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異世界周遊記  作者: 藤原鶯
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突然な○○

「いやいや、助かりました!」

「はぁ」

「この国でドラゴンなんて数十年ぶりでして」


 ニコニコしながらさっきの騎士さんがペコペコしているこの状況。


 えっと… これは、どうしたらいいんだ? テンプレだったらどうなってるっけ…? ここまで下手に出られるパターンは記憶にないぞ。


「あっ、自己紹介がまだでした! 私、オデュッセイア国近衛騎士団長のフリードリヒです!」


 ふ、フリードリヒだとっ? 世界史に出てくるあれなのか。あの悲しい宿命を持っているとでも言うのか?


 そう、確かあれは少し前の地球での事だった。







 世界史のベテランおばちゃん先生が今日の授業開始のチャイムと同時に、このクラス中に瞬時に響き渡る声量で叫ぶ。


「へいへいへいっ! 第3回十字軍の別名は知ってるかい?」


 おばちゃんなのに、この圧倒的な声量。体育教師顔負けな気がする。


 これ知ってる! いろいろあるみたいだけど、オールスター十字軍っていうのが1番良かったと個人的に思ってる。


「だぁ~れも答えてくれないから、先生自分で言いまーす。オールスター十字軍だよ!」


 まじか。予習って言ってもこっちはネット情報だぞ。教科書にも載ってないし、あれは有名なやつだったのか?


「この十字軍にはマヌケが一人います!」


 マヌケ、だと… そんな情報一言も載せてなかったぞ、あのサイト。


 誰だ。誰なんだ、まさか… 獅子心王、お前なのか…? 格好いい名前をつけられながら的な感じか?


「フリードリヒ1世です!」






 絶対フリードリヒさん、その内鎧着たまま水浴びして溺れ死んでる… 南無阿弥陀仏。



 ちょっと失礼なことを思い出していると急に馬車の扉が開く。近くで見ると随分豪華に作られた馬車だなぁ。


 白を基調として、赤、金などを施してある。泥が撥ねてないのは、その高さによるものだろう。どうやって降りるんだ?


 扉が開いた。現れたのは、美少女?


「フリードリヒ、降りるのを手伝ってもらえますか?」

「お、王女様。降りられるのですか?」

「あら、私が降りては駄目なの?」

「いえ、そんなことはありませんが…」


 フリードリヒさんがだいぶ悩んだ末に王女様と呼ばれた方は降りてきた。


 うわ、めっちゃ可愛い! 日本であれば嫌われる可能性もある白髪もこの子には似合い過ぎてる。それに人形とはまた違った整い方をしている。ルナみたいにやっぱり親しみ安さを感じる。こっちは、王族だからっていうのもありそうだけど。


 肌はやはり外に出ないからか白く、唇と頬の色が下手な化粧よりも映えている。肩下にまである髪の毛も、よく手入れされてるのかつややかだ。


 軽めのドレスを纏っているため、ルナに引けをとらない双丘が少し踊っている。全くそっちに意識していないフリードリヒさんが男として何故そうなれるのか訊きたい! それさえ分かれば、ルナに嫉妬されないで済む。


「冬桜くん? 大丈夫?」


 笑っていない目で優しく問い掛けながら、僕に胸を押し付けてくる。あぁ、なんと幸せなことか… ルナの胸は弾力本当に最高だな。ちゃんと存在を主張しながらも、しっかり腕を包み込んでくれる。


 別におっぱいだけに惚れたわけじゃないからな?


「初めまして、異世界召喚された勇者様方。私はアリス・オデュッセイアと申します。この国の第2王女です」

「王女!?」

「はい。皆さんは勇者様方のはずなのになぜこのような所に?」


 やっぱりこうなったか… この国で騎士、馬車に出会った時点でアウトだったのかもしれないな。


 それより、何でこの王女はすぐに勇者だって分かったんだ?


「王女様、何故私たちが勇者であることが分かったのですか?」

「先程のドラゴンの討伐見てまして… ドラゴンはこの世界の者が倒した例がなくてですね」


 ドラゴンってこの世界ではそんなに強い種族なのか? それともあれが弱い個体なのか。それはこれからルナとの旅を続ければ分かるかな。


「その前に王女様、さっきから頬を染めてるのは何故ですか?」


 ルナが尋ねた。確かに言われてみると普通に紅くなってるの域は少し超えてるのか? でも、そこまで変に紅くないけど。


「私が答えたら教えてくれますか?」

「はい」

「そこの勇者様がか、かっ、格好良くてですね…」


 つっ! 電撃が走った。


 異世界はこんなにも僕に優しいのか? こんな美少女にまで格好良いと言われるのか? これはチーレムを出来るのか?


 これから先を想像するとニヤニヤが止まらねぇ。


「勇者様、私と結婚していただけないでしょうか?」


 爆弾発言をした。結婚? 王女様が僕と? ルナとすらしていないのに?


「それは何ででしょうか?」


 つい尋ね返してしまう。多分、こういうのは尋ね返しちゃ駄目なやつだと思うけどついやってしまった。


「好きでもない人と攻略結婚なんて嫌なんです!」


 確かに王族、勇者、魔物などが存在しているこの世界では攻略結婚くらいありそうだな。


「僕なら良いと?」

「はい! 初対面でこんなこと言われたら大変かもしれないですけど」


 精一杯、想いを伝えようとしているが物凄く伝わってくる。あんまりこの子のことは知らないだろうけど、いい子なんだろうなってなんとなく感じる。


 僕の一存では決められないため、取り敢えずルナの方を見るとあっけにとられていた。


 でも、僕が見ているのを分かると、すぐに肯いてくれた。まだ、ルナと結婚してないのに許しちゃうのか。本当にいい女だな。ちゃんと可愛がってあげないと。


「これから何回か会って、お互いの人柄が分かってからなら」

「やたっ」


 王女様は余程嬉しいのか春になったかのような、花が満開に咲いたような笑顔でこっちを見た。目が合うと真っ赤になりながら視線を逸らす。可愛い人だなぁ。


「お、王女様! 勝手にそんなことをされてはさすがにまずいかと」

「幼い頃から私のことを知っているあなたも攻略結婚をしろと言うの?」


 さっきまでこれでもかという程笑顔だった王女様が一瞬で真顔を通り越して、少しフリードリヒさんを睨む。


「い、いえ、もちろんアリス様には幸せになって欲しいですが身分の方が…」


 フリードリヒさんほ当たり前のことを言ってる。僕たちは勇者とは言っても、なんの実績もまだ残していない。地球では平民だしね。


「今私は勇者様に窮地を救っていただきました。これだけでは足りないでしょうか?」

「失礼ながら、少し弱いかと…」

「むぅ だったら!」


 フリードリヒさんと話していた王女様は急にこっちに来ると僕と向き合った。そして、少し背伸びて短いキスをした。


「あぁ、だめぇ! 私の冬桜くんなのに」


 そう言ってじたばたしている可愛いルナには僕が自分からキスをする。


「僕はまだルナだけのだよ?」

「はっていうのが気になるぞ? それに今のキスだけじゃ足りないからね?」


 こっちを今すぐその気にさせる目遣いをしてくる。もちろん分かってる。


「むぅ、でもこの人にはまだ勝てない…」


 王女様を見るとむすっとして、こっちを見ていた。そんな仕草も可愛い!


「王女様」

「フリードリヒ、これで分かったでしょ? 私は本気なの」

「分かりました。私からも王を説得しましょう」

「冬桜様! 改めて、私と」


 王女様が言おうとしていることはすぐに分かった。でも、これを女に言わせるはずがない。でも、僕が言うとまだ結婚していないルナが文句を言う。だからこう言う。


「僕と結婚してくれますか? ()()。そして、王女様、いや、()()()

「「是非!」」


 許可とかは一切取っていなかったが、王女様を呼び捨てにする。様づけするのとかもいくら王女様でも自分の女になるからには嫌だし。


「改めて自己紹介を。僕は、この世界に召喚された藤野冬桜。呼び方は下の名前だったら何でも良いよ!」

「私はルナ! アリスって呼び捨てでいいかな?」

「はい!」

「アリス! 正妻の座は私のものよ!」

「私のことは皆さんだけアリスと呼んで下さい! それと、もちろん、正妻の座は奪いにいきます!」


 ルナとアリスに今、試合開始のゴングがなった気がした。






 しかしながら、3人は、ある人が妊娠することで、これに終止符を打たれるとはこの時点では誰も思いもしなかったのだった。

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