなって思うから、同じ気持ちだけどね!



 わたしの言葉を聞いて、パパとママが笑ってくれた。



 そしてダニエメさんは「本当にお父さんとお母さんしているのね。面白いわ」と笑いながらマドーキさんたちを出迎えに行った。



 ダニエメさんが連れてきたのは、マドーキさんと見たことのない二人の男の子。二人も茶色の髪と、緑色の瞳で、兄弟なのだと分かる。その瞳が宝石みたいで綺麗だなって思った。




「ベルレナちゃん、ディオノレさん、一年ぶりだな」



 マドーキさんはそんな風に笑って、わたしたちの方を見る。



「お前たちは誰だ? ダニエメ様が俺たちよりも優先しているだなんて何者だ?」

「……兄上、そんな言い方はだめですよ!!」



 二人の男の子はとても綺麗で、黙っているとお人形さんみたいだけど想像していた性格とは違った。少しやんちゃなな雰囲気だ。

 王族の子供だってダニエメさんが言っていたのから、自分が優先されるのが当然とか思っていたのかもしれない。




「ビデック、その言い方はやめなさい。彼らは私の知人のディオノレとジャクロナとその娘のベルレナよ。貴方が王族であろうとも、こいつらには関係ないわ。私と同じ存在だから。下手な真似をしたら殺されるわよ? そして私は二人がかりでこられたらどうしようもないわ」





 ダニエメさんは脅すように、わたしたちに突っかかってきた少年――ビデックくんに声をかける。

 パパとママも相手が子供だろうとも、何かあれば簡単に手を下しそうな冷酷さはある。うん、わたしは娘だからちょっとぐらい我儘いっても許してくれるけれど、他の人はどうでもいいってパパもママも思ってそうだ。でも流石に何かやりすぎそうなときはわたしも止めるけど。

 ダニエメさんもパパとママを怒らせることをしないようにって、釘を刺したくて言ったのだと思う。

 ビデックくんは身体をぶるりと震わせかくかくと頷く。ダニエメさんから冷たい瞳を向けられて、おびえてしまったみたい。すぐに態度を改めた。



 わたしは折角だからお友達になろうと思って、二人に話しかける。




「わたしはベルレナっていうの。よろしくね」




 わたしがそう言って笑みを浮かべて話しかければ、なぜだか二人は顔を赤くした。ビデックくんの方は顔をそらしているけど、どうしたのかな?




「お、俺はビデックだ。仲良くしてやらんこともない!!」

「兄上、その言い方はだめだって。えっと、僕はキデック。よろしくね」




 二人ともなんだかんだわたしと仲良くしてくれようという気はあるのかそう言って笑ってくれた。

 それから大人たちが話している間に、わたしたち三人はおしゃべりをすることになった。




「ベルレナは魔導師の娘って凄いな!! 魔導師ってダニエメ様しかあったことがなかったけど、他に実在するんだな」

「ふふっ、わたしのパパとママは凄いんだよ‼」




 パパとママが褒められたことが嬉しくて、ビデック君の言葉にわたしはそう答える。




 ビデック君はこのアイスワンドの王太子の立場にあるんだって。キデックくんは第二王子で、王族だからこそこの国の守護者であるダニエメさんとも昔から交流があるんだとか。

 でも王族でもダニエメさん以外の魔導師に会うのは初めてなんだっていってた。



 わたしは当たり前みたいにパパとママと過ごし、ニコラドさんもよく遊びに来る生活をしている。魔導師が傍に居るのが日常になっている。

 ただこうしてビデックくんたちと話していると、それが普通とは違う暮らしだと分かる。




 ダニエメさんはアイスワンドの守護者としてここにいるから、アイスワンドの歴代の王族たちはダニエメさんと交流を持っているけれど――他の国だと王族といえど、魔導師の存在も知らず、会うこともない人がほとんどみたい。

 わたしは本当に恵まれているなってそういう気持ちでいっぱいになる。




「わたしのパパはね――」




 わたしはパパとママの話を、沢山出来るのが嬉しかった。それもパパとママが魔導師だって知っている人に話せるのは、また違う嬉しさがあった。

 今まで街で知り合ったお友達たちにも、パパとママが魔導師であることは告げていなかった。そのことが知られると大変なことになるかもしれないからって。でもこの場ではパパとママがどれだけ凄いかってちゃんと伝えられるんだから嬉しい。



 わたしがパパとママの自慢をすれば、ビデックくんと、キデックくんも同じように両親の自慢をする。アイスワンドの王様と王妃様はとっても素敵な人みたい。




 そうやって楽しく会話をしていたのだけど、



「なぁ、外で遊ぼうぜ!」



 男の子だからか、ビデックくんはおしゃべりをするだけは嫌だったみたい。




 いつも大人たちが喋っている間、ダニエメさんの家の外で遊んだりしているんだって。

 そういうわけでわたしたちは外で遊ぶことになった。



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