『黒闇の魔女』がやってきた! ③
「ホムンクルス? ベルレナには母親がいない? ということは……ディオノレに恋人や奥さんがいるわけではない……ブツブツ」
「『黒闇の魔女』さん?」
何だかわたしの言葉に『黒闇の魔女』さんはブツブツと独り言を言っている。どうしたのだろうか。
なにか困った事でもあったのかな。
なんて思いながら心配して話しかけたら、『黒闇の魔女』さんにはっとした顔をされてこちらをマジマジとみられる。
「……ま、また来るわ!」
「え?」
そしてそのあと、何だか顔を赤くして慌てたように去って行ってしまった。どうしたのだろうか。
「ねぇねぇ、パパ、『黒闇の魔女』さん、どうしたのかな?」
「さぁ。あいつの考えていることは分からない」
パパはわたしの言葉にそう言いながらわたしの隣に立つ。
「それにしても……『黒闇の魔女』さん、本当にどうしたんだろう?」
「さぁな。それより、この地形を戻すか」
パパはそう言いながら、荒れた地形を戻していた。それにしても本当に派手にやっていたなぁ。これだけ派手に戦いあっても、パパや『黒闇の魔女』さんにとっては日常なんだろうな。
わたしにとって見れば、全然ただの日常には見えないけれど、それを日常に出来るからこそ二人とも凄い魔導師なんだと思う。
「パパ、『黒闇の魔女』さん、また来るって言っていたね。次、いつ来るのかな?」
「ベルレナはあいつが気に入ったのか?」
「うん。だって思ったより悪い人じゃなさそうだもん」
もっと話してみないと、『黒闇の魔女』さんが何を考えているのか、どういう気持ちでここにやってきたのか――それがわたしには分からない。それを知れたらもっと『黒闇の魔女』さんと仲良くなれるんじゃないかなって思っている。
それに『黒闇の魔女』さんは、パパのことが決して嫌いではないと思う。本当に嫌いだったらちょっかいをかけることだってしない。だって嫌いなら無関心になって関わろうともしないと思う。わたしは誰かをそんな風に関わりたくないと思うほどに嫌いになったことはないけれど、本当に関わりたくないと思ったら自分から関わろうと思わないだろう。
次にいつ『黒闇の魔女』さんは来るかなとわたしは楽しみにしている。
そして案外、『黒闇の魔女』さんは早くやってきた。
わたしが部屋の中で精霊獣の卵に魔力を込めていた時、開けていた窓から風が吹いた。そちらに視線を向けると、
「こんにちは、ベルレナ」
そこには『黒闇の魔女』さんが浮いていた。
箒に乗って、こちらに笑いかける『黒闇の魔女』さんはとてもミステリアスな雰囲気で、とても綺麗。
「こんにちは、『黒闇の魔女』さん!」
わたしが笑いかければ、『黒闇の魔女』さんは最初に会った時よりもずっと穏やかな笑みを浮かべていた。
なにか心境の変化でもあったのかな?
「ベルレナ、ちょっと私とお話しない?」
「いいよ! でもパパに言ってからでいい?」
「いいけれど……ディオノレはベルレナが私と話すの嫌がらない?」
『黒闇の魔女』さんは少しだけ眉をひそめてそんなことを言う。
やっぱり『黒闇の魔女』さんって、パパのことが嫌いじゃないよね。だって嫌いな人から嫌な風に思われても正直そこまでどうとも思わないじゃない。『黒闇の魔女』さんはパパに嫌われるのは嫌だと思っているのだと思う。
「大丈夫だよ。わたしが『黒闇の魔女』さんと話したいって言ったらパパは絶対に許してくれるもん。それにパパは『黒闇の魔女』さんのことを嫌っているわけじゃないから。なんなら、パパも一緒に話そうよ」
「……そ、そう? でもディオノレとはいいわ。一先ずベルレナと話したいわ」
「じゃあ、パパに言ってくる」
わたしはそう言って一回、パパの元へと向かった。そしてパパに『黒闇の魔女』さんが来ていることと、わたしと話したがっていることを伝える。
パパは一瞬だけ眉をひそめたけれど、「何か危険があったら呼べよ」と言って、わたしのやりたいようにやらせてくれた。
そういうわけで、わたしは今、『黒闇の魔女』さんと向かい合っている。
ちなみに場所は屋敷の外の庭のスペースだよ。木の机と椅子をおいているの。時々パパと此処で食事をすることもあるの。
『黒闇の魔女』さんは、とても綺麗な人だ。パパとはまた違った雰囲気の綺麗な人。わたしは綺麗な人を見るのが好きだから、『黒闇の魔女』さんを見るのも嬉しくて仕方がない。
「ベルレナ……どうして私をそんな風ににこにこ見ているの?」
「『黒闇の魔女』さんがとっても綺麗だから! わたし、綺麗な人を見るのとても好きなの」
そう言って笑いかければ、『黒闇の魔女』さんが驚いた顔をした。そしてすぐにその白い肌が赤く染まる。
照れてるのだろうか?
なんだか『黒闇の魔女』さんは、可愛い人なのかもしれない。
「ベルレナだって可愛いわよ。それよりも――貴方の身体がホムンクルスっていうのは、その……本当にディオノレに奥さんはいないのよね?」
『黒闇の魔女』さんはそんなことをわたしに問いかけた。




