エピローグ 『地球は―――』
ねえ、おかあさん。
おとうさんはどこにいったの?
―――お父さんはね、お星様になったんだよ。
じゃあ、ぼくはうちゅうひこうしになる。ロケットにのって、おほしさまになったおおとうさんにあいにいく。
あの中のどれが、俺の父なのか。
地球よりも遥かに星空に近い筈だというのに、それでも遠く感じてしまう。
宇宙服の靴底越しに感じる、月面の固く冷たい岩盤の感触。これが、この世界の人類で初めて月面に降り立った、男の第一歩―――その証。
きっと今頃、地球にある基地では歓声が上がっているだろう。クレイデリア出身の宇宙飛行士とアナリア出身の宇宙飛行士を乗せた宇宙船『ムリーヤ1号』が無事に月面へと降り立ち、人類初の月への第一歩を踏み締めたのだから。
これは間違いなく、歴史に残る―――そんな偉業を自分で打ち立てたというのに、俺はそんな事よりも、間近にあるはずなのに遠い星々の方に意識を向けていた。
星の海は遠い。だからこそ宇宙船に乗って地球を飛び出し、月までやってきたというのに。
月面に立ってもなお、星空は遠くで輝いている。
その暗い星の海に、蒼く美しい星がある。
地球―――水と緑の星。そこに誕生した人類は、今日に至るまで殺し合いを続けてきた。
宗教、人種、領土問題……そんなちっぽけな理由で、あんなに小さな星の中で、俺たちは戦争を続けてきた。
それがあまりにも愚かしくてたまらない。
もう、人類は次のステップへ踏み出すべきだろう。
母なる地球から、宇宙という新天地へ。
《タンプル搭よりムリーヤ、聞こえますか》
『こちらムリーヤ、良く聞こえるよ』
《どうですか、月面から見る地球は? 記者も来てるんです。同志団長、何か一言お願いします》
何か一言、か。
きっとこれが、後世に遺る言葉になるのだろう。
迂闊に変な事は言えないな……そんな事を考えながら、宇宙服のバイザーの中で口を開いた。
いつかあの蒼い星から戦争が消え、人類が手を取り合う時代になりますようにという願いを込めて。
『地球は――――――』
『異世界で復讐者が現代兵器を使うとこうなる』 完
あとがき
読者の皆様方、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます。『こうなるシリーズ』、三部作の完結編。血塗られた復讐と戦争の物語はいかがだったでしょうか?
2015年に『異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる』を書き始めてからもう7年、7年も経っていました。こんなに長く活動を続ける事が出来たのも、読者の皆様方に支えていただいたからこそであると思っております。皆様からの応援なくして、今の私はありません。本当にありがとうございます!
こうなるシリーズはこれで完結となります。続編の予定はありませんが、世界観を一新した新作を近日中に執筆予定となっておりますので、そちらもお付き合いいただけると作者として幸いでございます。
それでは皆様、本当にありがとうございました! 次回作でお会いしましょう!




