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異世界で復讐者が現代兵器を使うとこうなる   作者: 往復ミサイル
第一章 産声をあげる復讐者
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モリガンの遺産


 なぜ、あの男は私のご先祖様と同じ名前なのだろうか。


 キャメロットの艦内にある自室に置かれている一枚の白黒写真を見つめながら、強制収容所から救い出した転生者の事を思い出す。その白黒写真には3人の子供が写っていて、その後ろには凛とした2人の女性が立っている。2人の女性の間には、あの救出した転生者にそっくりな顔つきの男性が微笑みながら立っていた。


 正面に写っている子供は、このテンプル騎士団を創り上げた初代団長『タクヤ・ハヤカワ』と、副団長『ラウラ・ハヤカワ』だ。私のご先祖様であり、オルトバルカ王国が産業革命によって”世界の工場”と呼ばれていた時代を代表する伝説の冒険者である。


 その2人の後ろに立っている女性は、その2人の母親である『エミリア・ハヤカワ』と『エリス・ハヤカワ』。かつて、世界最強の傭兵ギルドと言われた『モリガン』に所属していた傭兵だ。


 写真の真ん中に写っているあの男にそっくりな男性を見つめてから、私は写真を机の上に置いた。


 真ん中に写っている男性の名前は、『速河力也リキヤ・ハヤカワ』。エミリア・ハヤカワとエリス・ハヤカワの夫であり、テンプル騎士団を創り上げたハヤカワ姉弟―――――”姉妹”だったという説もある――――の父親であり、私の祖先である。


 大昔に死んでいった祖先が、蘇ったとでもいうのか。


 溜息をつきながら、もう一度写真の真ん中に写っている男性を見下ろす。まるで、強制収容所から助け出してきたあの男がそのまま大人になったかのような顔つきである。もしご先祖様(リキヤ)が彼と同い年だったのならば、見分けるのは不可能だったに違いない。


 勇者に追い詰められている我々を救うために蘇ってくれたのだろうかと思ったが、あの転生者には私のご先祖様の記憶がないらしい。ただ単に記憶を忘れているだけなのだろうか。それとも、同一人物ではないということなのだろうか。


「…………」


『団長』


 写真を見つめながら彼の正体は何なのだろうかと考えていると、ドアの向こうから高い声が聞こえた。写真を机の引き出しの中に放り込んでから「入れ」と言うと、ゆっくりとドアが開き、テンプル騎士団の黒い制服に身を包んだ女性の兵士が部屋へと入ってくる。


 テンプル騎士団には、女性の兵士も所属しているのだ。元々は奴隷だった人々を開放し、その奴隷だった人々の中からテンプル騎士団に志願した者に入隊試験を受けさせていたのだが、現在ではホムンクルスの製造技術を習得したことによって、ホムンクルスの兵士たちも”生産”され続けている。


 部屋の中に入ってきたのは、そのホムンクルスの兵士だ。


 頭から伸びる頭髪は海原のように蒼く、頭髪の中からは2本のダガーのような角が伸びているのが見える。角の根元は紺色になっているが、先端部へと行くにつれて透き通った蒼に変色しており、制服の後ろからは蒼い鱗で覆われた柔らかそうな尻尾が顔を出している。


 顔つきは、先ほど眺めていた白黒写真に写っていたエミリア・ハヤカワにそっくりである。けれども、エミリア・ハヤカワの種族は人間であったため、角や尻尾は生えていない。


 そう、この兵士のオリジナルは、先ほどの写真に写っていたテンプル騎士団初代団長『タクヤ・ハヤカワ』である。彼の細胞をベースにしたホムンクルスは、テンプル騎士団がホムンクルスの製造技術を習得してから大量生産されており、現在でもこのキャメロットの艦内にある製造装置で生産され続けている。


 ホムンクルスはオリジナルとなる人物の細胞さえ無事であればいくらでも生産できるので、勇者による攻撃で壊滅寸前のテンプル騎士団にとっては非常にありがたい。とはいっても、彼女たちは赤ん坊の状態から育てなければならないため、兵士として実戦投入するには17年間も待たなければならないという欠点がある。


「報告です。ヴァルツ帝国軍が、フランギウス共和国のウェーダンへ攻勢を開始しました」


「ついに始めおったか………」


 くっ、攻勢を始めるのは今年の秋だと思っていたのだが、もう攻勢を始めたのか!


 唇を噛み締めながら、部屋の中にある世界地図を睨みつける。フランギウス共和国のウェーダンは、フランギウス共和国軍の重要拠点の1つである。もしここを突破されれば、ヴァルツ帝国軍はフランギウスの首都まで侵攻することが可能になるだろう。


 フランギウス側も大慌てで最終防衛ラインを構築するだろうが、そんな事をすれば他の戦線の戦力が手薄になり、他の防衛ラインからもヴァルツ帝国軍や、ヴリシア・フランセン帝国軍の突破を許すことになる。


 とはいっても、ヴァルツ帝国軍は『オルトバルカ連合王国』とも戦いを繰り広げているため、ウェーダンに投入できる戦力はそれほど多くないだろうと予測されていた。きっと、守備隊の指揮官たちも圧倒的に兵力が多い自分たちが勝てると高を括っているに違いない。


 戦力差は、2対35だという。


 しかし――――――ヴァルツ帝国軍は、異世界から転生者たちを強制的にこの世界へと転生させて設立した『転生者部隊』を保有している。まだ所属している転生者のレベルはそれほど高くはないだろうが、こちらの世界の軍隊を容易く蹂躙できるほどの戦闘能力を持っていることは想像に難くない。


 2対35でも、あっさりと突破する事ができるだろう。転生者部隊がフランギウスのウェーダンへの攻勢に投入された時点で、フランギウス側はチェックメイトと言っても過言ではないのだ。


「リサ軍曹、我々が投入できる戦力は?」


「海兵隊の第6軍のみです。主力部隊はオルトバルカ連合王国軍を支援するため、”東部戦線”へと向かったばかりですよ」


 海兵隊第6軍だけか………くそ、第6軍に所属している兵士は新兵ばかりだ。ホムンクルスの兵士も所属しているが、実戦を経験したことのあるホムンクルスは1人もいないだろう。


 できるならばウラル副団長が率いる遠征軍を呼び戻したいところだが、そんな事をすればオルトバルカ連合王国との契約を破ることになる。報酬を支払ってもらえない上に、大国との関係を悪化させてしまう事になるだろう。ヴァルツ帝国軍への抵抗を続けるためには資金が必要だし、オルトバルカには復讐しなければならない相手もいる。あの大国を信用させなければ、”あいつ”の暗殺は難しい。


 くそ、第6軍で迎え撃つしかないのか………!


 世界地図を睨みつけていると、報告にやってきたリサ軍曹の後ろから、オレンジ色のツナギに身を包み、その上に白衣を羽織ったフィオナ博士がやってきた。


「セシリアさん、移植は成功です」


「そうか」


 あの男への義手と義足の移植は成功したか。


 現代では機械の義手や義足が一般的だが、工業が全くと言っていいほど発達していなかった大昔―――――速河力也やエミリア・ハヤカワが生きていた時代である――――――は、手足を失った騎士はそのまま退役するか、魔物の素材で作られた義手や義足を移植して復帰していたという。


 魔物の筋肉や骨で人間の手足を作り上げ、それを移植してから、魔物の肉と人間の肉が融合するまで魔物の血を定期的に投与することで、義手や義足を人間の肉体に馴染ませるのだ。現代では魔物が絶滅しかけているため、そのような義手や義足が作られることは殆どないが、魔物がたっぷりと生息していた大昔では当たり前だったのである。


 私の祖先は、戦いで片足を失ってサラマンダーの義足を移植したことによって、魔物の遺伝子と融合した肉体が突然変異を起こしてしまい、世界初の”キメラ”となってしまったという。


 けれども、機械の義手や義足は肉体が突然変異を起こす危険性はないし、絶滅しかけていることによって素材の確保が難しくなった魔物の義手や義足とは違い、金属さえあればいくらでも生産できる。だから、大昔と比べれば移植のハードルは大きく下がったと言えるだろう。


 あの男の憤怒ならば耐えられると思っていたよ。


「セシリアさん、私は彼もウェーダン防衛戦に投入するべきだと思います」


「バカな」


 ぎょっとしながら、私とリサ軍曹は博士の顔を見た。


「は、博士、さすがに早過ぎるのでは?」


「そうだ。移植が終わったばかりなのだろう? リハビリをせずに動けるわけがない」


 いくら強力な憎悪を持つとはいえ、その憎悪で移植されたばかりの義手や義足を強引に動かす事ができるとは思えない。走ることはおろか、歩く事すらできないだろう。あいつの復讐心は強烈だが、それを怨敵へと叩きつける前に敵の銃弾に撃たれ、墓穴にぶち込まれることになるのが関の山だ。


 だが、ウェーダンへと派遣できる戦力は錬度の低い第6軍のみ。もちろん私も戦いに参加するが、私1人でヴァルツ帝国軍を食い止めるのは難しいだろう。


 すると、ニコニコしながらこっちを見つめている博士の後ろから、真っ白な服に身を包んだ黒髪の少年がやってきたのが見えた。負傷兵だろうかと思ったが、先ほどまで見つめていた写真に写っていた祖先とそっくりな顔つきの転生者だという事に気付いた瞬間、私はぞっとしてしまう。


 先ほど義手と義足の移植を終えたばかりの男が、博士の後ろに立っていたのだから。


「なっ………!?」


 移植が行われていた博士の研究室からここへと来るためには、タラップを2つほど上がり、長い通路を進んでこなければならない。訓練を受けている乗組員や兵士たちならば朝飯前だが、義手と義足を移植されたばかりの男がここへと自力で来るのは不可能である。


 しかし、あの男は研究室からここまで来てしまったのだ。


「博士、リハビリはこれでいいだろう?」


「ええ、合格です」


「セシリア、俺も戦わせろ」


 信じられない。


 ぎょっとしながら、移植されたばかりの彼の手足を凝視する。移植された義手と義足は漆黒の金属で構成されており、肘や膝の裏からは真紅のケーブルが露出している。あれは電気信号を義手や義足へと伝達するためのケーブルなのだろうか。それとも、オイルを伝達する配管なのだろうか。


 鋼鉄の手足から伸びる指は人間の爪よりもはるかに鋭くなっている。刃物ではないようだが、それなりに勢いを乗せて突き出せば、人間の肉体に容易く穴を穿てるほど鋭い。


 まるで大昔の騎士が身に纏っていた防具を両足と腕にだけ装着し、隙間からケーブルを覗かせたようなデザインの一般的な義手と義足だ。そう思いながら彼の顔を見上げようとしたが、右の手のひらに穴が開いている事に気付いた私は、その穴を見つめてから博士の顔を見上げた。


 博士、義手に”あれ”を搭載したのか。


 ヴァルツ帝国が開発中の兵器を打ち破るために試作され、開発中止となったあの兵器を。


 よりにもよって帝国へと復讐しようとしている男にそれを託すというのか、博士。


「俺も帝国軍と戦う。あいつらを皆殺しにしてやる」


「…………」


 リハビリをしていないにも関わらず、研究室からここまで来れるほど動き回れるのであれば連れて行ってもいいかもしれない。それに、彼の実力を確認しておく必要もある。


 彼の黒い瞳を見つめながら、私は首を縦に振った。


「団長、本気ですか!?」


「本気だよ、リサ軍曹。………………ただし、”あれ”の制御に成功してからだ」


「?」


「ついてこい」


 椅子から立ち上がり、自室を後にする。


 彼は転生者の1人だが、端末は強制収容所で没収されてしまったらしく、救出した時には端末を持っていなかった。つまり今の彼の戦闘力は、ごく普通の少年とあまり変わらない。


 だから、”あれ”を制御してもらう。


 このキャメロットの艦内で眠る、”モリガンの遺産”を。












 セシリアに案内されたのは、キャメロットの艦内にある広い部屋の中だった。この漆黒の義手と義足を移植された部屋の中にそっくりだが、あの部屋の中のように様々な機械が所狭しと並んでいるわけではない。


 足元には大量のケーブルが伸びていて、壁から部屋の中央にある1mくらいの高さの円柱の根元へと繋がっている。白い円柱の表面にはよく見ると真紅に塗装されたスリットがあり、古代文字や記号を彷彿とさせる模様を形成していた。


 その円柱の近くに立ったセシリアが、真っ白な手を円柱へと向けて突き出す。唐突に彼女の目の前に紫色の魔法陣のようなものが浮かび上がったかと思うと、ぐるぐると回転する記号の中心部に英語のアルファベットを思わせる文字がいくつか浮かび上がり、すぐに消滅してしまう。


 パスワードや暗証番号なのだろうか。


 入力を終えた途端、円柱の中心部がまるで潜水艦のセイルにあるハッチのようにゆっくりと開き始めた。あらわになった円柱の内部から、まるで超小型のエレベーターのように円形の台がゆっくりと上がってくる。


 その台の上に、奇妙な金属製の板が乗っていた。


 板の表面の大半は画面で覆われている。その画面のすぐ下には電源と思われるボタンがあり、それの操作の大半は画面をタッチして行うのだという事を告げている。


 そう、転生者の端末だ。


 あの強制収容所で天城のクソ野郎共に没収された端末と、全く同じ端末が姿を現したのである。


「端末………?」


「そう。モリガンの遺産だ」


「モリガン?」


 セシリアは、その端末をそっと拾い上げた。


 よく見ると、円柱の中から姿を現したその端末にはかなり傷が付いている。セシリアからそれを受け取った俺は何度か電源のボタンを押してみたけれど、画面は真っ暗なままだった。


「…………おい、動かないぞ」


「転生者の端末は、端末の持ち主にしか操作できません。そして、端末の持ち主が命を落とせば、その端末も機能を停止し無用の長物と化します」


 端末を見下ろしている俺の隣にやってきたフィオナ博士が、微笑みながら説明してくれた。


「これの持ち主は?」


「大昔に伝説の吸血鬼と相討ちになって戦死しました」


 伝説の吸血鬼?


 というか、大昔だって? 何年前かは分からないが、この世界には大昔から転生者がやってきているというのか?


「………………その端末は、我がハヤカワ家初代当主『速河力也リキヤ・ハヤカワ』の端末だと言われている」


 ――――――俺と同じ名前の転生者。


 俺の名前を彼女に教えた時、先祖と同じ名前だと言って驚愕していた彼女の事を思い出しながら、端末を見下ろしているセシリアを凝視する。これの持ち主の子孫という事は、セシリアは転生者の血を受け継いだ転生者の子孫だというのか?


 彼女の祖先が使っていた端末をまじまじと見下ろしながら、傷だらけの画面をタッチしてみる。だが、やっぱり端末の画面は真っ暗なままだった。


 端末を操作できるのが持ち主だけだというのなら、これは無用の長物だ。この艦に保存しておくより、博物館にでも保管しておいた方がいいのではないだろうか。


 そう思いながら画面をタッチしていると、フィオナ博士が言った。


「あなたなら、それを再起動できる筈です」


「無理だろ。持ち主しか動かせないなら、俺は別人だから動かせない」


「いえ、出来ます」


 そう言いながら、フィオナ博士は顔を近づけてくる。真っ白な手を方に置き、紅い唇を耳に近付けた彼女は、にっこりと微笑んだまま囁く。


「―――――――あなたは”リキヤ”なのですから」


「え?」


 どういう意味なのだろうかと思った次の瞬間だった。


 持っていた端末が少しだけ振動したかと思うと、傷のついた画面の中で光が産声をあげたのである。やがて、赤い背景の前にメッセージが表示された。


《お帰りなさい、速河力也様。現在、データの再構築を行っています》


「う、動――――――――」


 端末が再起動したことを確認してぎょっとするよりも先に、防具を身に纏った蒼い髪の少女の姿がフラッシュバックする。


 この少女は誰だ?


 紺色の制服の上に、白銀の防具を纏った少女は、よく見ると腰に剣を下げているのが分かる。目つきは鋭く、凛々しい雰囲気を放つ少女だ。髪の色や瞳の色は全く違うけれど、顔つきはセシリアに似ているような気がする。


 出会った覚えのない、騎士の少女。


 けれども――――――脳味噌の中に、知らなかった筈の記憶がどんどん生れ落ちる。


 エミリア。


 速河力也と共に隣国へと亡命した、彼の一番最初の仲間。


 知らない。


 彼女の事は全く知らない。


 なのに、どうして彼女に関する情報が頭の中で産声をあげる!?


《私はエミリア。ナバウレアの駐屯地に所属する騎士だ。………君は? どこかのギルドの者か?》


《俺は速河力也。えっと………ギルドには所属してない。この通り、護身用の武器を持って一人旅さ》


 違う………!


 俺は彼女と会ったことはない。なのに、どうして自分の名前を名乗っている!? 彼女に自分の名前を名乗っているのは誰だ!?


「あ………ああ………………あぁぁぁぁぁ………………ッ!」


「お、おい、しっかりしろ!」


 知らない筈の記憶が産声をあげる度に、激痛も頭の中で産声をあげる。まるで脳味噌の中に埋め込まれた火薬が、記憶が産声をあげる度に炸裂しているのではないかと思ってしまうほどの激痛だ。


《ジョシュア、俺が勝ったら俺の要求を呑んでもらうぞ》


《何だ?》


《俺が勝ったら――――――エミリアを貰う》


 誰なんだ、お前は。


 頭の中に、知らない記憶をぶち込むな………!


《君がこの屋敷の幽霊だよね?》


《は、はい。私、フィオナって言います》


《俺は速河力也。彼女はエミリアっていうんだ。よろしくな、フィオナ》


《はい。よろしくおねがいします》


 次々に、見た覚えのない光景がフラッシュバックしていく。


 誰なんだ。


 やめろ。これは俺の脳味噌だ。お前の脳味噌じゃない。


《――――――あなたたちが、モリガンという傭兵ギルドね?》


《ああ》


《私はエリス・シンシア・ペンドルトン。ラトーニウス王国騎士団に所属しているわ》


《ラトーニウスの騎士団にはお世話になったことがあるからな。ジョシュアの野郎は元気か?》


《ええ。まだあなたのことを恨んでいたわよ? 速河力也くん》


《そうか。………………それで、何をしに来たんだ?》


《――――エミリアを返してもらいに来たのよ》


 やめろ。


 出ていけ。


《――――さらばだ、速河力也》


《――――ああ、さらばだ。さようなら、レリエル・クロフォード》


 やめてくれ。


 消してくれ。


 誰の記憶なんだ、これは。


 なぜ俺がこの記憶を知っている!?


《嫌じゃ………リキヤ、死ぬなぁ………! 子供たちはどうするのじゃ………………! 妻たちを置いていくのか………!?》


《力也―――――お前を、置き去りにはしない》


 お前の名前は………………速河力也………?


 お前もリキヤなのか………?


 何の前触れもなく、夕日に支配された草原がフラッシュバックする。橙色に染まった草原と、段々と赤黒くなりつつある禍々しい夕日しか存在しない世界のど真ん中に、やけに大きなライフルを背負った1人の男が立っていた。


 マガジンや投げナイフの収まったホルダーがついた黒いコートに身を包んでいる。頭にかぶっているフードには2枚の真紅の羽が飾られていて、コートの袖や肩にはまるで拘束具を思わせるベルトのような装飾がいくつも付いているのが分かる。


 お前がこの端末の持ち主なのか。


 草原に立っている男が、首を縦に振る。


 傷だらけの端末を握り締めながら、その男の正体を悟った。


 俺たちが――――――リキヤなのだ。


 




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