海へ遊びに行こう ⑤
海の神様に捧げる祭りがおこなわれるというのもあって、沢山の人たちがその場にはいる。
祭りが始まったのが楽しくて、わたしはパパと手を繋ぎながら街の中を見て回っている。
それにしても、海がすぐそばにあるからというのもあるだろうけれども、海鮮類を使った屋台が沢山。
「パパ、あれ、なんだろ?」
わたしは一つの屋台に目を止めて、パパに向かって問いかける。
視界の先にある屋台は、海鮮お握りって書いてある。おにぎりってなんだろう? その屋台のお客さんはなんか包みみたいなのを持っている。あの中に入っているのかな?
「米というものを使ったものだな。俺もあんまり食べたことはないが」
「米?」
「ああ。一度食べてみるか?」
「うん!」
それにしてもわたしは料理の本もそれなりに見ているけれど、その米というのを知らなかった。世の中には知らない食材も沢山あるんだなってワクワクした気持ちになった。
わたしはこれからも沢山の知らないをきっと知ることが出来るのだ。この世界には沢山の不思議が溢れていて、その疑問は尽きない。
結局神様でも何でもない限り、全てを知る事なんて出来ないんだと思う。
そんなことを考えていると、その屋台の前へとたどり着く。
「パパもいる?」
「ああ」
「えっと、じゃあ、四つください!」
わたしが屋台のおじさんに声をかければ、おじさんは嬉しそうに笑ってくれた。
お金を支払うと、「熱いから気を付けるように」と言われる。包みをもらったのだけど、その包みが熱を持っていた。魔法具か何かで、その状態を保っているのかな?
ひとまず、これを食べたいって思ったのでパパと一緒にちょっと離れたところにあるベンチへと向かう。パパと並んで横に座って、包みをあけた。
そしたら三角の形をした白いものがおいてあった。黒い何かで一部が包まれていて、なんだろう、これって思った。
恐る恐るつついてみる。熱い。海鮮って書いてあったけど、お魚の要素はどこだろ?
じーっと、そのおにぎりというのを見ているとパパが小さく笑ったのが分かる。
「パパ、米ってどれ?」
「白いのは米だ」
「パパ、これ、お魚何処に入っているの?」
「食べてみろ」
パパはわたしの言葉に相変わらず笑っている。
熱いけれど、これは手で食べるものらしいので手に取ってみる。ぱくりっと一口食べてみる。
食べたことない味。これが米? お魚どこ? と思っているとお魚の味がした。
米でお魚を包んでいるって感じなのかな? 美味しい。熱くて少しずつしか食べられないけどわたしはその味が気に入った。
「気に入ったみたいだな」
「うん。美味しいよ! パパも食べて!」
「ああ」
パパは頷いて、そのおにぎりを食べる。
パパと一緒におにぎりを食べた後に、わたしはこの米というのが気になったので屋敷の食料庫の中にあるのかパパに聞いてみた。
食料庫の中にもおいてないみたい。
特定の地域で主食として食べられているものらしく、パパもあんまりどこにあるかとか確認していないんだって。
長生きしているパパでもそういう疑問があるんだなって思った。
あの屋台の人にちょっと聞いてみようと、屋台に戻る。
「美味しかったです!」
そう言ったらおじさんは嬉しそうに笑った。
「この米っていうのってどこにあるんですか?」
「俺も他国から仕入れているんだ。この辺じゃ手に入らないからな」
そんな風に言われたので、ひとまずその国の情報を聞いておいた。
屋台のおじさんとの会話が終わって、パパに「今度連れてって」って言ったら、「ああ」って頷いてくれた。
それにしてもどれだけ遠いんだろう?
わたしはパパの転移魔法で色んな所に連れて行ってもらっているのもあって、いまいち距離感が分かっていないんだよなぁ。もっと色々学ばないと。
そんなことを考えながら海の方を見ていると、なんか競争みたいなのをやっていた。小型の船を、魔物の一種が引いている。飼っているのかな? それか使い魔? 分からないけれど、それでスピードを競っているみたい。
何だか面白そう! となったので、パパの手を引いてわたしはそれを見学することにした。
それはこの祭りの中でも大きなイベントみたい。
とても白熱している。誰が勝利するのかみたいな賭けも出来るみたい。
パパの方をちらりと見たら、頷いてくれた。なので少しだけ賭けてみることにする。
わたし、こういう賭け事するの初めてかも!
「賭け事ははまりすぎると大変だから気をつけろよ」
「はまりすぎるとって?」
「生活費までつぎ込む奴もいるからな」
「そうなの?」
「ああ。前にニコラドもやってた」
「え」
「学生の頃に負け過ぎたっていって、魔物退治して荒稼ぎしてた」
ニコラドさんはそういう時があったらしい。それにしてもニコラドさんの学生時代かぁ。パパも賭け事でやらかしたことある? って聞いたら流石にパパはないって言ってた。
パパとニコラドさんの性格の違いが出てるなって思った。




