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人生の続きを聖女として始めます  作者: mika
エルナダ暦 1025年
7/84

7.転移①

眩しい光は、その後すぐに収まった。

だけど、目がくらんでいた私は、顔を手で覆ったまま、暫くそこを動けなかった。


「おお!!来てくださった!!ありがたい。我が願い、満願のこの日に叶うとはなんたる僥倖か!」


誰かの声がした。

それは、光にのまれる時に聞いたあの声だ。


「……誰??」


手をどけて辺りを確認しようとしたけど、光のダメージは案外大きかった。

うすぼんやりとした中に、ポツンと立っている布を頭から被った誰か……としか認識出来ない。


「聖女様でございますね?待っておりました。私は、リブラと申します。この神殿の大神官、責任者でございます」


「神殿?大聖堂では?」


目を瞬かせながら、質問を返す。


「大聖堂?はて、そんな名前で呼ばれたことはございませんが……」


私はもう一度目を閉じた。

これは、悪い夢かもしれない。

あの悪夢と同じ様な何か。

改めて目を開ければ、ちゃんと目が覚めてベッドの上にいる……はず。

そう信じてゆっくりと目を開いた。


「どうしました?聖女様?ご気分でも悪いのですか?」


みるみる蒼白になる私を見て、リブラと名乗る男が言った。


「うそ…………そんな、はずない……私は……私は……」


私はあの日、確かにこの世界で死んだのに!?


自分の目ではっきりと世界を捉えた瞬間、何もかもを思い出した。

マデリン・ソーントン、それが私の名前だった。

愛してはいけない人を愛し、かけがえのない子供を奪われ、惨めに死んでいったマデリン。

ああ!!そうか!

あの夢はここで実際に起こったことだった。

悪夢だと信じていたことは、前世の出来事を追体験していたのだ!


「聖女様?」


リブラの声に、私は我に返った。

聖女、聖女と言ったの?

私のことを?

まさか………………あの予言の……?


「えっとー……私は、あなたに聖女として召喚されたんですか?」


「ええ!そうです!百日祈願が功を奏し、漸く成功したのです!」


リブラは恭しくフードを取り、跪いて挨拶をした。

大神官リブラは思ったよりも、若く目がくりくりとして可愛らしい。

柔らかそうな茶髪も短いくせ毛で、どこか小動物を思い起こさせたが、そんなこと今、どうでもいい。


「元の世界に帰れますか?」


重要なのはこれよね?


「無理です。呼ぶ方法しかわかりませんっ!!」


リブラはいい笑顔であっさり断言する。

あまりにもあっさりしすぎて、私は思わず鼻で笑ってしまった。

昔聞いたラシャークの予言では、国に災いが降り注ぎし時、聖女が降臨するということだった。

つまり、今国は荒れていて、危機的状況に陥っている。

聖女が降臨してそれを救うらしいけど……どうして私!?

辛い思い出しかない国に召喚されて、更に救わなければならないなんて、何の嫌がらせ!?

冗談にしたって悪質過ぎる。

世の中に神様なんていないな、と、今度は大きくため息をついた。


「……あの、立ち話もなんですから、ちゃんとした場所へ移動しましょう」


「ちゃんとした場所とは!?」


あまりの理不尽さに、怒ったように言ってしまった。


「す、すみません!!ええと、一旦私の書斎へ行くのはどうです?それから王宮へ行き、王へ報告をし……」


「おっ、王!?」


勢い余ってリブラの胸倉を掴んでしまった。

予言では確か…………。

王が聖女を敬い愛し、その心を満たした時……とか言ってなかったっけ!?

あの時は、関係ない世界の話だったからそこまで考えなかった。

だけど、これは、ひょっとすると……。


「あの……聖女は王の何?どういった存在なの!?」


「……うーん……宿命の番?」


「つがいぃ!?つがい、って……え?嫁?」


「はい!」


「……………………」


「あっ、あっ、大丈夫ですよ?聖女様は誰よりも優先されますし、もしその時他のお妃様がいらっしゃっても、聖女様が降臨された時点で離縁ということに……」


「……………………」


必死で様子を窺ってくるリブラを、私は見ないようにした。

何か頑張って説明してくれたけど、要は王の嫁になって愛されろ、ということなのでは?

マデリンだった頃、それはとても美しい予言に思えたけど、今冷静に考えてみると、だいぶめちゃくちゃなこと言ってる。

現代で一度揉まれた私としては、これ、到底のめない案件なんですが。


「しかも!都合のいいことに、ルリオン王には今一人しかお妃様がいませんし……」


「ん?……え!??ちょっと今、なんて言った?」


「お妃様はお一人だとっ!」


リブラは満面の笑みで言ったけど、聞きたいのはそれじゃない。

私はもう一度リブラの胸倉を絞め直した。


「王の名前よ!!なんて言った!?」


「ぐっ……ルリオン・シエナ・エルナダ陛下……ですっ」

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