宋・元・明代の講釈本の豊穣なるカーオス世界 その集大成・「三言二拍」・全200話から読み解く
1、初めに(まえがき)
西遊記
三国志
水滸伝
金瓶梅
紅楼夢
聊斎志異
このようなあまりにも有名な?中国古典小説は多分?みなさんご存じでしょう。
読んだことはなくても題名くらいは知ってるでしょう?
さて今回はこのような有名な小説ではなくて
おそらく誰も知らにような。埋もれた?古典小説をご紹介しようと思います。
わたしですか?
私はその昔、二松学舎大学の中国文学科を受験しようと思ったくらいの
中国古典文学フリーク?です。で、自分でいうのもなんですが中国古典文学はかなり詳しいです。
ところでこの私。
中国近代文学(魯迅)とか
中国現代文学には全く興味も関心もありません。
なぜなら?詰まらないからです。
わたしが愛するのはあくまでも「古典文学」のみです。
中国近・現代文学には一切関心はありません。
なぜなら、、、
天馬、空をゆく空想、、、、、も、そこにはないし
あやかしの美女、、、、、も、そこには出てこないし、
仙術を弄する道士、、、、、も、そこには出てこないし
ようするに、閑散として、詰まらないからです。、読む気にならないからです。
私はリアリズム文学や、共産主義宣伝文学には、嫌悪感しかありません。
抑々「文学」とは、夢であり、空想であり、妄想であり、イケナイ事?を書き連ねたものなのです。
それが文学の「本道」なのです。
「良い子になりましょうね」
「共産主義万歳」
そんなもんは文学ではないのです。
空想と
妄想と
夢とロマンと
イケナイこと?、
それこそが「文学」の本道なのですから、
さて、
前置きが長くなりすぎましたよね?
お待たせしました
ここからが本論です。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
三言二拍とは、
今、これを知る人は、中国文学を専門に研究している人しかおそらく、知らないだろう。
では何でこれを取り上げるのか?
これはいつの時代も変わらぬ尽きせぬ人間本性の研究の原鉱石であるからだ。
宋・元・明の、当時の庶民から士大夫までの人間欲望絵図というか一代風俗絵巻、
世情・民俗・情痴・愛欲・冒険・神秘・詐欺・犯罪なんでもありの宋・元・明代の
もとはとえいば、民間の講釈師(説話師)の語り物、講釈本のネタ本(話本)200本の集大成である。
(たとえは悪いが?古典落語200選?みたいなものですよ?)
まあリアリズム小説なのだが、、別面それが突如ダークな幻想単に変わったりして千変万化の展開である
実話と思ったのが実は幽霊話だったりして、、
以前に分かれた女がひょっこり訪ねてくる。それでよりを戻して同棲して仲良く数年暮らす。
だが、ある日長く音信がなかった友人がこれまた訪ねてきて再会。
実は女と同棲してるんだよというと
ええ?その女は4年前に自殺したんだよと言われる
あっと驚いて、家の中を探すがさっきまでいた女は忽然と消えていないのである・。
そんなおはなしもあるのである
三言二拍が、成立・刊行されたのは1640年前後です。
宋の時代ころから、当時盛り場には、演芸場が設けられて、講釈師が木戸銭とって、こういう語り物を講釈していたのである。当時の娯楽の殿堂?でした。そういう噺のネタ本を後世に集約(集大成)したのである。
とうぜん集大成者(編集者)の修正?加飾?は入っているから
原話そのものではない。よってこれらは「擬話本」と称される。
今読んでも十分楽しい。楽しいという表現はあまり的確ではないかもしれないが、でも、世情風俗の一大パノラマだから楽しくなる内容ではある。
三言二拍とは総称であり、詳しくは、
「 警世通言」
「 諭世明言」
「 醒世恒言」
「 初刻 拍案驚奇」
「 二刻 拍案驚奇」の
5つの今でいえば短編小説集、のことである。3つの言と2つの拍で三言二拍である。
題名の意味は例えば警世通言ならば、(世間に警告を与え、言葉を通す)というような意味である。拍案驚奇は(思わず机をたたいてしまうほど珍しい話に驚く)というような意味だ。
各書とも40篇の短編がおさめられていて、総計200篇の一大短編小説集となっている。
このいちいちについて到底論じつくせるものではないが、
後にこれらは禁書などで廃れて、中国本国では、散逸してしまい、日本にのみ保存されていたのである。
中国では禁書やらで散逸し日本に原本が保存されていたという例は枚挙に暇がない。
戦乱怒涛民族交替などで失われたのであろう。
日本が保存しなければ永遠に失われた中国古典小説は何百とある。
中国では、「三言二拍」がすたれた後には、この5書200篇から抜粋した、「今古奇観」という40篇の短編小説集になって流通、これが盛行した。
まあ、これでも十分面白いが、でも、やはり、カットされた160篇はそれ以上に魅力的な内容でもある。
繰り返しになるが、、、、、、
明代に成立した膨大な白話の説話本です。全200篇の短編小説からなっています。
内容は当時の世情・風俗であり、エロ・グロ・殺人・窃盗。不倫・詐欺・奇譚・ホラーなど
実に多様です。
この原本は中国では 散逸してのちに日本で原本が見つかっています。
この200篇から選抜したのが「近古奇観」40話です、ここでは当然?エロ系は省かれています。
200篇からよいものだけを選びました?
という趣旨だが、、
三言二拍の中には猥雑な、はなしも実に多いのです。そういうエロ系も多数あります、
まあ人間いつの世もエロと物欲は尽きませんものね?でもそういう世情を露骨に表した作品は省かれてしまっていますね。本当はそういうものにこそ、世情の真実があるというのに、、、、、。
特に、初刻・拍案驚奇 二刻・拍案驚奇などにはその手の猥雑なエロ系話がたくさんあります。
例えば
堕落僧侶の愛欲系とか ( 醒世恒言第39話)
ハーレムの酒池肉林のエロ話(二刻・拍案驚奇34話)
とか、そういうのは当然、未訳です。
全200篇の短編小説、正確に言うと198話。
これらの内容はというと
人情噺。奇譚、幽霊。復讐。恋愛。エロ系。愛欲図、うらみ、商売、異国への旅、など何でもありの正に当時の人情世俗の宝石箱?状態です。
殺人物も多くてその描写もリアルです。
毒を飲ませたり
斧で頭を勝ち割ったり
井戸に突き落としたり
船から突き落としたり
強姦殺人もありますし
かなりヤバいです。
基本リアリズムですが
そこに突如ダークファンタジーが紛れ込むというスタイルですね。
その交じり具合は違和感ないです。
まあリアリズム小説なのだが、、別面それが突如ダークな幻想単に変わったりして千変万化の展開である
実話と思ったのが実は幽霊話だったりして、、
以前に分かれた女がひょっこり訪ねてくる。それでよりを戻して同棲して仲良く数年暮らす。
だが、ある日長く音信がなかった友人がこれまた訪ねてきて再会。
実は女と同棲してるんだよというと
ええ?その女は4年前に自殺したんだよと言われる
あっと驚いて、家の中を探すがさっきまでいた女は忽然と消えていないのである・。
そんなおはなしもあるのである
この原本は中国では 禁書?されたり、散逸したりで、のちに日本で原本が見つかっています。
この200篇から選抜したのが良作?を選んだのが「近古奇観」40話です、ここではエロ系を含む、残りのエロ・グロ・殺人・不倫などのある160話は省かれています。
中国文学の研究者の解説によると
初刻・拍案驚奇とか
二刻・拍案驚奇などに含まれてるお話はクズで?猥雑で、、ろくなものがないのだそうです。
そうでしょうか?
今だって、世間はわいざつだらけはないですか?
それが世間の不変の真相でしょ?
それを道学者ぶってカットですか?
そういうよけいなおせっかいはやめてください。
まあ、、、、、、、、、この近古奇観40話は
厳選された良い話だけをセレクトしました?
ということでしょうが本当は選ばれなかった猥雑な、それこそ欲望丸出しの男女の愛欲図?のお話の方が実は、人生の、ためになる?のです。
なぜなら人は善行話よりもそういうワルの愛欲図ハナシのほうから人生訓を?得られることが真相だからです
「きれいごとだけの良いお話」だけではだめなのです。
(近古奇観の中にも少しだけそういうエロ系もありますが)
いつだって、世間は猥雑と悪いことだらけでしょう?
そこでは愛欲に目がくらんだ男女が落ちる地獄絵図だったり
そのためには人殺しも平気でしたり
物欲や金銭欲で騙したり
地位や名誉が欲しくって友人さえも陥れたり、、
そういうナマの?お話がこの全200話には展開されています。
それがいつになっても、世の中の変わらぬ真実ですよ。
そこから人間の深層のヤミが学べるというのに、、、、
ですが?
そういう本当に?ためになるお話は邦訳がありません。
そういうのこそ翻訳すべきだと思うのは私だけ???
ところでというか実は、
この三言二拍はかって邦訳されたことがあるのである。
昭和33年ころだったか?
辛島堯氏によって刊行されたのだが、惜しいことに、半分くらい訳出刊行したところで、途中で挫折してしまったのだ。
つくづく、完成していればと悔やまれる。
「 警世通言」から1~8話まで
「 醒世恒言」はなんと全話 40話完訳
「 初刻 拍案驚奇」から1~30話まで
そこで中絶です。
でもこれだけでも偉業でしょうね?
そこにはきわどいポルノまがいの?お話もかなり多いですね
まあ、この翻訳ではそこの部分は原文を提示のままで、邦訳されていませんが。
私事ですが、、私、大学時代に豊島区に住んでまして
3畳一間の汚い下宿ですよ。貧乏学生の私が寝るだけの部屋です。
そこで、、勉強は豊島区立池袋図書館でしてたんですよ。
大学の授業のない日とかにね。
そこでこの本と出合いました。衝撃でしたね。
わたし、、一時は、二松学舎大学の中国文学科に行こうと思ったくらいの中国古典好きでしたから
中国古典文学はまあ知ってたつもりでしたが、、、、、、、、、。
(結局ほかの大学の哲学科に行きましたが)
当時は、、でも、三言二拍は知りませんでしたから。
むさぼるように全部読みました。
そこには、先ほど書いたような↑ ナマの、人間模様が展開されていましたね。
まあ人間の愚かさというかいつの時代も変わらないよなあ、という、、人間模様?
だましだまされの世渡りとか
愛欲地獄・愛欲模様の殺人とか
男女のリアルな?むつみあいとか
破戒僧とか、愛欲に狂った尼さんとか
なまなましく描かれていたのです。
純真だった??私はまさに貴重な人生勉強をこの本でさせてもらった?のです。
其の後、、神田の古本屋めぐりが趣味の私はこの邦訳本をいくつか発見して買い求めました。
値段は高くはなかったと記憶しています。だって貧乏学生の私が買えたんですから。
ですがその後の15回の引っ越し人生でいまそれらは紛失して手元にありません。
ところで、、先ほども書いたように、、
後世、この200話の中から
さらに良作?だけを
選出して40話にした
「今古奇観」というものが世に盛行したので
本国中国では三言二拍の原本は散逸してしまい
消え去ったのでした。
この今古奇観は
例の平凡社の中国古典文学大系にも全訳がありますので簡単に図書館で読めますよ。40話を選んだものです。
それから「三言二拍」の、抄訳が平凡社の古典文学大系に
「宋元明通俗小説選」という巻で邦訳されていますね。
そこでは40話のお話が収録されています
40話のうち三言二拍にも未収のオハナシが15話含まれております。
これは「静平山堂話本」という話本集からのお話です。
近古奇観と合わせていわゆる話本から
合計80話が邦訳されています。
三言二拍からは全200話のたった65話です。
実はのこりの135話のほうにこそ面白いものが、いっぱいあるんですけどね。
まあそれ等は研究者が言うように、、猥雑で?下品で?省かれてしまったものですが。
本当はそういう、お下品なものこそ?当時のなまなましい風俗が分かって面白いんですよ。
だって?文部省推薦?なんて小説にろくなものがないでしょ?
そんな健全な?お上品な?そんなものくそくらえですよね?
残りの120話には、。下品だ、わいせつだ、クズだといって切り捨てるにはもったいないような作品ばかりですね。
まあだから?禁書になって中国では消滅したのでしょうね。
何しろ中国は年中?騒乱、謀叛、簒奪、というお国柄ですからね?
三言二拍の原本は日本の留学僧などが持ち帰ったものが
古寺などに秘蔵され残っていたのです。
まあこの三言二拍に限りませんが中国では散逸して失われて
日本にしか残っていないという古書。古典籍の数は膨大なものですよ。
日本は中国文学のまさに保管庫の役目を果たしてきたというわけですね。
さてこの三言二拍の邦訳↑という画期的事業は中途で途絶しましたが
原本・原文なら今ではネット図書館でも無料で簡単に読むことができますよ。
台湾のネット図書館とか検索すれば出てきますよ。
でも?これの原文は漢文ではなくて白話文(当時の口語体)ですから
その素養がなければ読解は到底ムリですけどね。
研究者でも意味不明な単語(俗語)がいっぱいそこにはあるのです。
さて、ここからは、、
では、、、その200話のお話とはどういう内容なのか?
やや具体的に近古奇観40話から省かれてしまった猥雑な??注目作を?ザっと?
未訳の
残りの135話にはそれこそ種々雑多いくらでもあるのですが、、、、
幾つか代表てきなものだけを見てゆきましょうか?
人間いつの世も
結局は
「色」と「欲」というのが不変の真理なんでしょうね?
というわけで、、、、、、
〇愛欲編
〇殺人編
〇ホラー編
という私の独断によるる分類の順番です。
以下、ランダムに取り上げます。
まずは、、、
〇「愛欲編」
☆二刻・拍案驚奇 34話 任君用恣樂深閨 楊太尉戲宮館客
(任君用がおたのしみをはハーレムでし尽くし、楊太尉が食客を去勢すること)
このお話は楊太尉という権勢者の妻妾の館(ハーレム?)を舞台に
構ってもらえない妻妾たちが欲求を募らせて、若い男を内密に引き込んで
妻妾たちが寄ってたかって愛欲の限りを尽くす修羅場を展開するという、まあ大奥乱交愛欲編ですね。
集団愛欲描写もリアルでかなりきわどいです。
結果はその男は、ばれて、宮刑に処せられて、玉を抜かれ、男根をちょん切られてしまうのです。
この手の愛欲ハーレム?という題材は、アラビアンナイトにもありますね。
謎のハーレムに招かれた若者が愛欲の限りを尽くすという、、、、。
☆醒世恒言 第二十三卷 金海陵縱欲亡身
(金の海陵が肉欲をほしいままにして身を亡ぼすこと)
これは金王朝の首領の後宮での荒淫ぶりを描いたものです。
「12世紀の中国金王朝四代の海陵王=迪古乃は、先帝の重臣百余人を虐殺、叔父の妻阿里虎を寵愛した。がその娘重節が成長するや心を移し、阿里虎は縊死した。女を手に入れるためには、謀叛の罪で一族を滅ぼしもした海陵王、だが曹国公烏禄の夫人烏林答だけは王の意に従わない。王は腹心の宦官と謀り罠をしかけた…。荒淫に耽る王と20余名の妃嬪たち、その運命と渦巻く愛欲の世界」
引用
☆醒世恒言 第三十九卷 汪大尹火焚寶蓮寺
(汪大尹が、宝連寺を焼き尽くすこと)
これは本来禁欲のはずのお寺の堕落を描いた作品で、寶蓮寺というお寺が実は
愛欲の破戒寺だったというお話です、
そこの寺は子宝寺として有名で、そこには12室の宿坊があり願いをする婦女子もそこに7日間泊まって祈るのです。すると帰宅した婦女子は、ああら?不思議?皆、妊娠して、めでたし、めでたし??
そんなバカな?
実は隠し扉があって毎夜毎夜、、夜中にエロ坊主が侵入して子種を授けていたのです。
女たちは眠り薬を騙されて飲まされて?夢うつつで犯されて、、、
女は薄々気づいても、恥ずかしいので口外もできず帰っていったというわけです。
結末は汪大尹が捜査して、悪行のその寺を焼いてしまうというものです。
〇殺人編
☆二刻・拍案驚奇 第二十五卷 徐茶酒乘鬧劫新人 鄭蕊珠鳴冤完舊案
(徐茶酒が花嫁を誘拐し、鄭蕊珠が遺恨を晴らす事)
数奇な運命の女が、殺人や暴行の限りを受けながら生き延びて恨みを晴らします。
井戸に落ちた男を上から大石を投げて殺すシーンは凄惨です。
☆諭世明言 第十八卷 楊八老越國奇逢
(楊八老が国を超えて奇しき再会を果たす事)
船で中国沿岸貿易をしていた商人が「倭寇」につかまり捕虜となり19年も
日本で暮らさせられたというお話。
日本人読者には興味深いお話ですね。
倭寇が日本刀をかざして歯向かうものをなで斬りにしたという凄惨な場面もえがかれています。
婦女子は姦淫して命だけは助けても、、男は皆、首を落とすという、
これは中国側から見た倭寇の実態なのでしょうね。
まあ自己弁護?になりますが、こうしたことは当時中国国内の内乱や戦乱でも同様でしたから。
〇ホラー編
☆警世通言 第二十八卷 白娘子永鎮雷峰塔
(白娘子が雷峰塔にとこしえに封印されし事)
あの「白蛇伝」の元ネタです。
白蛇の精と若者のホラー的な恋愛譚、
東映アニメの「白蛇伝」懐かしいですよね?
☆警世通言 第十四卷 一窟鬼癩道人除怪
(幽霊の群れを禿げ道士が退治せし事)
ひょんなことから知り合った美女は幽鬼の女だった。
道士が幽霊の群れを退治します。
付記
まだまだ書き足す予定ですが
とりあえず
本日はこれまでとします
※なお、私が把握した限りでは、三言二拍の198話のうち125話については邦訳(日本語訳)が絶版を含めて、存在しています。
それは先の
辛島驍氏の「中国古典文学大系」に、78話訳されています。
さらにネット上にも二刻・拍案驚奇から12話訳されています。
重複して訳されているのを除いても
125話は訳されているのです。
完全に未訳なのは、73話ということです。
残りの73話についても、私、、多少は白話文が読めますのでネットの原文サイトで
自分で、おおよそを訳して、ハナシの内容はほぼ理解しております。
いままで、まったく訳されなかった73話とはどんなクズで猥雑な?作品なのでしょうか?
かえって興味がわきませんか?73話といえば結構大量ですよね。
中国文学研究者はどうかそれらを邦訳してくださいませんか?