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パパと二度目の冬 ⑧


 精霊獣から卵を受け取って数日は、どうしても卵のことが気になってあまり外に出なかった。

 パパには「そんなにすぐに産まれるものではない」と言われたけれども、それでも何だか気になってしまったので、パパに付き合ってもらった。



 パパに出かけていいよって言ったけれど、わたしが宿にいるならパパも宿にいるって言っていた。宿で魔法や錬金術の研究をしているみたい。そうやって研究をしているパパは相変わらずかっこよかった。




 それにしてもすぐに産まれないことが分かっていても、じっとその卵を見つめてしまう。

 産まれる子はどんな子なのだろうか。わたしと仲よくしてくれるかな。あの死した精霊獣と同じような見た目なのだろうか。普通の魔物などだったら大体が親と同じ特性を引き継ぐと思うけれど、精霊獣の場合は違ったりするのかな?





 そんなことを思いながら数日、卵を見ていたが、数日でそれに飽きてしまった。一旦、『使い魔のネックレス』の中に卵をしまってから、わたしはパパと一緒に街に出る。





 今日は氷の城に連れていってもらうことになっている。このアイスワンドの王都から少しだけ離れた場所にあるみたい。そこまではそりの便が出ているんだとか。この辺りに住む魔物が引いたそりは観光地には連れて行ってくれたりするみたい。そのそりは普段私たちが乗っている馬車のようなもののようだ。




 屋根がついていて、中は温まっている。

 そこが温まるように魔法具がおかれていて思わずその魔法具をまじまじと見てしまった。

 パパの転移魔法があればこういうそりに乗る必要はないのだけど、わたしが乗りたいって言ったらパパがこれで移動することを決めてくれたのだ。

 やっぱりパパはわたしに甘いなぁってそんなことを思った。






 氷の城は現在も入ることが出来るみたいで、このアイスワンドの立派な観光地の一つのようだ。アイスワンドにとっても外の国から人がやってきて、お金を落としてくれることは国のためにもなる――ということで、観光客向けに色んな商品も置いていたりするそうだ。




「ねぇねぇ、パパ、このそりって不思議だね! 楽しい!」

「よかったな」




 わたしの言葉にパパが柔らかく笑った。




 わたしはパパに転移魔法で、連れまわしてもらったけれども――そりの中から見る景色もまた違ったものだった。視点が変われば同じような景色も違う風に見えるのだと思うと何だか楽しかった。




 そりで数時間走った先に氷の城はあった。

 わたしは途中まではしゃぎながら外を見ていたのだけど、途中から眠くなってパパに寄りかかって寝てしまっていた。パパの服によだれがついてしまっていて、ちょっと申し訳ない気持ちになった。でもパパは気にしなくていいって笑っていた。




「わぁ……」




 氷の城を見たわたしは思わず感嘆の言葉をあげてしまった。だって本当に全部氷だった。この場所がそれだけ寒い地域だからこそ作成することが出来たお城なのだろう。魔法を使ってこの形を保っているらしいけれど、それも凄い。




 ちょっと城壁に触れてみたけれど、とてもひんやりしていて冷たかった。

 パパに「あまり触ると手がひっつくぞ」と言われて慌てて手を離す。そういうことになってもパパが助けてくれるだろうけれども、ひっついたらびっくりするもんね。

 わたしたちと同じそりで氷の城にまでやってきた少人数の人たちもわたしのことをほほえましいものを見る目で見ていてちょっと恥ずかしかった。




 氷の城は外も凄かったけれど、中も凄かった。



 なんだろう、氷で出来た城なのだけど、中はあたたかくなっていた。これもアイスワンドがこれまで培ってきた魔法を使ってのことなのだろう。暖房器具が周りにあるように見えないのに温かくて、それでいて氷がとけない。不思議な技術だ。



 展示用に置かれている家具の中には、お城と同じように氷で出来たものだってあった。それに寝転がる体験も出来たのでやってみたけれど、とても不思議な気持ちになった。

 それにしてもこれだけ広い城の管理って大変そうだなってそんな気持ちにもなった。だけどパパが言うにはこの氷の城を管理するほとんどの魔法は、大分昔に行使されたもので、アイスワンドの人たちの負担はあまりないらしい。それはそれで凄いと思った。

 元々王族の人たちが執務をしていた部屋だとか、色んな歴史のつまった部屋を見て回れて楽しかった。




「こういう普段見ることがない所を見れるって面白いね。そういう王族関連の部屋なんて入ることがないからなぁ」

「入りたいなら今度連れていくか?」

「……パパ、本気なのはわかるし、パパならだれにもばれずに出来ることは知っているけれど、不法侵入は駄目だからね!!」




 パパは本当にわたしに甘くて、ちょっと常識外れだ。

 パパは多分、王族たちが暮らしている王宮にぐらい簡単に忍び込むことが出来るだろう。パパはそれだけの力を持っているから。だけどそういう不法侵入をわたしは望んでいないので断っておく。



 というか、これで行きたいなんて言ったらパパは本当にやりかねない。パパはそういう人だ。





 氷の城を見て回るのは楽しかった。

 そりでまたアイスワンドの王都に戻るのは明日ということになって、今回は氷の城の一室に泊まらせてもらうのだ。アイスワンドは観光客相手にそういうこともしているのだ。




 氷の城でパパと一緒に一泊するのは楽しくて、中々寝付けなかった。最終的に中々寝ないわたしにパパがよく眠れるように子守歌を歌ってくれた。

 パパの心地よい子守歌を聞きながらわたしはぐっすりと眠った。




 そして翌日、アイスワンドの王都に戻ったのだけど――、宿に戻ったわたしたちの元に一人の来訪者がいた。



「少し、話をさせてもらえないか」



 そう口にした男性は、わたしとパパが山に行く時に助けた男性だった。





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