海へ遊びに行こう ⑥
わたしは少しだけ大きさは小さいけれど、桃色のかわいい子に賭けてみることにした。だってやっぱりかわいいっていうのは重要だよ。わたしはかわいいもの大好きだもん。
それに少し負けても大丈夫だしね。
それにしてもかけ事というのは、沢山熱中している人がいるみたい。
なんだろう、時々恐ろしい言葉を使うような人もいるみたいで、わたしは少しだけびくっとした。
よっぽど自分が賭けた対象に勝ってほしいのかもしれないけれども乱暴なのはダメだよね。こうやって周りの人のことを見ると、わたしはああいう乱暴には言わないようにしようとすごく思う。
それにしてもその後静かになったけれど、パパなんかした?
軽く問いかけたらちょっと「魔力を当てただけだ」なんて言われた。魔導師のパパが魔力を当てるのはちょっとって言えることではない気がするけれど……。
そんなことを考えていると目の前で私の賭けている子が走る競争が始まる。
なんだか楽しくてワクワクする。
こういう世界を私は知らなかったからこうして知らない世界を知れることってすごく楽しくて素敵だなっておもう。
「パパ、とってもすごいね」
「そうか?」
「うん。わたしにとってはとってもすごいの」
わたしがそう言いながらパパに沢山話しかければ、パパも笑った。
それにしてもこういう競技をやっているのって面白くていいよね。もっと世界にはわたしが知らないようなこういうものもあふれているのかな? そういう世界もどんどん見に行きたいななんて思う。
目の前でわたしが賭けていた子は残念なことに真ん中の順位だった。でも頑張ってたと思うので、にこにこしてしまう。
楽しいので、一匹に少しずつ賭けながらレースを見ていたら――なんだか様子がおかしい子がいた。
なんというか、暴れそうな感じというか。……大丈夫なのかな? 乗っている人はなんだか気弱そうな感じの男の子だった。成人したばかりとかそのくらいに見える。
「パパ、あれ」
「まずいかもな」
「え、本当?」
「まぁ、何かあるならどうにかする」
「ありがとう、パパ」
パパに言えば、パパがどうにかしてくれるって言ってくれた。
パパがどうにかしてくれるならば何も問題ないね。わたしはパパならばどんな状態だってどんなふうにだってできるって知っている。だからパパの言葉を聞いて安心した。
本当にまずい状態になるかはわからないけれど、どうにでもなるもんね。
そう思いながら競争を見ていたら、想像通りというかその様子がおかしい子は暴走しだして競技のコースじゃないところに飛び出して、観客たちのほうに向かっていた。騒ぎになっていると思ったら、その子が急に眠るように気を失った。上にいた少年はとっくに振り落とされて救出されていたのだけど、その子も無事そうでほっとする。
パパが眠らせたみたい。
それにしても周りに悟られないようにそんな風にも魔法が使えるパパって本当にすごいよね。
その騒ぎがあったから、一旦その競技は中断されてしまった。
でも誰一人けが人がいなかったのはよかったことだと思う。まぁ、いっぱい賭けてた人は中止になったって騒いでたけど、ちゃんと返金されたみたい。
こういう賭けごとであんなにも怒るなんてびっくりだなって思った。
「パパ、ああいう競争って面白いね。ほかの場所にもあるのかな」
「いろいろあるぞ。鳥を飛ばす競技とか、あとは竜に乗って競争するものとか」
「そうなの?」
「そうだな。見に行きたいならそっちも見にいくか?」
「うん! こういうの面白いもん。あ、でも安心してね。わたし、賭けごとにはまっているわけじゃないから!」
「それはわかっている。たとえはまったとしても俺が止めるから安心していい」
賭けごとにはまっているわけじゃないよ! っていったらパパにそう言われた。
「パパは誰にも賭けなかったね」
「興味ないからな。それにああいうのはなんとなくどれが勝つかわかるからな」
「え、そうなの?」
どういう感じでわかるんだろう? 正直パパの言うことにはびっくり。でも確かに最初からそういうのがわかっていて賭けるのってあんまりおもしろくないかもしれない。
わたしはパパに今後、こういう競技を見に行くときはわかっても勝ちそうな人を言わないように言っておいた。パパはもちろんだってうなずいてくれた。
それから宿に戻るまでの間、ずっとその競技の話ばかりわたしはパパとしていた。
宿への帰り道にあの競技の魔物のぬいぐるみが売ってあったので、パパに買ってもらったの。あの桃色の子と同じ色のもの。結構な大きさだったけれど、うれしくてぎゅって抱えて宿に戻ったの。
宿のベッドでも抱き枕にしたらちょうどよかった。
 




