冬の日、家族三人での旅行 ①
「へ、変じゃないかしら?」
「全然! ママ、すごく、可愛い」
パパとママと一緒にアイスワンドの国に向かうことが決まった。というわけで、わたしはママに似合う旅行中の服を選んでいるの。
折角、ママになったんだからパパをドキッとさせられた方が面白……いいよね。面白いって本音が漏れてしまった。でも、パパが恋をしたらきっと楽しいと思うの。
そもそもパパが家族としてママを受け入れたってだけでも、凄いことだと思う。ママじゃなければ多分、パパは家族にすることもなかっただろうしね。
それにしてもママって美人さんだから、色んな服が似合うよねー! 魔法で寒さは感じないけれど、アイスワンドでは違和感のない冬服を着なきゃいけないからね。ママがもこもこの服に身を包んでいて、なんだか可愛い。
ちなみにママとパパのコートはおそろいでわたしが選んだの。ママはパパとおそろいなのを恥ずかしがってたけどね。パパはどうでもよさそうに平然としていた。
わたしはね、うさぎさんのフードのついたコートを購入をしたよ。こういうの可愛いよね。可愛い服を着ると、パパもママも可愛いって言ってくれるの。
「ふふ、ママって色んな服が似合うよね」
「そ、そうかしら」
「そうだよ。ママに色んな服着てもらうの、凄く楽しい」
「ベルレナは洋服を選んだり、着たりするの好きよね」
「うん。楽しいもん」
ママの言葉にわたしは頷く。
「そういえばママって、アイスワンドの魔導師と知り合いなんだよね? どんな人なの?」
「楽しいことが好きで、魔導師にしては珍しく……人と関わることを嫌がっていない人だわ。あのアイスワンドの国を昔から彼女は気に入っていて、だからこそ、あの国の守護者をしているのよ」
「やっぱり魔導師で人と関わるのって珍しいの?」
「そうね。ひっそりと暮らしている者が多いと思うわ。でも中には、彼女やニコラドのように人と関わり続けている魔導師もいるのよ」
ママは、アイスワンドの魔導師やニコラドさんは魔導師の中では変わりものなのだとそんな風に言う。
「……今の現状を彼女が知ったら、凄く笑いそうだわ」
「現状って?」
「私がディオノレの……その奥さんになったこと」
「嫌な人なの?」
「嫌な人ではないわよ。私がただからかわれる未来が見えるだけよ……」
ママはそう言いながらも、心の底からは嫌ではないみたいだった。
ママも多分、本当に嫌っている人とは関わりあわない人に見えるから、そのアイスワンドの魔導師とママはお友達みたいな関係なのかもしれない。
「そもそも私がディオノレに娘が出来たと知ったのは、彼女が伝えてきたからなのよ……」
「そうなんだ! あれ、でもそれだけ仲良しなのに、パパと家族になったことを伝えてないの?」
「そんなに仲良しってわけではないわよ。……なんだか恥ずかしいじゃない」
ママはそんなことを言う。本当にママは照れ屋さんだと思う。
「んー、でもママとアイスワンドの魔導師さんはお友達なんでしょ? お友達の嬉しい出来事なら、きっと喜んでくれると思うよ。アイスワンドに行くときに挨拶もしたいし。ね、ママ、アイスワンドの魔導師さんに報告しようよ。わたしも一緒に手紙書くから!」
わたしがそう言ったら、ママは頷いた。
そういうわけでわたしとママはアイスワンドの魔導師さんに手紙を書くことにした。
はじめましての人に、手紙を書くのって結構難しいね。ママから聞いたのだけど、アイスワンドの魔導師さんの名前はダニエメさんっていうらしい。ええっと、ダニエメさんへって書いて。
ダニエメさんはパパのことも知っているし、ママとは仲良しみたいだから……魔導師ディオノレとジャクロナの娘のベルレナですって書いて……。
わたしがパパとママを大好きなことと、今度行くので一緒に遊んでくださいって書いておこうかな。あとはマドーキさんにもよろしくと伝えておいてくださいって書いて……。うん、これでいいかな。
手紙を書き終えたわたしはママの方を見る。
ママはあまり人に手紙を書かないみたいで、何とかこうか悩んでいるみたい。しばらくうなっていたママは、その後書くことを決めたみたいで一気に書いていた。
魔法でわたしとママの手紙がダニエメさんのもとへと届けられたわけだけど、返事がすぐにきて驚いた。
ちゃんと、わたしとママ宛の二通が届いたの!
わたしへの返信にはね。会えることを楽しみにしているって書かれてたの。あとママは誤解されやすい性格かもしれないけれど、優しいから仲良くしてねって。ダニエメさんはママのことが友達として好きなんだなって思って嬉しくなった。
ママは確かに一見すると冷たく見える面もあるもんね。でもママって可愛いし、優しいと思うの。そういうママのことを分かっている人がいると嬉しいよね。
ちなみにママはダニエメさんからの返答を見て、少し何とも言えない表情をしていたよ。見せてはもらえなかったけれど、からかうような言葉でも書かれていたのかな?
アイスワンドで、ダニエメさんに会えるの楽しみだなぁ。
 




