パパを秘密基地に招待する ③
パパとロナさんと一緒に三人で、ちょっとしたお茶会をするのが楽しくてわたしはずっと笑みを浮かべてしまう。
パパもロナさんも優しい笑みをわたしに向けてくれて、なんだかそれだけで幸せな気持ちでいっぱいになる。
「パパ、ロナさん、ちょっとわたし外の空気を吸ってくるね!」
わたしはそう言って、一旦秘密基地から出る。ユキアも一緒に連れていく。これでパパとロナさんが良い雰囲気になってくれたら嬉しいな。
そんなことを考えて楽しい気持ちになる。ロナさんがちょっとだけ、心細そうな雰囲気を出していたけれど、おいていった。
「パパは恋愛に興味なんてないだろうけれど、ロナさんのこと嫌いじゃないと思うんだよね」
外で心地よい風を感じながら、抱きかかえているユキアに話しかける。
《ディオノレさんは、ベルレナが望めば何でも聞いてくれそうだけど》
「いや、わたしが強要するのは違うかなーって。でもパパって、わたしのことも利用するって言って子供にして、結局わたしのことを可愛がってくれているから……。多分、ロナさんのことをわたしのために……って理由で家族に受け入れるとしたら、そのままなんだかんだロナさんのことを大切にするんじゃないかなって思う」
わたしがはっきり言葉を口にしてロナさんを母親に欲しいって言えば、パパはなんだかんだ受け入れそうだけど……、そうじゃなくてパパがロナさんの言葉を受け入れた上でどうするかだと思うんだよね。
パパがちゃんと考えて、わたしのためにでもロナさんを受け入れるならいいと思うんだけどね。
でもパパってなんだかんだわたしに甘くても、嫌なことなら拒否すると思うけど。……でも家族って形になれたらいいなぁ。
わたしは身体を奪われた時に、一度家族を失った。
――家族を失ったわたしに、家族が増えるって嬉しいことだよね。パパと家族になれた時、凄く嬉しかった。わたしは一人じゃないんだってそう思えることが幸せだと思っているの。
少しだけ風にあたってユキアと会話を交わす。
「わたし、ママが出来たら嬉しいんだけどなぁ。ロナさん、ママって呼んだら照れそうだよね」
《ジャクロナさんは照れそうだよね》
「うん。照れると思う。照れたロナさんはきっと可愛いだろうなぁ」
そういう会話を交わした後に、わたしはこっそりと秘密基地へと戻る。こそっとのぞき込む。
話が終わったのか終わってないのか分からない。そもそもロナさんはパパに告白出来たのだろうか? でもなんか顔が赤い気がするから告白したのかな? もう出てっていいかな? とうずうずしながらわたしはちらちらパパたちを見る。
「ベルレナ、何、こそこそしているんだ?」
「えっと、パパ、ロナさんとのお話終わった?」
わたしに気づいたパパに声をかけられ、わたしは質問する。だってまだ大人の会話をしているのならば、わたしは気になるもん。
「……ベルレナは、何の話をしていたか知ってそうだな」
「うん!!」
わたしが元気よく答え、期待するようにパパを見上げる。だってロナさん、パパに告白したんでしょ。
「ベルレナ、母親欲しいか?」
「欲しいよ! でもパパが嫌だっていうならいらない。でもわたしはママがいた方がきっと楽しいと思う」
わたしがそうやって答えれば、パパが小さく笑った。
「じゃあ、契約だ。俺はそういう感情をお前に抱いてはいない。だけれど、ベルレナのためには母親がいた方がいいだろう。それでいいなら受け入れてやる」
パパってば、ロナさんにちょっと冷たいなぁ。でもここで期待させるようなことを言わずにはっきりとそう口にするのがパパらしいと思う。
「ふふ、ディオノレらしいわ。もちろん、それで問題ないわ。私は……その、ディオノレのことがす、好きだし。それに私はベルレナの母親になれるならなりたい。貴方の家族になりたい」
最初は余裕そうな言葉だったけれど、途中から恥ずかしそうにしているロナさんは可愛い。
わたしはわくわくしながらその様子を見ていた。
「じゃあ契約は成立だ。お前をベルレナの母親にする」
「パパの奥さんでもあるよ? だからパパはママのことをお前じゃなくて名前で呼ばないとね?」
とっても楽しい気持ちでいっぱい!
わたしがロナさんのことをママと呼べば、わたしの想像通りにママは顔を赤くした。こうやって照れているママは可愛い。でもパパはすました顔しているんだよね。パパも一緒に過ごしているうちにママのこと、可愛いって思うようになるかな?
そんなことを思いながらわたしは新しく家族が増えたことが嬉しくて仕方がなかった。
その後、ニコラドさんにその報告をしたら「うわ、まじかよ。まぁ、でもおめでとうって言っておく」なんてなんか素直じゃないお祝いの言葉をママに告げていた。
この二人ももっと仲良くなればいいなぁ。




