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異世界で復讐者が現代兵器を使うとこうなる   作者: 往復ミサイル
第四章 ラトーニウス海突破作戦
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復讐者の殺意

今回はエピローグみたいな感じの話なので短めです。


 火薬の臭いを嗅ぐと、どういうわけか落ち着く。


 強烈な反動が産声をあげると同時に、後方へと動いたスライドから、火薬の臭いを纏った.45ACP弾が躍り出た。その薬莢を置き去りにした弾丸は射撃訓練場の向こうにある板で作られた標的を直撃すると、開発されてから100年後でも猛威を振るうほどのストッピングパワーと運動エネルギーを標的へと叩き込む。


 ゆっくりと銃口を下げてから、グリップの下部からマガジンを引き抜く。左手でスライドを掴んでコッキングし、中に入っている弾丸を取り出してから、コルトM1911をホルスターの中に放り込んで、俺は踵を返した。


 あと3時間でオルトバルカ連合王国の旧ラトーニウス領へと上陸予定となっている。キャメロットに乗っている兵士たちも上陸することになっているので、大半の兵士は自室で休むか、装備の最終チェックをしている事だろう。俺以外にも射撃訓練場で射撃訓練を続ける真面目な兵士は見受けられるが、普段と比べると射撃訓練をしている兵士たちの人数はそれほど多くはない。


 だからこそ、今ならば空いているだろうと思ってここへやってきたのだ。


 俺たちの役目は、東部戦線で実施されるオルトバルカ連合王国軍の攻勢の支援である。”新兵器”を投入してヴァルツ軍に大打撃を与えると宣言している大馬鹿野郎共の露払いをするのだ。その露払いで敵の大半を撃滅してしまったら、攻勢を空振りすることになったオルトバルカのバカ共のプライドはズタズタになる事だろう。


 テンプル騎士団は、オルトバルカ軍の陣形の左翼で戦う事になる。一足先にヴァルツ軍の防衛ラインへと攻撃を敢行し、敵の戦力を削って本隊の進撃を支援するようにオルトバルカ軍の司令部から命令されたらしい。


 要するに、敵の兵力の6分の1以下の戦力で塹壕へと突っ込んで敵に損害を与え、大切なオルトバルカ軍の将兵の代わりに損害を被ってくれという事だ。


 セシリア(ボス)は首を縦に振ったらしいが、戦闘が始まったら作戦は無視して攻撃するという。先ほど彼女から作戦を説明してもらったんだが、セシリアが立案した作戦はウェーダンの戦いの作戦にそっくりだった。


 まず、敵の塹壕へと艦砲射撃をお見舞いし、ナタリア・ブラスベルグの艦載機による空爆でその傷口を更に抉る。そして陸軍の兵士たちを突撃させて塹壕を突破し、敵陣の後方へと浸透するのだ。テンプル騎士団が敵陣の後方への浸透に成功すれば、オルトバルカ軍の新兵器と戦う羽目になるヴァルツ軍は後退する事になるだろう。


 テンプル騎士団の部隊が後方へと浸透するよりも先に、俺は一足先に塹壕へと潜入して側面へ移動し、モシンナガンの狙撃で敵の守備隊を攪乱することになる。側面からの奇襲で塹壕の側面からもテンプル騎士団が攻め込んできたと思わせ、ある程度の警戒心を側面にも向けさせるのだ。そうすれば、敵は正面から突撃してくるテンプル騎士団の本隊の迎撃に専念できなくなる。


 そして本隊が浸透に成功したら、俺はそのまま後方へと潜入して敵の司令部へと侵入し、ヴァルツ軍の指揮官を暗殺することになる。もし単独で司令部への潜入するのが困難だと判断した場合は、後続の部隊と合流し、錬度の高い兵士たちと分隊を編成して潜入することになった。


 第1遠征軍の中には、テンプル騎士団が創設された頃から所属しているベテランの兵士が非常に多いらしい。


 射撃訓練場から狭い通路に出ると、火薬の臭いが一気に希釈される。他のハッチから入り込んできた潮の匂いに支配されている狭い通路の中は、的に命中させるために集中しなければならない射撃訓練場よりもはるかにひんやりしていた。


 ちらりと窓の向こうを見ると、蒼い海原へと真っ白な雪が降り注いでいるのが見えた。オルトバルカ連合王国は雪国であり、9月上旬にはもう雪が降り始めるという。今はもう11月だから、東部戦線の戦場はとっくに雪で真っ白に染まっているに違いない。


 さすがにこの黒い制服で雪だらけの戦場に行くわけにはいかないので、先ほど攻勢に参加する兵士たちに寒冷地用の真っ白な制服が支給されていた。準備をする前に、部屋に戻ってそっちの白い制服に着替えておくとしよう。


 かなり急なタラップを駆け下り、自分の部屋がある居住区へと戻る。ポケットの中から鍵を取り出してドアの鍵を開け、腰のホルスターを外しながら部屋の中へと入った。


 兵士たちや生き残った住民たちにも部屋が用意されているとはいえ、キャメロットは全長304mの艦だから、支給される部屋はかなり狭い。簡単なキッチン、ベッド、小さなテーブルが置いてあるだけで、身体を洗うには別の区画にあるシャワールームを使う事になっているのだ。フィオナ博士の発明品のおかげで真水を好きなだけ使える―――――――普通の戦艦ならばかなりの贅沢だ―――――――のは喜ばしい事だが、わざわざ別の区画まで行くのは非常に面倒である。しかも兵士たちの訓練が終わる時間に向かうとシャワールームの外で順番を待つ必要があるので、そのような時間帯は避けることが望ましい。


 とはいっても、個室にシャワールームを用意するスペースはないので諦めるしかないだろう。


 これから戦場で泥まみれになるのに、わざわざ身体を洗っていくバカはいるんだろうかと思いながら、壁に掛けてある寒冷地用の白い制服を手に取った。今身に纏っている制服をそのまま白くしたようなデザインだが、フード付きのマントが用意されているようだ。ボタンをいくつか外せばフード付きのマントは取り外せるようになっているようだが、フードとマントは雪原での隠密行動に役立つはずだ。


 傍らには、貴重な魔物の毛皮で作られた手袋とウシャンカもある。それと、モシンナガンに巻き付けるための白い布も貰ってきた。さすがに茶色い木製の部品で覆われたライフルを雪原に持っていくわけにはいかない。普通の歩兵部隊ならば俺の任務は側面からの攪乱と後方への潜入である。


 支給された物をチェックし終えてから、上着を脱いで寒冷地用の上着に着替えようとしたその時だった。


「力也、入るぞ」


「ボス?」


 部屋のドアが開き、一足先に寒冷地用の制服に着替えたセシリアが狭い部屋の中へと入ってきた。さすがに黒いコートを羽織るわけにはいかなかったらしく、マントの代わりに羽織っていた転生者ハンターのコートは身に着けていない。


 頭にかぶっているのはいくつもの黒い軍帽ではなく、真っ白なウシャンカだった。


 彼女は寒冷地用の制服に着替えようとしている俺をまじまじと見つめてから、手に持っていた書類をこっちに差し出す。


「………敵の指揮官の正体が分かった」


「!」


 諜報部隊シュタージがもう突き止めてくれたのか。


 受け取った紙を凝視しながら、記載されている情報を確認する。


《敵の指揮官である転生者は『霧島奈緒きりしまなお』と『霧島美緒きりしまみお』の2名と思われる》


 ――――――明日花を殺した可能性のあるクソ野郎共だ。


 東部戦線にいたのか………!


 前世の世界では2人で明日花を虐めていた。こちらの世界に転生した後も、強制収容所に収容されている明日花の牢屋に入ってきて、俺の隣で明日花を殴りつけたり、ナイフで彼女の髪を切断していた。何度か俺を鉄パイプでぶん殴りやがったこともあるが、俺が攻撃されたことに関しての憎しみは全くない。


「………この双子が、お前の妹の仇か」


「ああ………………ボス、こいつらは俺が惨殺する」


「分かってる。他の部隊には伝えておく」


 本当にありがたい。


 俺の報復を肯定してくれるのだから。


 ありがとう、ボス。


 彼女に礼を言いながら、受け取った紙を握り潰す。


 ”クソ野郎は、狩る”。


 いや、もう”狩る”では生温い。


 だから惨殺する。


 ――――――――惨殺あるのみ。






 第四章『ラトーニウス海突破作戦』 完


 第五章『純白の戦場、真紅の殺意』へ続く


第五章はついに東部戦線での戦闘です。そして、力也さんの次の復讐が始まります。お楽しみに!

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