パパを秘密基地に招待する ①
「ふふふ~ん」
《ベルレナ、楽しそうだね》
「楽しいもん。パパのことをね、この秘密基地に招待出来るって思うとワクワクするの」
わたしはそんなことを言いながら、秘密基地の飾り付けをしている。紙で飾りを作るの。本にね、紙で作る飾りの作り方とか見つけたの。紙で綺麗な飾りが作れるのすごいよね。あとね、紙を三角に切ってそこに一文字ずつパパを迎え入れるための言葉を書いて、それを壁に飾る。
なんだろう、こうやってパパを自分の場所に招待するって初めての経験で凄く楽しい。
ユキアはご機嫌な様子のわたしを見ながら、一緒に飾り付けとかを手伝ってくれる。
《色とりどりの紙をこうやって飾ると面白いよね。見ているのは楽しい》
「うん。とっても楽しいの。パパは喜んでくれるかなぁとか考えるとそれだけでも楽しい。この秘密基地に招待出来る人って限られているけれど、いつか色んな人が招待出来るようになれたら嬉しいかも。でも大きくなったら秘密基地に対する興味もなくなっているかもしれないけどね!」
誰かを自分の作った場所に招待出来るのは楽しいことだよね。
わたしはパパと一緒に誰もいない山の上の屋敷で暮らしていて、その場所を訪れる人は限られている。パパは魔導師だから、そのことを知られたら色々と面倒なことになるって言っているし。
いつかこの秘密基地に招待出来る人がいっぱい増えたらそれはそれで楽しいかなとかそういうことも考える。
将来のことを考えて色々ワクワクする。
飾り付けを終わった後は、パパへの招待状を作る。
言葉でパパに「来て!」っていうだけでもパパは来てくれるだろうけれど、こういう招待状書いてみたいなって思った。
わたしがベルラだったころ、お母様がパーティーの招待状を書いてたりしたなぁなどと思い出したからというのもある。公爵家に届いた招待状を見て、楽しそうにしていた。
わたしもお茶会の招待状をもらうとなんだか嬉しかったから、パパに招待状を渡してパパも嬉しいって思ってくれたらいいな。
「どんな文面にしようかな?」
《どんなのでも多分、ディオノレさんは喜ぶよ! でもせっかくなら面白く書いたら?》
「面白くかぁ。どうしよう? んー」
ロナさんと一緒に購入した小さな机で、わたしはパパへの招待状の文面を考える。ただ簡潔に書くよりも、もう少し面白くした方がいいかな? 遊び心って大事だよね。ロナさんはもう秘密基地に来たことあるけれど、ロナさんにも招待状を書こう。
ここに招待することに対して何か名前をつけようかな?
招待して一緒にのんびり何か食べて飲んだりしながらゆっくりおしゃべりするだけの場なのだけど……。でも貴族たちのそういう場だとお茶会っていうよね。『ベルレナのお茶会』みたいに名付けてみる?
「『ベルレナのお茶会』への招待状みたいに書いてみようかな」
《いいと思う!》
「ふふ、だよね。わたしもとっても良い名前だと思うの」
自分で決めた名前が良いものだと思うから、そういってわたしは笑った。
紙を二つ折りにして、表面に『ベルレナのお茶会』への招待状と書いて……。その周りに絵も描こうかな。お茶会だから、ティーカップの絵とか? あとはおかしの絵?
拍子にそれらを描いたあと紙を開いた中身の部分に、パパを秘密の場所に招待するよというのを描く。空いたスペースにパパとロナさんとわたしと、ユキアの絵を描く。あとわたしがそのお茶会を開くよっていうのと、参加者のところにパパとロナさんとかの名前を書いて……うん、こういう招待状書くのもとっても楽しいね。
お手紙を書くことも楽しいことだけど、こうして招待状を書くのも楽しいって気持ちでいっぱいになる。
《沢山絵を描いているね》
「うん、凄く楽しいもん。こういう世界にたった一つだけの招待状ってワクワクする」
出来たものを見て、なんだか嬉しくなってわたしは笑った。
とりあえずパパに招待状を渡そう!
そう思ったわたしは屋敷に戻るとパパを探す。
「パパ、ただいまー! パパ、どこにいるー?」
広い屋敷なので、帰宅してすぐにパパの姿が見えないこともある。なのでわたしはパパのことを探しながら歩く。
「ベルレナ、おかえり」
「パパ!!」
わたしのパパを呼ぶ声が聞こえたからか、パパがわたしの元へやってくる。わたしはパパに抱き着いた。パパはわたしを受け止めてくれて、楽しい気持ちになる。
「あ、そうだ。パパ! これ、あげる。ぜひ、きてね!」
わたしがパパに招待状を渡せば、パパはすぐにそれを見てくれる。
「招待状? ベルレナが最近こそこそしていたのはこれか」
「うん。秘密基地をね、作っていたの。パパを招待出来る準備が出来たからぜひ来てほしいの。沢山、おもてなしするからね。あとロナさんも呼ぶから、こっちはロナさんに渡してほしいの」
わたしがそう言って笑えば、パパも笑ってくれた。
パパを招待して、楽しませないとね!




