幕間 悪役令嬢の取り巻きであるはずの少女 ③
ベルラ様は何処にいるのだろうか。
私とアル兄様はずっと、ベルラ様のことを探している。
アル兄様が買った絵は私とアル兄様の部屋の交互に置かれている。
新しいベルラ様の美しさと愛らしさと言ったら……! 私は早く実際のベルラ様に会いたいってそういう気持ちでいっぱいなの。
真っ白な雪のような髪に、黄色い瞳。
元々のベルラ様とはまた違った雰囲気だけれども、素敵な見た目に私は早く会いたいって気持ちでいっぱいだわ。
あの絵を描いた人を探したり、ベルラ様の今の姿を私たちは追い求めているけれども全く見つからない。……もしかしたら一生、死ぬまで今のベルラ様には会えないのかもしれないなんて考えて首を振った。
私は、ベルラ様に会いたい。
いつか絶対に会えるのだと信じている。例えばベルラ様が危機の時にはベルラ様を助けられるようにしたいし、ってそう思って魔法と剣も徐々に上達しているの!
それにしてもベルラ様のふりをしているあの人は、一貫して自分がベルラ様として動いている。そして王太子殿下とも仲よくしているみたい。
今のベルラ様のことを大好きな人は多くて、あの人こそ、未来の王妃に相応しいってそういう噂は結構私の耳に入ってくる。
――あの人が王太子殿下の婚約者であれるのは、あの人がベルラ・クイシュインという地位を持っているからだ。本来、ベルラ様が持っているはずだった場所……と思うとやっぱり私としてはもやもやする。
そもそもあの人がベルラ様じゃなくて、ベルラ様が別の姿で別の場所にいるってことは、あの人がベルラ様の身体を奪ったようなものなのかなと思う。実際にはどういう経緯があってあの人がベルラ様として生きているかは分からないけれど……少なくとも私は誰かの居場所を奪っておいて、そのまま生きている人が王妃になるのは何だかなぁって思う。
まぁ、まだ絵の中のベルラ様が幸せそうなのは幸いなことだけど!
それにしてもこれだけ探していてもベルラ様が見つからないなんて……今のベルラ様と早く話したい。
学園に入学するまでには見つかるかな。
学園に入学したら学園生活が忙しくなって、ベルラ様を探すことも難しくなるかもしれないもの! でもまだまだ子供の私は探すのが難しいのよね。
アル兄様は私よりも二つ上だから、私より先に学園に入学する。学園にアル兄様が入学したら私がベルラ様の絵を守らなければ……と思っていたのに、アル兄様に絵を学園に持っていくなんて言われてしまった。
「アル兄様!! そうなると、私がベルラ様の絵を拝めないじゃない!」
「このままおいていて、誰かが処分とかしたらどうするんだ?」
「私が守る!」
「それだと俺が見れないだろう。大事なものは手元に置いておいた方がいい。俺はもっていく」
文句を言ったが、そう言い切られた。
まだ何年かあるけれど……でもベルラ様の絵を見れなくなるなんて……と今から私は絶望している。
アル兄様が学園に入学する前にベルラ様の他の絵を手に入れるとかしないと! そう思って私は骨董市を巡ったけれど、ベルラ様の絵は見当たらなかった。
……アル兄様は本物のベルラ様を見れたり、ベルラ様の絵を見つけたりずるい! って思ってしまった。
「アル兄様、ベルラ様は全然見つからないね」
「そうだな……。会いたいな」
「うん。会いたい。ベルラ様の姿を見たいし、ベルラ様の声を聞きたい」
ベルラ様はどういった声をしているのだろうか。姿は分かったけれど、やっぱり可愛い声をしているのだろうか。
私とアル兄様はそう言った会話ばかりを交わしているのだった。




