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異世界で復讐者が現代兵器を使うとこうなる   作者: 往復ミサイル
第五章 純白の戦場、真紅の殺意
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新しい装備

すいません、今回は新しい装備の説明ばかりになります。


 キャメロットの艦内にある射撃訓練場に集まった数名の兵士たちを見渡しながら、俺は息を吐いた。


 キャメロットはまだオルトバルカ沖に停泊しており、いつでも兵力を東部戦線の戦闘に投入できる状況だ。なので、艦内にいる兵士たちは基本的に寒冷地用の白い制服を身に纏っているんだが、ここに集まっている兵士たちが身に着けているのは通常の黒い制服であり、赤いベレー帽と腕章も身に着けている。


 ここにいる兵士たちは、遠征軍の中から選抜された優秀な兵士たちである。


「同志諸君、俺がテンプル騎士団の”特殊部隊スペツナズ”の指揮を執ることになった、速河力也軍曹である」


 そう、セシリアとウラルの命令で特殊部隊スペツナズを設立することになってしまったのである。


 現在のテンプル騎士団は、生き残った少数のベテランの兵士たちの奮戦と、帝国軍の装備よりも性能が優れている旧式の兵士のおかげで辛うじて戦闘を継続している状態である。人材はほぼホムンクルスに頼っている上に、実戦の経験が少ない兵士が多いため、兵士の錬度では帝国軍に劣っているとしか言いようがない。更に物量でも帝国軍に大きく劣っているので、もし帝国軍が全兵力を投入してテンプル騎士団への攻勢を開始すれば、テンプル騎士団は今度こそ壊滅してしまう事だろう。


 しかも、帝国軍は転生者と浸透戦術を組み合わせた作戦を立案中だという。もし、突撃歩兵の代わりに転生者を使った浸透戦術が実施されれば、全盛期のテンプル騎士団でなければ防ぐことは不可能である。


 そこで、陸軍の兵士たちを選抜して特殊部隊スペツナズを設立し、帝国軍に対抗することになったのだ。


 選抜されてきた兵士の大半はやっぱりホムンクルスだった。人材の大半をホムンクルスに頼っているとはいっても、彼女たちのオリジナルは”最強の兵士”と呼ばれたタクヤ・ハヤカワである。彼―――――”彼女”という説もあるらしい―――――の遺伝子をベースにして製造されているのだから、個体差があるとはいえ、基本的には優秀な兵士が多いという。


 とはいっても、ホムンクルスはベテランの兵士と比べると実戦経験が浅いという問題点があるが。


特殊部隊スペツナズの任務は、数名の兵士のみで敵陣の後方へと潜入し、標的の暗殺や破壊工作を行う事である。現在、我がテンプル騎士団の物量は他国の軍隊と比べると大きく劣っており、ホムンクルスたちのおかげで辛うじて兵力を維持している状態である。我々が活躍すれば、帝国軍との物量の差を補う事ができるだろう。偉大なるテンプル騎士団の命運は我らにかかっている」


 簡単に言うと、この特殊部隊スペツナズの役目は今まで俺が行っていたような任務を遂行する事だ。数名の兵士で敵陣の後方へと潜入して指揮官を暗殺したり、側面から敵陣の偵察や攪乱を行い、味方の攻勢を支援することになる。


 もちろん、帝国軍の転生者と浸透戦術を組み合わせた作戦に対抗するために設立されたのだから、対転生者戦闘を行う事は多いだろう。


 強力な転生者と戦うには、先進的で強力な武装が必要になる。


 そこで俺は――――――”アサルトライフル”を用意した。


 アサルトライフルが本格的に戦闘に投入されたのは、第二次世界大戦の終盤であると言われている。ソ連軍と連合軍の猛攻で敗北寸前だったドイツ軍は、『StG44』というライフルを開発して実戦投入し、進撃してくる連合軍とソ連軍を迎え撃ったのである。


 第二次世界大戦が終結してからは、AK-47やM16のようなアサルトライフルが次々に産声をあげていき、歩兵用の装備の主役となっていった。


 しかし――――――実は、第二次世界大戦どころか、第一次世界大戦の頃には既に開発されていたアサルトライフルが存在したのである。


 その最初期のアサルトライフルの1つが――――――特殊部隊スペツナズの装備として俺が採用した、『フェドロフM1916』である。


 モシンナガンM1891のようなボルトアクションライフルからボルトハンドルを取り外し、下部にマガジンと木製のフォアグリップを取り付けたような外見をしている。銃身は金属製のバレルジャケットで覆われているため、すらりとしたモシンナガンM1891と比べるとがっちりしているように見える。


 フェドロフM1916が開発された理由は、敵陣に突っ込む突撃歩兵にこの最初期のアサルトライフルを装備させ、敵軍の塹壕を突破するためである。


 使用する弾薬は、列強国が採用している弾薬の中でも口径が小さいおかげで反動が少なかった、日本製の6.5mm弾である。三八式歩兵銃などが使用する弾薬と同じ代物を、このフェドロフM1916はフルオートでぶちかますことが可能なのだ。


 なぜロシアの銃なのに日本製の弾薬を使うのかと言うと、ロシア製のライフル弾は反動が強烈だったからだ。機関銃のように銃そのものを重くしてしまえば反動は小さくなるが、そんな事をすればこれを装備して敵陣に突っ込む突撃歩兵への負担が大きくなってしまう。敵の塹壕に突っ込まなければならないのに、装備が重すぎるせいで突撃できなくなってしまったら意味がない。


 そこで、ライフル弾を口径の小さい弾薬にすることで反動を小さくしてしまうことになったのだ。


 余談だが、ドイツ帝国軍も同じように突撃歩兵用に『MP18』と呼ばれる最初期のSMGサブマシンガンを開発しているのだが、こちらは口径の小さなライフル弾を連射するのではなく、ハンドガン用の小型の弾薬を使用している。


 非常に優秀なライフルだが、最も大きな欠点は”弾薬が国産ではない”という点だろう。親密な関係の同盟国であれば問題はない。要求すればライセンス生産を許可してもらえる可能性がある。だが、当時の日本とロシア帝国は日露戦争を終えたばかりであり、それほど親密な関係ではなかったのだ。


 外国製の弾薬ということは、もしその弾薬を製造している国が敵に回れば弾薬が手に入らなくなることを意味する。そのため、装備品は可能な限り国産の装備品か、同盟国の装備品を用意していく事が望ましい。


 だが、現在のテンプル騎士団では三八式歩兵銃の弾薬である6.5mm弾もまだ採用され続けている。というか、モシンナガンM1891が採用されても未だに三八式歩兵銃と6.5mm弾を採用し続けていた理由は、このフェドロフM1916が生産できるようになった時に、セシリアにこのライフルの採用を勧めるためである。


 それゆえに、こちらの世界では最大の欠点だった”弾薬が国産ではない”という点は存在しない。


 傍らに置いていたフェドロフM1916を拾い上げ、目の前に並んでいる兵士のうちの1人に渡す。蒼い髪のホムンクルスの兵士はそれを受け取ると、下部に搭載されたフォアグリップやマガジンを眺めてから数歩前に出て、ライフルの銃口を人型の的へと向ける。


 撃ってみろと言うよりも先に、その兵士は引き金を引いた。


 数発ほどセミオートで射撃して、人型の的に風穴を開けていく。腕や肩の部分が抉れたかと思うと、その兵士はすぐにフルオートに切り替え、マガジンの中に入っている弾丸を全てその的に向かってぶっ放す。


 空になったマガジンを外したその兵士は、フェドロフM1916を俺に渡しながら言った。


「使い易いですね。反動も小さいですし」


「ああ、優秀な銃だ。最終的にはこいつも陸軍で正式採用してほしいところだな」


 他国の軍よりも一足先に、アサルトライフルを正式採用してしまうとしよう。


 受け取ったライフルにマガジンを装着し、コッキングレバーを引いてから壁に立てかける。このライフルならば三八式歩兵銃を装備したライフルマンと弾薬を分け合う事ができるし、モシンナガンよりも銃身が短いから塹壕や室内戦でも使い易いだろう。


 個人的には威力不足だと思うがな。


 木箱の中に収まっているフェドロフM1916を兵士たちに支給してから、近くで待機している赤毛のホムンクルスに目配せする。彼女は首を縦に振ってから近くに置いてある木箱の蓋を開けると、中に収まっていたリボルバーを拾い上げ、俺に渡してくれた。


 こっちは特殊部隊スペツナズに支給するサイドアームである。


 既にコルトM1911が正式採用されているが、こっちのリボルバーはより隠密行動に向いた代物だ。特殊部隊スペツナズは対転生者戦闘や暗殺だけではなく、隠密行動や破壊工作も行う必要がある。それゆえに、敵に気付かれないような装備も必要になるのだ。


 このリボルバーは隠密行動にうってつけだろう。


 特殊部隊スペツナズのサイドアームとして用意したのは、『ナガンM1895』というリボルバーである。7発の”7.62×38mmナガン弾”という弾薬を装填することが可能な銃であり、非常に信頼性が高い。


 だが、コルトM1911ならば8発の弾丸を装填できるし、マガジンを交換するだけで素早く再装填リロードを終える事ができる。それに対し、このナガンM1895の弾数は7発だし、シリンダーの中の弾を全てぶっ放した後は、残っている薬莢を全て取り出してから弾薬を装填し直さなければならないため、再装填リロードは非常に遅い。


 コルトM1911の方が優秀な拳銃と言えるが――――――このリボルバーは、なんとリボルバーでありながら”サプレッサーを装着して銃声を消す事ができる”のである。


 このナガンM1895は、トリガーを引くとシリンダーも前方へと進んで銃身に密着するようになっている。更に、使用する7.62×38mmナガン弾の薬莢は他の弾薬の薬莢とは違って弾丸のほぼ全体を覆っているため、弾丸に置き去りにされる薬莢そのものが更に隙間を塞ぐことになる。


 シリンダーが完全に密封されるおかげで、銃口にサプレッサーを装着することで銃声を消す事ができるというわけだ。


 とはいっても、再装填リロードが非常に遅くなってしまうという欠点があるので、こいつは隠密行動の際に使用するのが望ましい。


 フェドロフM1916とナガンM1895が、特殊部隊スペツナズで正式採用するメインアームとサイドアームになる事だろう。特殊部隊スペツナズは場合によっては浸透戦術の突撃歩兵の役目を兼ねることにもなるらしいので、フェドロフM1916は必需品と言っても過言ではない。


 だが、射程の長い銃や軽機関銃を全く支給しないわけにもいかないので、そういった武装も支給した方が良さそうだ。モシンナガンM1891とマドセン機関銃でも問題はないだろう。


 支給された新しい銃をまじまじと見つめる兵士たちを見渡しながら、俺は選抜試験に合格した特殊部隊スペツナズの兵士たちに告げた。


「いいか、我々は4人で1個分隊だ。基本的には隠密行動になる。隠密行動の訓練も行うが、今日はこの新しい銃の扱い方を学んでほしい。………では、これより射撃訓練を始める」













 第一次世界大戦と第二次世界大戦の序盤までは、歩兵用のライフルの主役はボルトアクションライフルだった。ボルトアクションライフルは命中精度と破壊力が高い代物だったが、発射した後はボルトハンドルを操作しなければならなかったから連射速度はそれほど速くなかったし、銃身が長い銃が多かったから接近戦には全くと言っていいほど向いていなかった。


 けれども、第一次世界大戦に参戦する羽目になったアメリカ軍は、そのボルトアクションライフルの弱点を克服するための装備を開発していた。


 テンプル騎士団で採用されているモシンナガンM1891を構え、左手でハンドガードを持ったまま右手をボルトハンドルへと伸ばす。ボルトハンドルを捻ってから後方へと引っ張った俺は、そのままボルトハンドルを後方へと引っ張り続け、レシーバーからそれを取り外す。


 腰に下げた革製のホルダーの中に取り外したボルトを収め、中から別の部品を取り出す。それをライフルに装着してから、一緒に入っていた細長いマガジンも取り出し、それをレシーバーの右斜め上に装着してからコッキングレバーを引く。


 これは、かつて第一次世界大戦中にアメリカで開発された『ピダーセン・デバイス』と呼ばれる装備である。ライフルからボルトを取り外してこれと交換することで、立て続けにセミオート射撃ができるようになるという変わった装備である。とはいっても、使用する弾薬がライフル弾からハンドガン用の弾薬になってしまうので、連射速度を上げる代わりに威力と射程距離が大きく落ちてしまうという欠点がある。


 元々はアメリカのスプリングフィールドM1903用の装備だったが、当時のアメリカの同盟国だったロシア軍のために、モシンナガンにも搭載できるピダーセン・デバイスが開発される予定だったという。


 フィオナ博士が端末をアップデートしてくれたことで、モシンナガンをカスタマイズしてピダーセン・デバイスを装備できるようになった。ちなみに、ピダーセン・デバイスを使用する際に装填する弾薬は、7.62×54R弾と口径が同じ弾薬である7.62×38mmナガン弾である。マガジンの中には30発の弾丸を装填可能だ。


 立て続けに連射し、射撃訓練場の向こうの的を蜂の巣にしていく。やっぱりハンドガン用の弾薬であるため、ライフル弾と比べるとストッピングパワーや威力がかなり低くなっている。こいつは塹壕戦や室内戦に使った方が良さそうだ。


 現代戦の主役であるアサルトライフルがどれだけ便利な銃なのかを痛感しながら、ピダーセン・デバイスを装着したモシンナガンをそっと下ろす。溜息をつきながらマガジンを引っこ抜き、ピダーセン・デバイスを取り外してボルトを装着してから踵を返すと、いつの間にか射撃訓練場の出入り口のところに黒髪の美少女が立っていた。


「お疲れ様、軍曹」


「おお、ボス」


特殊部隊スペツナズの装備は便利そうだな」


「ああ。だが、結構ポイントを使っちまったから増産はまだ先になるぞ」


 フェドロフM1916の生産に使うポイントは結構多めだったので、サブミッションをクリアして貯めておいたポイントがもう底を突きつつあった。ロシア製ではなく、日本製の弾薬を使うからコストが高かったのだろうか?


特殊部隊スペツナズには期待している。頼むぞ、力也」


「任せてくれ」


 期待は裏切らん。


「ところで、あの女の転生者はどうするのだ? そろそろ一週間くらい経過するが」


「まだ放置してる」


「食事は?」


「水だけだ」


「餓死させる気か?」


「いや」


 そういえば、もう一週間も経ってたな。


 生け捕りにした奈緒には何もしていない。警備兵が一日に一度だけ、ティーカップに水を入れて彼女に飲ませているだけである。それ以外は彼女には何もしていないし、何も与えていない。


 警備兵の報告では、最初の頃は悪態をついたり罵倒していたらしいが、最近は目つきが虚ろになって手足が細くなり始めたという。時計や窓がない薄暗い部屋の中で、空腹と孤独感にさいなまれ続けている彼女の心は、少しずつ壊れ始めているという事だ。


 では、そろそろ希望を提示しよう。


 その提示した希望に全身全霊で縋ってきたところで、それを踏み躙ってやるのだ。


「そろそろ再会させてやるよ――――――双子の妹とな」


 セシリアの瞳を見つめながら、俺はニヤリと笑った。

 

次回辺りから奈緒の拷問(?)を再開します。お楽しみに!

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