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決断
「まぁこの空き缶は猫か何かの可能性もあるだろ」
ーー俺がしっかりしなきゃな
健人はこれまでの不安だった気持ちを吸い込み吐き出すよう大きく深呼吸した。
「まぁ状況として実際起きちゃってるからしょうがない。とりあえずそれは受け入れてどうしたらいいか考えようよ。」
菜津は聞いてるのか聞いてないのか分からなかったが、その後はなにも言わなくなりロビーの椅子に横になった。
ーー十分後ーー
よしっと健人が立ち上がった。
「二階に行こう」
健人が「廃墟に行こう」といつも誘ってくる時のような何事もない口調で言った。
「......行くの?」
横になっていた菜津が起き上がって呟いた。
さっきより少し落ち着いたようだ。
「やっぱりあと確認してないのは二階だけだもんな。
もしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれないし。」
奈津は床を見た。
「菜津はここにいてもいいぞ。ちょっと見に行くだけだからすぐ戻るし。」
菜津は少し考えて首を横に降った。
小さな手が震えているのが見えたが、健人は見えてないふりをしておもむろに頭をかく。
「行く」
小さく決意のこもった声が聞こえた。