『黒闇の魔女』がやってきた! ⑥
ロナさんはわたしの言葉に恥ずかしそうな顔をしながら、戸惑った様子を浮かべていた。
やっぱりずっと素直になっていなかったからこそ、素直になるというのが難しいのかもしれない。
だからこそ百年の付き合いだけど、こういう調子だったのかな?
などと思うと、わたしがきっかけになろうって思った。
だって上手くいくかどうかは分からないけれど、好きだって好意を抱いているのならば伝えた方がいいと思うんだよね。
それに何だか誰かの恋愛を見れるの何だか楽しそう! という好奇心もあるけれど。
「ロナさん、まずは普通にパパと話せるようにしようよ」
「……で、でもディオノレを前にすると落ち着かないわ」
「わたしが助けるから、まずはパパとお喋りしてみよう! ロナさんの様子を見ていると、今までもパパと一緒にゆっくり話せるようになろうよ。今のままだとパパからしてみればロナさんは時々ちょっかいかけてくる変な人だよ!」
「うっ……」
百年もちょっかいをかけて、それで去っていくロナさん。うん、パパは変な人ってしか思っていないかも。パパは人に興味がないから、ロナさんが何で自分にちょっかいをかけてくるかなんて全く気にもしないだろうし、ロナさんはロナさんで自分から何かきっかけを作るってこともしないだろうし……。
このまま誰かがきっかけを作らないとこのまま平行線のまま終わってしまう気がする。
……何だかそう考えるとパパもロナさんも本当に恋愛とかに向いていないというか、その辺不器用というか、うん、そんな感じなのだろう。
「ロナさん、わたしが助けるから一緒にパパとお喋りしようよ」
「……ディオノレは嫌がらない?」
「大丈夫だよ、ロナさん。パパはね、わたしのこと、凄く可愛がってくれているの! だからね、わたしがロナさんと一緒にお喋りした良いって言ったら許してくれると思うの」
そう言ったらロナさんはこくりと頷いてくれた。
そして無言になってしまったしまったロナさんを連れて魔法の研究をしているパパの元へと向かう。
「ロナさん、そんなに緊張しなくていいんだよ?」
そう言ってもロナさんは緊張気味だ。
わたしはパパと出会って二年で、ロナさんは百年もの付き合いだけど、わたしよりもパパと喋ってこなかったんだろうなと思った。
「パパ!」
わたしがパパに話しかければ、パパが振り向く。私を見て、小さく笑った。そしてロナさんを見て少しだけ眉を顰める。
「何もされなかったか?」
「されないよ! ロナさんはそんな人じゃないよ。パパももっとロナさんと話してみればわかるよ」
わたしはそう言いながら、パパに近づく。
パパはもっとロナさんとお喋りしたらいいと思うの。パパもロナさんと全然お喋りしてこなかったみたいだから、話したらもっとロナさんと仲良くなれると思うのだけど。
「俺が、こいつと?」
「うん」
「……魔法をけしかけてくるだけでこいつも話したくないと思うが」
「そんなことないよ! ロナさんだってパパと仲良くなりたいんだよ」
わたしがそう言ったら、パパは不思議そうな顔をする。
パパも人の気持ちとか考えない人だからなぁ。わたしはロナさんのことを見る。
「ねぇねぇ、ロナさん。パパはこんなことを言っているけれど、ロナさんもパパと話したいよね?」
そう問いかけたらロナさんは表情を変えないまま固まった。多分、緊張とか、落ち着かない気持ちなのだろう。こういう調子だから周りに誤解されちゃうんだろうな。
わたしもロナさんがパパのことが好きだって知らなかったら誤解しちゃうもの。
わたしはロナさんに近づいて、手を掴む。
「ね、そうだよね?」
そしてそう問いかければ、ロナさんはこくりと頷いた。
パパは怪訝そうな顔をしていた。
でもわたしが「ロナさんとお喋りしたいし、パパとも喋ってほしいから時々ロナさんに遊びに来てもらっていいよね?」と言ったから、許してくれた。
ロナさんはその日は落ち着かない様子で帰っていった。
いきなりパパとお喋りするのは難しかったみたい。でもこれからロナさんが遊びに来てくれるのだから、少しずつでもいいからパパとロナさんが仲良くなってくれたらいいなぁと思った。




