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新しい生活 ②

 わたしはこの生活の中でパパに連れまわされてばかりだ。



 パパが散歩をしたいと言えば、一緒に散歩に連れて行かれる。わたし一人を家に残しておくより、連れて行く方が良いとパパは思っているのだろう。





 この屋敷の外に初めて出た時は驚いたものだ。





 わたしが現在暮らしている屋敷は高い山の上にあった。わたしが公爵令嬢として住んでいた屋敷は、平地にあった。わたしは山を遠目に見た事はあったし、話も聞いたことはあったけれど実際に山の上にいるのは初めてだった。

 こんな山の上に屋敷を建てているパパは不思議な人だと思う。



 山の上だというのもあって、外の雰囲気も全く違う。わたしは公爵家の屋敷の外に出た時には、こういう自然豊かな場所ではなかった。お父様もお母様も私に対して過保護だったから。

 




「パパ、屋敷、見えない」

「周りから見えないように魔法をかけているからな」




 しかもパパと一緒に屋敷から少し離れれば、振り向いてもわたしは屋敷の場所が確認できなかった。驚いた事にそれもパパの魔法らしい。こんな魔法を使えるなんてやっぱりパパは凄い。



 それにしても本当はそこにあるはずなのに、そこにあることが分からない――なんて不思議な魔法だと思う。

 



「パパ、凄い」



 わたしは素直にパパが凄いなと思って、この始まったばかりの新しい生活の中でいつもパパ凄いと口にしていた。パパは凄いと口にされると照れているのか、反応に困っているのか、少しだけそっぽを向く。

 そんな表情のパパを見ると、わたしも小さく笑ってしまった。






「パパ、此処って何処」

「ここか? 此処はイルマー山だな」

「名前聞いても分からない」

「だろうな。お前を見つけた場所よりもずっと遠い場所だ」

「そっか」



 わたしはパパの口にしたイルマー山という単語を知らなかった。わたしの勉強不足なのか、それともよっぽどわたしの住んでいた屋敷から離れているのか。


 パパは必要以上に言葉を語ることはない。わたしが聞けば教えてくれるけれど、パパは自分から色んなことを語らない。





 この山をパパに連れられて見て回ると、わたしが見た事がない景色が沢山広がっていた。わたしはあまり外に出た事がなかった。屋敷の中だけでわたしの世界は完結していたから、こうしてわたしが見た事のなかった山の景色を見られることにわくわくした。



 草花の匂いというのを初めてこんなに間近で嗅いだ。

 魔物と呼ばれる恐ろしい生き物も初めて見た。



 聞いたことはあったけれど、見た事がなかった魔物。恐怖を感じるよりも先にパパが退治していた。パパが強くてびっくりした。でもこれだけ強くなければそもそもパパはこんなところで生きていくことなど出来ないだろう。パパは強いからこそ、此処にいるのだ。



 初めて魔物を見たのと、パパが一瞬で魔物を倒したのを見てわたしはぽかんとした。その時、パパはわたしが怖がっていると思ったのか、わたしに「大丈夫か」と聞いてくれた。





「お前は動けるようになっても魔物をどうにか出来るようになってから外に出ろよ。俺が居る時は守ってやれるが、いないときは危険だからな」

「うん、ありがとう」



 パパはパパがいれば問題ないのだと、そう口にしてわたしを見る。わたしへの接し方を戸惑っているのに、パパはやっぱり優しい。



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