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動けるようになって ①

「んー、いい天気」





 パパに見つけてもらって、新しい身体を得て、ベルレナという名前をもらってから一か月が経過していた。一生懸命練習をして、わたしはようやく歩けるようになった。





 立ち上がることが出来ること、歩くことが出来ること――それがわたしにとっては嬉しかった。




 パパはわたしが上手く歩けるようになるまで毎日、わたしを連れまわしてくれていた。その間にわたしは見たことのないものを沢山見ることが出来て、見たことのない経験を沢山させてもらった。

 公爵家にいた頃には知らなかったことを、この一か月で沢山知る事が出来て、こんな日々を送ることになるとは思っていなかったなぁと思った。





 わたしの最近の日課は、起き上がって窓の外を見ることだ。わたしの与えられている部屋には外を見れる大きな窓があるのだ。その真っ白なカーテンをあけ、窓を開けると、気持ちの良い風がわたしの素肌を通り抜けていく。その風の感覚に、ただ笑ってしまう。

 こういう風の感触さえも、わたしにとっては大事なものだ。二年間、風さえも感じられなかったから、嬉しいのだ。




 わたしの部屋は、この屋敷の二階に位置している。パパの屋敷は二階建てで、わたしとパパの二人で住むには広すぎるといえるほどに広い。



 パパが日常で使っている部屋はそこまで多いわけではないけれど、パパには収集癖があるみたいで、パパの集めたよく分からないものが使っていない部屋には放置されていた。


 その色んなものが放置されている部屋もパパと一緒に覗いたことはあるけれど、何が置いてあるのかさっぱり分からなかった。






「~~~♪」




 わたしは風を感じながら、歌を口ずさんでしまう。




 それは昔お母様が歌ってくれていた歌だ。題名は覚えていないけれど、わたしはその歌を気に入っていて、何かしている時に歌っていたものだ。

 二年間は歌を歌うことも出来なかったから、今は沢山歌を歌ってしまう。





 今のわたしの声と、前のわたしの声は違う。





 最初は自分の口から洩れるその声の違いに戸惑いもあったけれど、一か月も経てばわたしの声に慣れてくる。喋ることも一か月、ずっと練習していれば前よりも上手になった。この身体は相変わらずまだ万全とは言えないけれど、それでも時間が経てばわたしは元気に動き回ることが出来るだろう。



 わたしはしばらく歌を歌って、その後、パパを起こしに向かうことにした。



 パパは……わたしを拾った当初はわたしが動けないからと気を使ってくれていて、大分無理をしてきちんとしようとしてくれていたようだ。




 わたしが歩けるようになってから分かったことだが、パパは大分おおざっぱな人だった。わたしが起こしに行かないと、パパはいつまでも寝ていたりするのだ。歩けるようになってしばらく経って、パパ中々起きないなぁ、いつ起きるかなと待っていたらパパが起きてきたのは夕方になってからだった。




 パパはいつも自分が起きたい時に起きて、寝たい時に寝るというのんびりとした生活を送っているのだ。

 わたしはパパに面倒を見てもらっている身で、最初はパパに意見なんてして嫌われるべきではないと思っていたけれど――、あまりにもパパが起きないのでわたしはある時からパパを起こしに行くようになったのだ。




 パパは初めてわたしが起こしに行った時、不機嫌そうで……嫌われたかなと不安になったが、それは寝起きだからだったようで、起こしたいなら起こせばいいと言ってくれたのだ。

 そんなわけでわたしは今日もパパを起こしにいく。





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