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人生の続きを聖女として始めます  作者: mika
エルナダ暦 1025年
9/84

9.転移③

「ジュリ様にルリオン陛下を諌めて頂きたいのです。早期に戦争を止め、国内の様子に目を向けて下さいと……」


「……はぁ。諌めるって……そんなこと臣下や側近の仕事では?」


私は、お茶を飲みながら言った。


「言って聞いてくれる方なら苦労はしません。陛下は……いつの頃からか全く別人のようになってしまって、誰のことも信用しなくなりました。側仕えの者を大勢クビにし、神官達も半数が辞めさせられ、三人いたお妃様も一人だけ残してあとは実家へと返されました。そして、他国へかなりの数の密偵を放ち、ある政治犯の情報があると自らが先頭を切って乗り込むのです。他国との条約など守らず、強引に領地に侵入し、政治犯を炙り出すためだけに辺りを火の海にしたことも……今ではこの大陸の争いの大半は、エルナダのせいです。そして、度重なる戦のせいで国は疲弊し国力は衰退の一途を辿っています……陛下は陛下で、戦場で死に場所を探しているように戦い続けて……」


リブラは長々と喋った後、顔を歪めて拳を膝に叩きつけた。

扉付近に佇むヴィスも、心配そうにリブラの背中を見つめている。

噂に聞いていたルリオン陛下とは随分違うな、と私は首を傾げた。

会ったこともないし、そこまで良く知らないけど、賢いと評判じゃなかったっけ!?


「あの……私が言って聞くと思います?どこから来たのかわからない女の言葉を」


「思いません」


リブラは間髪入れず答えた。


「じゃあ、無理ですよね!?」


負けじと間髪入れず返した私に、リブラはまぁ落ち着いて、と笑顔で宥めた。


「ですから、そこは聖女ジュリ様の魅力で陛下をメロメロにしてもらって……」


「……聖女を使って色仕掛け!?それ、どうなんですか!?」


リブラ、あなた聖職者じゃなかった!?

色仕掛けとかいいんですか?

私の冷ややかな目に耐えられなくなったリブラは、別の言い訳をし始めた。


「違うんです!そういう意味ではなくて……」


いや、絶対そういう意味だね!


「エルナダでは、聖女様は必ず獅子王陛下と結婚することになっています!それは、王族ならば周知のこと。陛下も嫌とは言えません!ですから、その……妃としての立場を大いに活用して……その……」


口ごもり始めたリブラは、上目遣いでこちらを見る。

きっと、ここから先は察して下さい!とでもいいたいんでしょうね!


「……予言の通りだと……何がなんでも愛されろ!ということよね?」


「なんと!さすが何でも知ってる聖女様!!」


思わず身を乗り出したリブラは、その瞳をキラキラさせて私を見た。

言わせたくせに良く言うわ!


「いやよ!国を救いたい気持ちはわかるし、可哀想だとも思う。だけど、それでなんで私が愛されようと頑張らないといけないの?まっぴらごめんだわ!」


ルリオン陛下はレグルスと双子の兄弟。

もし一卵性ならそっくりということよね?

レグルスと同じ顔を前にして、冷静でいれる気なんてしない。

それに、まだどこかにレグルスがいるかもしれない。

そうなると、またおかしなことになってくる。

重婚みたいになるよ?……しかも、相手は兄弟というカオス……。


「ジュリ様……そこをなんとか!私共で出来ることならなんでもしますので、どうかどうか!」


リブラは椅子から滑り落ちるように床に移動すると、勢い良く土下座をした。

それを見たヴィスも、リブラの横を陣取って更に深く頭を下げる。


「はぁー……もう、やめてよ。あ、そうだ、私の質問に答えてくれてないわね?」


「あっ、はい。そうでした。知りたいことがおありだったんですね……」


リブラは話が変わったことに安堵し、頭を上げるとふうっと息を吐いた。

それを見て、私はゆっくりと慎重に尋ねた。


「ここからずっと離れた所に、ラ・ロイエという監獄があったわよね?そこの管理をしていた子爵家がどうなったか……」


そこまで言って、ある異変に気付いた。

頷きながら聞いていたリブラがどんどん蒼白になっている。

隣のヴィスも同じ表情だ。


「リブラ?ヴィス?」


「いけませんっ!ジュリ様、それをこの国で口にしてはならないのです」


真っ青になったリブラが私を見上げて叫んだ。

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