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冬の日、家族三人での旅行 ②

 ダニエメさんに会うの楽しみだなぁと考えている間に、すっかり旅行に向かう日になった。



 まぁ、パパもママも転移魔法が使えるからすぐに移動できちゃうんだけどね。



 わたしたちの住んでいる山もそこそこ雪が降るけれど、アイスワンドは本当にびっくりするぐらい冬の世界だから、わたしたちはもこもことした服を着ているの。

 魔法のおかげで、寒いってことはないけれどね。


 パパとママと手を繋いでから、「楽しみだなぁ」と笑っているうちに、一気に目の前の景色が変わる。



 吹雪がふいている。

 でもなんだか去年よりも、風などが強い気がする。どうしてだろう?




「ねぇ、パパ。去年よりも環境が凄いように見えるよ」

「精霊獣――ユキアの親を人が殺したから、その反動だ」

「……そういえば、去年そういうこと、言ってたかも。アイスワンドの人たち大丈夫かな?」



 そういえば去年パパがそういうことを言っていた気がする。精霊獣という存在は特別だからこそ、災害が起きるって。

 その時は実際にどういう風になるのか分かっていなかったけれど、こういう風に天候も悪くなったりするんだってびっくりした。

 でもわたしはいまいち、精霊獣を人が害したからこうなるというのはよくわかっていない。それにしても精霊獣を害しておこったことはこのアイスワンドの魔導師であるダニエメさんにも出来ないってことなのかな?

 そう思って問いかけたら、パパとママが答えてくれる。




「精霊獣の魔力がこの土地に影響を与えているからこそ、こういうことが起きている。無理やりその魔力の流れを解消することは出来なくはない」

「ただ……よっぽどうまくやってもそれは自然の理から外れたことを行えば、その分反動が強いのよ。今よりもずっと、この土地が反動で荒れ果て人が住めなくなる可能性が強いわ」



 そんなことを答えられて、わたしは驚いた。

 パパとママみたいな魔導師って、なんでもできるイメージだけどやっぱりそれでも人なんだなっていうのが分かる。




「そうなんだ。じゃあダニエメさんも大変だね」

「この国を抱えるって決めたそいつの責任だ。ベルレナも何かをどうにかしたいと思った時に、無理をしすぎるのだけはやめろよ」

「自分が出来るって思って、無理したらそういう反動があるかもってことだよね」

「ああ。だからベルレナが自分で何とかしようとして出来ない時は真っ先に相談しろ。……いや、違うな、何かする前に相談しろ。ベルレナが軽い調子でやろうとしていることだって大変なことになることもあるから」

「うん、わかった!」



 わたしはパパの言葉に元気よく頷いた。



 わたしがやろうとしたことがもしかしたら大変な影響を及ぼすかもしれないことがあるってことだよね。それにしてもパパは過保護だなと思う。わたしのことを心配してくれていて、わたしに何かないようにしたいって思っててくれているのだ。




「ふふっ」

「ママ、どうしたの?」

「本当にディオノレはベルレナのことを可愛がっているなと思っただけなの」

「パパはわたしのこと、大好きだからね! わたしもパパのこと、大好き。ママのことも、大好きだよ」




 自信満々に答えて、パパとママのことも大好きだよって言ったらパパは満更でもない顔をしていて、ママは恥ずかしそうな顔をしている。



 そんな会話を交わしながら、わたしたちは吹雪が舞う中を歩いている。

 こういう場所で歩いているだけでも、周りからしてみたら不思議な光景なんだろうなとは思う。魔法の力ってやっぱり凄いなぁってパパと一緒にいるといつも思う。



「また王都にひとまず行くか?」

「うん!! そういえば、ママはアイスワンドは何回目?」



 パパからの問いかけに、わたしは頷いて次にママに聞く。



「アイスワンドの国自体には、昔来たことがあるわ。でも王都はないわね」

「そうなの?」

「ええ。あまり人混みは好きじゃなくて」

「そっかぁ。ママ、わたしは結構色んな所ぶらぶらしたいって思うけど、ママが人がいるところ嫌だったら無理して付き合わなくてもいいからね?」

「大丈夫よ。人が多いのは嫌いだけど、ディオノレとベルレナと一緒の旅行は私も楽しみたいもの」




 ママは人が苦手みたい。パパみたいに人付き合いが面倒だと思っているのとはちょっと違いそう。ママの昔話とかをいつか聞かせてもらえるようになったら知ることが出来るかな? でも人混みが苦手だっていうママがわたしと買い物に付き合ってくれたり、旅行に一緒にいってくれたりするんだよね。なんだかママがわたしのこと、好きでいてくれてるんだなって分かって嬉しい。




「わたしもパパとママと一緒に旅行凄く楽しみ!! 去年も来たから、ちょっとは案内出来るから、案内するね」

「ええ」




 アイスワンドの王都は二度目だけど、ママのことを案内出来るって思うと嬉しい。誰かにおすすめの場所を案内するのって面白そうだよね。



 そんなことを思いながら楽しい気持ちでいっぱいになる。



 それから三人で王都へと入った。去年も泊った宿にね、三人で泊まることになったの。ママはパパと同室なことに変な様子になっていた。緊張しているみたい。ママってそういうところが可愛いよね。




 相変わらず外は凄く寒そうなのに、中はぽかぽかしていてびっくりだよね。

 宿の従業員の人たちもわたしとパパのことを覚えていてくれたみたいで、「今年はお母さんも一緒なんだね」って笑ってくれたの。



 わたしはホムンクルスで、わたしたち家族は血のつながりとかはないけれど……、それでもそんな風に家族だって周りから認識されるのが嬉しいと思った。


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