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人生の続きを聖女として始めます  作者: mika
エルナダ暦 1025年
8/84

8.転移②

ルリオン……ルリオン?

マデリンだった時も、確かルリオン王だった。

どういうことだろう。

私が死んでからそんなに時間が経ってないのか、もしかしたら、巻き戻されたとか……。

とにかく聞いてみないことには何もわからない。

私はリブラの胸倉を放すと、あることを尋ねた。


「今、エルナダ暦何年?」


「え!聖女様、エルナダ暦を、ご存じなのですか!?」


「うっ!………うん。聖女はなんでも知っているのです!」


ついごまかしてしまったけど、 問題はないわね。

これからもこの手は使えそう。


「おおーー!!さすがでございますね!今はエルナダ暦、1025年です」


1025年。

あの悲劇が起こったのは、1020年。

つまりあれから5年は経っている。

でも、王が健在でいるということは、ラ・ロイエから去った彼はどうなったのか。

そして、レーヴェはあれから……。


「あの、聖女様?」


酷く難しい顔で腕を組む私を、リブラは心配そうに覗き込んだ。


「やはり場所を移しましょう。お茶でも飲みながらこの国の状況を説明させて下さい」


「…………そうね」


体の緊張を解き、ふっと息を吐くと、少し気持ちが落ち着いた。

今の私にはわからないことが多すぎる。

レーヴェやソーントン子爵家のその後……そして、一連の悲劇の中心にいるあの人……レグルスについて。

もう少し良く知る必要があるわ。


*******


リブラの後に続いて神殿を一歩出ると、人が何人か跪いて祈りを捧げていた。


「リブラ様っ!!」


彼らはリブラが出てくると我先にと駆けつけ、後ろの私に驚きの目をむける。


「おおっ!成功したのですね!!さすがリブラ様!」


そういったのは、リブラより少し若めの男で、小柄だが利発そうな顔をしている。

神官見習いかもしれないな、と私は勝手に想像した。


「ああ、ヴィス!これでなんとかなりそうだぞ。こちらが聖女様で……あっ!?」


「あ?」


そこにいる全員が復唱した。

もちろん私も。


「すみません。お名前を伺っていませんでした……あの、教えてもらっても?」


そのくらいで大声を出さないでもらいたい。

後でこっそり聞いてもいいんじゃないの?

とはいえ、問われれば答えてしまうわよね。


「樹里です、ジュリ」


「ほう!ジュリ様と!聖女ジュリ様ですね!」


リブラの感嘆の声が上がると、続いてヴィス、あと同じ様な服の人達数名が大声で叫んだ。


「聖女ジュリ様、御降臨ーー!」


恥ずかしすぎて一歩あとずさった私を、リブラはグイグイ引いて歩きだした。

そして、その後ろを神官見習い達がカルガモの子供みたいに付いてくる!

リブラはその可愛い外見に反して、かなり歩くのが早く、日頃ランニングしている私でも付いていくのがやっとだった。

神殿を出て、広い中庭を抜けるとやがて三階建てのレトロなアパートのような建物が見えてきた。

石造りで簡素だけど、空気が澄んでいて心が和む、そんな建物だ。


「はい。着きました。ここが、私達の部屋のあるところ、神殿部寄宿舎ともいわれてます。さぁ、どうぞ!」


リブラは大きな木の扉を押した。

中は……外側と同じ様に質素で何の装飾品もない。

余計なものはいらない!という頑なな意志も感じるほどだ。

リブラの後を付いて行くと、一階の奥、一際大きい部屋に通された。


「お掛けになって!寛いでくださいね?」


被っていたローブを、邪魔そうに脱ぎながらリブラが笑う。


「はぁ……」


促されるままに椅子に座ると、すぐに飲み物が出された。

ヴィスがリブラの考えを先読みして、タイミング良く出してくれたのだ。


「早速ですが、ジュリ様。この国は破滅へと向かっております」


唐突にリブラが言った。


「い、いきなりですね。でも、そういう時にしか聖女は来ないんでしょう?」


予言では確かそうでしたよね?


「何でも良くご存じだ。そうなのです。私共は、この国に限界を感じ決死の百日祈願を行いました。この時を逃せばそのまま滅亡でしょうから……」


「一体何が起こってるんですか?」


リブラは一瞬いい淀み、それからゆっくり話始めた。

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