冬の日、家族三人での旅行 ③
「ママ、ここはね――」
わたしはパパとママと一緒にアイスワンドの王都を歩いている。
パパも去年一緒にこの王都を訪れたから、案内出来るだろうにパパはママを案内しようとしていないのでわたしが全部説明している。
パパもこの冬の景色がとっても似合うけれど、ママの黒髪も、冬の真っ白な景色に似合う。パパは真っ白な髪で、ママは真っ黒な髪で正反対だけどなんか二人並んでいると妙に絵になるなぁ。
そう思ったから一度手を離して、パパとママ二人を並べてみる。
「パパもママもなんか似合うよね。この冬の景色が」
「ベルレナも似合うぞ」
「私は似合わないと思うけれど……。でもそうね、ディオノレもベルレナもとってもこの王都になじんでいるわ」
わたしが二人を並べて似合うね、なんて言ったら二人にそんなことを言われた。
ママはなんだろう、凄く綺麗で、可愛いのに、自分に対する評価とかがひくいように見える。ママはもっと自分が凄い魔導師で、綺麗な人だって沢山言おう。だって誰かに言われたらそうなんだって思えるもんね。
わたしも、パパと親子になってすぐは遠慮していたけれど、パパの沢山の言葉や態度でわたしはすっかりそういう遠慮なくなったから。
今年のアイスワンドは、精霊獣の影響もあって、吹雪が去年より凄い。そのこともあって観光客ってあまりいないみたい。そして狩りに出かけるのも大変だったりするんだって。
このアイスワンドで暮らしている人たちだって、困っていたりするって聞いた。
パパとママと一緒だから、わたしは何も気にせずにこのアイスワンドを楽しめているけれど普通はそうではないんだよね。
屋敷の外に出れば出るほど、パパやママのような魔導師はすごいなって思うの。
相変わらずわたしたちが歩いていると視線をじーっと向けられたりする。それはパパとママがとっても綺麗だから。
わたしが色んな場所を案内するのをパパもママも笑顔で聞いてくれていた。
「ママはどこか気になるお店とかあった?」
街を見て回った後、わたしはそう問いかける。
だってわたしが素敵だなって思う所を案内していただけで、ママの行きたい場所には行けてないかもしれないから。
「そうね。じゃあ、あそこでご飯を食べたいわ」
ママはそう言って一つのごはん屋さんを指さした。
パパもそこのお店で問題ないみたいで、三人でお店の中へと入る。お昼時の時間帯だからか、人が沢山いる。観光客が少ないというのもあって、地元の人たちばかりいるみたい。わたしたちがこの王都の人間ではないってすぐに分かったのだろう。ちょっとだけ注目を浴びていた。
それにしても観光の人が少ないってことは、お店のお客さんも減るってことだよね。吹雪とかがひどいとそれだけ大変なんだなって思った。
「パパ、ママ、これおいしいね」
ママが入りたいと言ったお店は、温かいお鍋の料理の売っているお店だった。いきなり食べようとしたら舌がひりひりしたので、ちょっとさましてから食べた。具材が沢山入っていて、おいしかった。
ちなみにこういう寒い地域だと野菜を育てるのも色々大変らしい。吹雪が降る中で育てられないから、室内で育てたりするみたい。基本は狩ったものを食べているみたいだけどね。
本当に地域によって、その環境によって食べているものとかも違って面白いよね。
わたしが美味しいねって笑いかければ、パパとママも笑ってくれてとても楽しかった。
「ダニエメさんのところにはいついくの?」
「いつでもいいわよ。彼女の時間も長いから」
魔導師って寿命が長いから、いつでもいいってそんな感じみたい。でもわたしも早く会いたいから、明日には会いに行ってみることにした。
ダニエメさんってどんな人なんだろう? このアイスワンドを守り続けている魔導師。パパやママとはまた違った生き方をしている人。ニコラドさんは人と関わりながら生きているから、ニコラドさんと似たような感じなのかな?
どんな人なのか楽しみだな。
折角だからお土産も持っていきたいよね。
「何かお土産渡したいなぁ」
とはいえ、何を渡したらいいだろうか? そんなことをわたしは考える。
アイスワンドの王都で売ってあるものだと、ダニエメさんは見慣れていて喜ばないかな?
でもダニエメさんはあまり表舞台に立ってはいないってママが言っていたから王都のお土産でもいいかな。そう思ったので食事を取ったあとにお土産を買いに向かった。
「ねぇねぇ、ママ。ダニエメさんってどんなものが好みなの?」
「……分からないわ。でも面白いことが好きだから、ベルレナが会いに行っただけで喜ぶと思うわ。私の現状も面白がっているだろうし」
「そっかぁ」
ママはダニエメさんの好みまでは分かってないみたい。でも面白いことが好きならば、面白そうなお土産がないか探してみようかな。
「パパはどんなのがいいと思う?」
「なんでもいいだろ」
パパにも聞いてみた。それにしても、ちょっと適当だなと思った。
とりあえずわたしの主観で、お土産を選んでみることにした。
選んだのは、色んな味を楽しめる飴玉にした。なんだか製作者が面白がっているみたいで、変な味もあるみたい。嫌がられたらわたしが食べよう。そう思って別の無難なお菓子も買っておいた。
 




