秋、山に行く ②
「凄く綺麗だよね」
《うん》
今日もユキアと一緒に山をぶらぶらしている。ユキアと一緒に山をぶらぶらしていると新しい発見が見えたりする。
パパと一緒に山の中を散歩もよくしていたけれど、ユキアとだとまた違った雰囲気というか、違う感覚になる。パパが危ないという所には飛び込まないようにしようとユキアと一緒に言い合ってはいるけれど、それでも好奇心に負けて色んな所に行こうとする。
洞窟を見つけて、中に恐る恐る足を踏み入れたら大きな魔物が寝ていて驚いたこともある。ただその魔物は人に襲い掛かってこない魔物だったみたいで、私たちを一瞥するとすぐにまた寝ていた。
マイペースな魔物というか……、わたしとユキアがその魔物にとって危険な対象として見られなかったからなのかもしれない。そういう時、見た目ってある意味力なのかもしれないと思う。
わたしはまだ子どもで小さくて……、だからこそ周りからしてみれば警戒対象に入らない。
ユキアと一緒にぶらぶらしているとおいしそうなものも結構見られる。実りの秋というだけあって、山には沢山の果物などが茂っている。それを蓄えている魔物の姿も見える。
冬になったら冬眠する魔物もいるから、冬が訪れる前にそうやって準備をしているのだろう。
「秋はおいしそうなものも沢山あるよね」
《拾い食いはしない方がいいよ?》
「流石に拾い食いはしないよ! 食べたかったら一旦持って帰ってパパに確認してからかなぁ。いつも食糧庫の中の食糧使ってばかりだけど、色々収穫するのもいいよね!」
でも一人で収穫をするなら、もっと色々調べてからがいいかもしれない。
毒を持つものだったら触れた瞬間に、倒れてしまったりするかもしれないしね。あとはとげとげしたものとかも見つけたよ。こういう殻を触ったら怪我しちゃうけれど、実は食べられるものって不思議だよね。
ちょっと歩いていたら、ある植物の傍で倒れている魔物を見かけた。
……もしかしたらあの植物を食べて倒れちゃったのかななんて思った。
やっぱりパパに守られてわたしはのびのびとしているけれど、山の中って危険な世界がいっぱい広がっているんだなと思う。
ああいう食べれそうに見えるものでも危険があったりして、わたしは植物図鑑も読んでいるのに知らない情報が山だくさんで、まだまだ勉強不足だなって思う。植物ってその土地やその時期にしか咲かないものだったり、効能が違うものだったり色々あるから薬師の人ってすごいよね!
自分がそうやって色んなことを学んでいくと、それに特化してそれをお仕事にしている人って本当に凄いんだなってそんな気持ちによくなるの。わたしはベルラだったころ、本当に何も気にせず色んなものを当たり前みたいに受け入れていたけれど、こういうのって本当に大変なんだなぁってわたしは尊敬の念ばかりわいてくるの。
それに植物って、地域によって呼び方も違ったりするんだよ? 世界はとっても広くて、わたしはパパと一緒に色んなところに行っているけれど未知で溢れているの。
魔物もそうだけど、場所によって呼び方も扱いも違ったりとか様々なんだよね。だからこそパパに初めて行く地域では自分の常識を当たり前と思って行動しない方がいいとも言われたの。
当たり前だと思って行動したことがもしかしたらその場所では当たり前なんかじゃないかもしれない。犯罪として罰されるみたいなのもあるかもなんだって。
国によって法律とかも違うからだろうけど、色々難しいよね。
わたしもパパと一緒に色んな場所に顔を出す時は大丈夫だろうけれど、一人でどこか行くこともあるかもしれないから気を付けないとって思っているの。
「ユキアはアイスワンド周辺の植物とかならわかるんだよね?」
《うん。知識があるから。でもそのほかの場所は分からないかな》
ユキアは卵の頃からの記憶もあるし、親からの知識もある程度引き継いでいるらしいのでアイスワンド周辺のことは分かるらしいのだ。
そうやって卵の頃から意識があったのも面白いよね。
世の中にはわたしが想像もできないような性質を持つ生物も沢山いるんだろうなと思うと全部知りたいなって思うよ。
「冬になったらまたアイスワンドにも連れっていってもらおうね。ユキアを産まれた地にも連れていきたいし」
《ディオノレさんは魔導師で、そうやって色んな場所に一瞬で行けるから本当になんというか反則だよね》
「ふふ、わたしのパパは凄いからね! 一瞬でどんなところにもいっちゃうからね」
ユキアも産まれたことだし、またアイスワンドに行きたいなってパパにいってみよう。
パパが一緒だと一瞬で行けちゃうからね。




