春の訪れと、二度目の誕生日 ③
今日は誕生日。
わたしは早起きして、色々準備をしていた。ちなみにパパもわたしのために去年と同様に誕生日ケーキを用意してくれている。だけどパパが起きる前に準備を済ませてしまおうとわたしはせっせと動いている。
パパは自分の誕生日をお祝いしてもらえるとか考えてなさそう。パパはそういうことは何も考えていないようなので、パパのことをお祝い沢山しようと思っているの。わたしはパパのことが大好きだもん。パパへの感謝と、パパにおめでとうって沢山言いたいから。
なんだろう、大好きなパパのために準備をすると思うと心がワクワクしてくる。
こういう誰かのために何かをする行為っていうのは、やっぱりその誰かが大切な相手かどうかというのが重要なのだと思う。だって大切な相手のためならどれだけでもやる気がでるもん。わたしはパパのためならなんだってやりたいってそういう気持ちになる。
わたし、パパのことが好き。
パパが笑ってくれると幸せだと思う。
わたしがパパのことを笑わせられたら嬉しいな。
そうやって準備をしていると、パパが起きてきた。
パパが自分から目を覚ますなんて珍しい。やっぱりわたしの誕生日だから起きてくれたのかなって思うと、くすりっと思わず笑ってしまう。
「……ベルレナ、何をしているんだ?」
「パパ、おはよう! あのね、パパも誕生日が春なんでしょ? だからね、わたし、パパの誕生日をお祝いしたかったの。だから、これから毎年、わたしと同じ日にお祝いしようよ! というわけで、おめでとう、パパ!!」
そう言ってわたしが笑いかければ、パパは一瞬ぽかんとした顔をして小さく微笑んだ。
「ありがとう、ベルレナ。ベルレナもおめでとう。十歳だな」
そういいながらパパはわたしに近づいて、わたしの頭を撫でてくれる。パパがこうして頭を撫でてくれるだけでわたしは嬉しい!
それからパパが用意してくれていたケーキを机に並べてくれる。
パパの準備したケーキと、わたしの用意した料理を二人で食べる。何だかこうして互いに用意したものを食べられると何だか楽しい。
「パパ、これプレゼントだよ」
そう言ってパパにプレゼントを渡す。
パパへのプレゼントは、枕である。パパは眠るのが結構好きだからふかふかの枕を準備してもらった。
あとはパパに似合いそうなネックレスも準備している。パパはおしゃれに気を使わない人だけど、わたしはわたしの大好きなパパをもっと素敵にしたいもん。
パパはわたしが洋服が好きだからって洋服も準備しててくれた。パパがわたしに似あうって思って買ってくれたって思うと凄く嬉しかった。パパは一人で服屋さんにいったのかな? 悩んでいるパパってどんな感じだったんだろうってそういうことを考えただけで嬉しくて仕方がなかった。
「えへへ、パパと一緒に誕生日お祝い出来るの凄く嬉しい。ね、パパも嬉しい?」
「ああ。ベルレナが俺の娘になってくれてよかったって本当に思う」
「わたしもパパの娘になれて、本当にすごく良かったって思ってるよ!」
考えてみれば、わたしがパパの娘になってまだ二年。
だけれども、その短い二年間の間でわたしはすっかりパパと本物の親子に近づいてきていると思う。元々の魂は、そういう親子関係はないけれども――それでもわたしはパパが大好きだし、パパはわたしを大切にしてくれている。
そのことを実感して何だか嬉しい。
「ねぇねぇ、パパ、街にも行こうよ。わたしね、パパに似合う服とか選びたいもん」
「ああ。行くか。俺もベルレナに色々買いたい」
「パパは本当にわたしのこと、甘やかすよね。わたし、今日は誕生日だからもっとパパに我儘いっちゃいそう!」
「どんどん言えばいい」
「パパも、もっとわたしに我儘いっていいんだよ? わたしもパパのためになんだってしたいもん」
そう言ったらパパに優しく頭を撫でられた。
パパに頭を撫でられると本当に嬉しいな。
今日、お出かけのパパの服はわたしが選んだ。洋服の色を合わせて、お揃いみたいにしたの。こうしてパパとわたしが仲良しだって示せるのがわたし嬉しい。
「ベルレナ、抱きかかえて移動していいか?」
「うん。もちろん。でもなんで?」
「ベルレナはどんどん大きくなるだろう。もっと大きくなったらこうやって抱きかかえられなくなるだろうから。ニコラドも言っていた。そのうち抱きかかえられなくなるって」
わたしのホムンクルスの身体は、ほとんど人間と変わらない。だからこそ、わたしの身体は徐々に大きくなっていく。パパと出会った頃より、この身体は成長している。
だから魔法を使ってはともかくとして、そうでなくただ抱きかかえられるのは確かに出来なくなるかもしれない。
ってことは、今のうちにパパに抱きかかえられることをもっと楽しんでおかないと!
わたしはそう思いながら、パパの首に手を回すのだった。




